リコー、「発電ゴム」の開発に成功

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リコーは5月18日、圧力や振動により高い発電性能を発揮する新しい柔軟材料「発電ゴム」の開発に成功した と発表した。

数十~数百μmという薄いシートの両面に電極を配置した形状をとる。
リコーは「複合材料を利用している」とするが、発電ゴムの組成は公開していない。


圧力による発電材料(圧電材料)としては、セラミックスや高分子樹脂などがあるが、活動範囲が限られている。

セラミックスの一種であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、 機器設備の圧力・振動センサーなどの電子部品として普及しており、高出力ではあるが、壊れやすい、鉛を含む、重いなどの課題がある。(鉛を含有するが、他に代替可能な材料がないため、EUにおける電子機器類への使用制限令の適用免除対象となっている)

PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子樹脂は、薄くすることによる柔軟性はあ るが、取り出せる電力は微量。
逆圧電効果による作用が弱く、さらに熱により電荷が生じるため、電気電子部材としての使用が難しく、用途はセンサーなどに限られている。

ともに、圧電性能を発現させるために製造過程で直流高電界を与える必要があり、エネルギー負荷の高い製造方法となっている。

帝人と関西大学は2012年9月、ポリL乳酸とポリD乳酸の2 種類のポリ乳酸フィルムを用いることで、簡便な積層プロセスにより製造することができる、透明かつ柔軟性があり、従来にない高い圧電効果を有する圧電材料を開発したと発表した。


リコーが開発した「発電ゴム」は、柔軟性の高いフレキシブルなシート状でありながら、セラミックス圧電材料と同等の高い発電性能を有する。 数百万回の繰り返し負荷試験でも性能劣化がないという耐久性も有している。

柔軟性、高出力に加え、耐久性、加工性、生産性にも優れる「発電ゴム」はセラミックスや高分子樹脂の課題を解決し、それぞれの利点である高出力と柔軟性を両立した 。

発電ゴムは厚さ数百マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの薄いシート。通常とは組成が異なり、押したり曲げたりして変形すると瞬間的に数百ボルトの電圧が生じる。

5cm×10cmの発電ゴムシートを手で軽くたたくと、数百V、数百μAの電力を生み出す。実験では 約200個の発光ダイオード(LED)をつないでたたくと、一斉に点灯した。

軽量ではさみやカッターで切れ、曲面にも貼れる。原料を塗布するだけで作れ、製造コストも安くなる見通し。

発電は一瞬だが出力は大きく、電気信号を無線で飛ばすことも可能とみられる。

体に貼ればそこを動かすたびに、衣類などに付ければ風に揺れるたびに発電する。

医療などで体の動きを検知するセンサーや、構造物の急な変形を知らせる警報装置、侵入者を検知するカーテンなどに応用すれば、電源なしに動作する。
風に揺れると光るドレスや遊具などの用途開発も進める。

リコーでは、微弱な圧力を感知するセンサーとしての用途と、環境からわずかな電力を集める環境発電の2つの応用を考えている。

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圧電効果は、セラミックなどに圧力を加えることで生じるひずみに応じて、電圧が発生する現象をいい、1880年にピエール・キュリーと兄のジャック・キュリーが発見した。

固体結晶内のイオンの位置のずれが圧力を加えることによって大きくなり、結晶の一方の端がプラスの電気を帯び、もう一方の端がマイナスの電気を帯びる「電気分極」という現象が起こり、電圧が発生する。身近なものとして、ライターの発火石がある。

PVDFの場合は、引っ張りや圧縮が内部ひずみを生み、電気エネルギーを生じる。

 

「発電ゴム」の発電機構は、従来の圧電材料とは異なる。圧電効果を示す材料と同じような挙動を示すものの、なぜ電力を生み出すのか、はっきりとは分かっていない 。

現在、東京理科大学(山本貴博准教授)との共同研究により、最先端の計算化学技術を用いた分子レベルでの発電機構の解析を始めており、材料の可能性をさらに拡張して将来の多岐にわたる応用展開を目指 す。

 

 

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