財政危機に直面するギリシャは、6月5日に期日が迫っているIMFへの債務返済を月末に先送りすることをIMFに伝えた。
ギリシャからの通告を受けたIMFが4日に公表した。
6月中に期限を迎える4回分の返済計15.5億ユーロは、30日までにまとめて支払う。
6/5 3.0 億ユーロ
6/12 3.4 6/16 5.7 6/19 3.4 合計 15.5
IMFは同じ月に返済期限を迎える複数の債務元本の一本化を認めており、ギリシャの要請を受け入れるとみられる。
(複数の債務元本を一本化する制度を利用するのは1980年代のザンビア以来初めてとなる)
ユーロ圏19か国の財務相会議は2015年2月20日、2月末で期限を迎えるギリシャの金融支援について4か月間延長することで合意したが、延長の条件とされた4月までの改革案策定が出来ず、72億ユーロの融資は凍結されたままとなっている。
EUは6月3日に妥協案を提示した。報道によると内容は下記の通り。
Primary surplus を2015年はGDPの1%、2016年は2%、2017年は3%、2018年は3.5%とすることを求め、
1)年金支出額をGDP比で1%減らす
2)社会保障制度の見直しを行い、最低保証所得を順次引き下げる。
3)付加価値税の実質引き上げ
現在は一般税率23%、軽減税率 13%, 6.5% だが、原則23%とし、食品・医薬品・ホテル代のみ11%とする。
(ギリシャ危機前の税率は19%、軽減税率 9%, 4.5%)4)歳出削減のために公務員給与を減額する
5)徴税制度の改革
など財政緊縮策の実行を求める内容。これに対し、ギリシャ側の提案では、Primary surplusは、
2015年はGDPの0.6%、2016年は1.5%、2017年は2.5%、2018年以降は3.5%となっている。
EUの改革案に対しチプラス首相は5日、EUの案は「不条理で非現実的」として拒否する意向を表明した。
「緊縮策の放棄」を掲げて1月の総選挙で政権を獲得したチプラス首相は、年金削減などの要求を「譲れない一線」として拒否してきた。
ギリシャの財政運営は破綻寸前で、これまで地方政府や政府系機関の資金を中央銀行に集めて借金返済を行ってきたが、5月のIMFへの借金返済は、緊急時用にIMFに預けている資金を引き出して返済に充てた。
6月5日を期日とするIMFへの返済が危ぶまれていたが、チプラス首相は6月4日の時点では、「心配いらない。支払いを続ける」と述べていた。
しかし、前言を翻して先送りを決めた。
月内の一本化要請によって当面の危機は避けたものの、本質的な問題は解決していない。
現行のギリシャ支援の枠組みは6月末で期限切れになり、凍結中の72億ユーロの支援融資も失効する。
月末にはIMFへの返済が必要だし、7月13日にはIMFへの4.5億ユーロ、7月20日と8月20日にはECBへの各
35億ユーロの返済を控えている。
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