「長期エネルギー需給見通し(案)」 「長期エネルギー需給見通し 関連資料」
2030年度時点に、原子力発電の比率を原発事故前の2010年度の28.6%から引き下げ、「20%
~22%」とする一方、再生可能エネルギーは「22~24%」と増やし、原発の比率を上回るとしている。
総発電量は17%程度の省エネを折り込んだ。
再生エネは太陽光に偏って導入が進んだことや国民負担の増加を踏まえ、「最大限の導入拡大と国民負担の抑制を両立する」よう、固定価格買取制度を見直すとしている。
発電量が天候に左右される太陽光と風力は合計でも9%弱にとどめる一方、安定して発電できる地熱や水力、バイオマスは最大15%程度まで引き上げる。
|
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
有識者会議の議論の中で、エネルギー基本計画にある「原発依存度を可能なかぎり低減させる」という方針に応えていないとして、3人の委員から反対の意見書が出された。
そのうえで、「22~24%」としている再生可能エネルギーについて、太陽光発電や風力発電を積み増し、少なくとも30%程度を目指すべきだとしている。
逆に一部の委員からは、「安全を最優先にするなら、最新鋭の原発の新増設や建て替えをはっきりと打ち出したうえで、国民が納得できるレベルまで依存度を下げるべきだ」といった意見
も出された。
これに対して、事務局は、原発の新増設や建て替えは想定していないとしたうえで、「40年を迎える原発のいくつかが運転期間を延長し、安全性や稼働率が向上するという想定で示した比率だ」と説明し、最終的に了承された。
ーーー
現存する全ての原子炉が40年で運転終了するとすれば、2030年頃に設備容量が現在の約半分となる。
自然エネルギー財団のホームページで高橋洋・都留文科大学教授は下記のように想定している。
原子力を20~22%にするためには、建設中の島根・大間を稼動させた上で、40年経過の原発の半分を延長する必要がある。
電気事業連合会によると、原発の平均設備利用率は、2010年まではおおむね80%程度
今回のエネルギーミックスの最終案では、原発の状況や再生可能エネルギーのコストの変化などを踏まえて、今後、3年ごとに必要に応じて見直すとしてい る。
ーーー
内訳は、電源構成の見直しと省エネルギーの強化で21.9%、森林や農地で二酸化炭素を吸収する分が2.6%、代替フロン対策で1.5%となっている。
付記
有識者委・委員長(坂根正弘 コマツ相談役)インタビュー(2015/6/17 毎日新聞)
−−政府案をまとめる上で考慮した点は。
◆私が委員会で強調したのは、エネルギー問題は安全性、安定供給、経済性、環境適合のバランスを取ることでしか答えを出せないということだ。具体的には、原発(再稼働)については原子力規制委員会の安全審査に通る▽エネルギー自給率を引き上げる▽電力コストを抑制する▽主要先進国の中でトップレベルの低二酸化炭素(CO2)社会を実現する−−の4点を満たす必要があると考えた。
−−委員会では「原発回帰」になるとの批判もあります。
◆原則40年とする原発の運転期間を厳守すれば、30年度に原発は15%程度になる。ただ、東京電力福島第1原発事故後、電気料金は家庭向けで2割、産業界では3割上昇した。再生エネの比率を22〜24%とする政府案に対し「再生エネはもっと増やせる」との意見もあったが、仮に原発を1%減らして再生エネに置き換えると、電力コストが年間2200億円増えるという経産省の試算もある。これでは産業界がコスト負担に我慢できず、海外に流出して最も重要な省エネルギーの技術開発すら進まなくなる恐れも出てくる。
−−政府は原発を可能な限り縮小する方針でした。
◆原油や石炭など化石燃料に代わる安定的なエネルギーが見つからない段階では、原子力技術を放棄すべきではない。放棄した後、他に頼るべき技術が見つからなければ、将来的に原発さえも海外に依存することになる。原発を継続して技術を維持することは、そうした事態を避ける「保険」のようなものだ。
−−ドイツは脱原発にカジを切りました。
◆ドイツはフランスなど隣国から原発で発電した電気を輸入する一方、自国の石炭で発電した電気を輸出している。隣国から簡単に電力供給を受けられない日本とは異なる。
コメントする