医薬品会社の多くが特許切れによる後発品の影響、日本の薬価改定の影響を受け、業績は伸びない。
多くの企業がIFRS方式に切り替えている。(上の斜線)
この結果、これまでの日本基準とは下記のような差が出る。(武田薬品による)
特に、これまで営業外損益、特別損益としていたもののうち、金融損益以外はほとんど、営業損益に含まれることとなる。
日本基準 | IFRS | |
のれん償却 | 20年以内で償却 | 償却せず、毎期現存テスト実施 |
有形固定資産償却 | 定率法も可能 | 定額法に統一 |
特定目的研究開発設備の一括費用処理 | 資産計上、定額法償却 | |
一時金、マイルストン等 | 発生時に研究開発費 | 無形資産計上、上市後定額償却 減損テスト実施 |
退職給付引当の過不足 | 5年償却 | 損益認識せず 発生時に「その他包括利益」 |
営業外、特別損益 | 営業損益に含めず | 営業外は金融損益のみ 他は営業損益に含める。 |
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武田薬品
2014年3月期からIFRS方式に切り替えた。
本年は巨額の訴訟補填引当を行い、上場以来初の赤字に転落した。
単位:億円 (配当:円) |
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上記の通り、日本式では営業外損益、特別損益として扱うものが、IFRSでは営業損益に含まれることとなる。
今回は特に、アクトスの訴訟補填引当 2,741億円(税引き後では1,779億円)を計上したため、営業損益は大幅な赤字となった。
これを除くと営業損益は1,448億円(前年比 55億円増)、株主帰属損益は322億円(前年比 745億円減) となる。
武田薬品は4月29日、米国における2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟で、大多数を解決する和解に向けた合意に至ったと発表した。
和解金は原告の95%が受け入れた場合は23.7億ドル、97%以上が受け入れた場合は24億ドルとなる。
同社は和解に参加しない訴訟の費用等を含め、2015年3月期に27億ドル(3,241億円)を引当計上するとしたが、決算では、製造物責任保険に基づく予想保険金額 500億円を相殺し、差引 2,741億円を計上した。
その他の特別損益による前年比営業損益増減には下記のものがある。
・Amgenから導入した癌治療薬モテサニブの試験中止による減損 -109億円
・URL Pharma買収に伴う痛風治療薬コルクリスの条件付取得価格の洗替 +179億円
・遊休不動産売却益 +280億円
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アステラス製薬
増収・増益となった。
2014年4月に、普通株式1株につき5株の割合で株式分割実施。
売上高 | 営業損益 | 経常損益 |
株主帰属 損益 |
配当 |
|||
税引前 損益 |
中間 | 期末 | |||||
2013/3 | 日本式 | 10,056 | 1,539 | 1,572 | 829 | 65 | 65 |
IFRS | 9,819 | 1,216 | 1,271 | 925 | |||
2014/3 | 日本式 | 11,645 | 1,773 | 1,317 | 924 | 65 | 70 |
IFRS | 11,399 | 1,168 | 1,220 | 909 | |||
2015/3 | 12,473 | 1,857 | 1,897 | 1,359 | 14(70) | 16(80) | |
前年比 | 1,074 | 689 | 677 | 450 | (5) | (10) | |
2016/3予 | 13,620 | 2,380 | 2,390 | 1,700 | 16(80) | 16(80) |
営業損益の増益の理由の一つが減損損失で、前年度が -556億円であったのが、-103億円にとどまっている。
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第一三共
2015年3月期中にRanbaxy
Laboratories がインドのSun Pharmaceutical
Industries に吸収合併されたことにより、連結除外となった。
これに伴い、2014年3月期も修正した。(下表で新ベースとして表示)
2015年4月に、交換で取得したサン・ファーマ株式を3,784億円で売却した。
2014/4/10 第一三共、ランバクシーを実質売却
売上高 | 営業損益 | 経常損益 |
株主帰属 損益 |
配当 |
|||
税引前 損益 |
中間 | 期末 | |||||
2013/3 | 日本式 | 9,979 | 1,005 | 991 | 666 | 30 | 30 |
IFRS | 9,947 | 987 | 959 | 640 | |||
2014/3 | 日本式 | 11,188 | 1,159 | 1,093 | 657 | 30 | 30 |
IFRS | 11,182 | 1,116 | 998 | 609 | |||
新ベース | 8,991 | 1,129 | 1,130 | 609 | |||
2015/3 | 9,194 | 744 | 799 | 3,221 | 30 | 30 | |
前年比 | 202 | -385 | -330 | 2,612 | ー | ー | |
2016/3予 | 9,200 | 1,000 | 950 | 600 | 40 | 30 |
2015/3 の株主帰属損益のうち、継続事業による分が467億円、非継続事業による分が2,754億円。
Ranbaxyの連結除外ベースでの対比で、営業損益は385億円減少した。
売上高増や共同販売促進費の減などはあったが、円安による経費増(237億円)や連結子会社 Plexxikon Inc.の抗悪性腫瘍剤 Zelboraf (収益性の低下が見られる)の営業権の減損(350億円)、日本の人事関連費用(139億円)、米国司法省への和解金(47億円)などで減益となった。
2014年度の非継続事業の損益は下記の通り。(億円)
税引前 税引後 子会社合併差益 3,602 2,787 合併関連諸費用 -50 -34 Ranbaxy事業損益 -18 -0.5 合計 2,754
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エーザイ
減収減益となった。株主帰属損益は法人税の関係で増益となっている。
売上高 | 営業損益 | 経常損益 |
株主帰属 損益 |
配当 |
|||
税引前 損益 |
中間 | 期末 | |||||
2013/3 | 日本式 | 5,737 | 705 | 656 | 483 | 70 | 80 |
2014/3 | 日本式 | 6,004 | 711 | 649 | 330 | 70 | 80 |
IFRS | 5,995 | 664 | 623 | 383 | |||
2015/3 | 5,485 | 283 | 259 | 433 | 70 | 80. | |
前年比 | -510 | -381 | -364 | 50 | ー | ー | |
2016/3予 | 5,565 | 460 | 428 | 270 | 70 | 80 |
営業損益は前年比で381億円の減となったが、主な理由は下記の通り。(億円)
増益 グローバルブランドの増 91 中国・アジア拡大 52 2013年構造改革効果 197 一時費用 133、2014労務費減 64 減益 先行投資 -294 国内減益 -352 薬価 -160、ジェネリックによる減収 その他 -75
法人税は前年が238億円に対し、本年は-176億円となっている。
米子会社の払込資本の払い戻しによる譲渡損失等での278億円の減が影響
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田辺三菱製薬、大日本住友製薬については、下記参照
2015/5/19 主要企業の2015年3月決算 - 三菱ケミカルホールディングス、 住友化学
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