英BP、メキシコ湾原油流出事故で米政府等と和解

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BPは7月2日、2010年4月にメキシコ湾で起こした原油流出事故を巡り、米連邦政府やメキシコ湾岸の5州(Alabama、Florida、Louisiana、Mississippi、Texas)と総額で最大187億ドルを18年間にわたって支払うことで和解した。


今後、本件を裁いていた
New Orleans
District Court のCarl Barbier 判事の承認を得る必要がある。

概要は次の通り。

支払先 内容 金額 支払期間
米政府 Clean Water Act (CWA)による罰金 55億ドル 15年
米政府、5州 天然資源被害
(NRD)
既決の10億ドルに加算 71億ドル 15年
未知の被害 2.32億ドル 終了時
5州 経済的被害、その他被害 49億ドル 18年
400以上の地方公共団体 最高10億ドル  

CWAとNRDの分割払いの未払い分の金利は5月末の米財務省債の利率(2年物、3年物平均)による複利で支払完了時に支払う。

Clean Water Actの罰金はこれまでは政府収入であったが、2012年のRestore Actで罰金の80%は影響を受けた州に入る。

今回の和解総額は187億ドルだが、一部を引当しているため、事故による費用総額(税引前)は2015年3月末時点の438億ドルから100億ドル程度増加する。

 


ーーー

BPは2012年11月15日、司法省によるすべての刑事訴訟で和解したと発表した。合わせて米証券取引委員会(SEC)とも和解した。

刑事訴訟については、11名死亡に関する11の違法行為とClean Water Act、渡り鳥条約、議会妨害に関する違法行為の合計14について有罪を認めた。

BPは約40億ドルを5年分割で支払う。このうち、罰金は1,256百万ドルで、これとは別に、National Fish & Wildlife Foundation に2,394百万ドル、National Academy of Sciences に350百万ドルを支払う。

SECに関しては、事故当初の漏出量予想の報告が問題とされた。これに関し、BPは罰金525百万ドルを3年分割で支払う。

2012/11/17  BP、Deepwater Horizon事故に関する米政府の全ての刑事訴訟で和解 


しかし、これには水質浄化法に基づく(政府による)民事訴訟や天然資源の損害賠償、過去の和解に含まれない個人による請求は含まれない。

水質浄化法Clean Water Act)では原油の流出量 1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

2014年9月4日、米政府による水質浄化法に基く民事訴訟の裁判で、New Orleansの District Court のCarl Barbier 裁判官は、BPに「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。

責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton が3%と認定した。

2014/9/8    2010年の原油流出事故、「BPに重大な過失」と認定

Carl Barbier 判事は2015年1月15日、責任流出量を319万バレルと認定する判断を下した。

実際の流出量は400万バレル以上であるが、回収努力を考慮し、責任流出量を319万バレルとした。

政府は流出量を490万バレルとし、そのうち420万バレルはBPの責任だとしていた。
他方、
BPでは流出量を320万バレルとし、バレル1100ドルを適用し、35億ドルを引き当て ている。

これによると、罰金額は137億ドルとなる。(BPの責任割合は67%のため、91.8億ドルとなる)

2015/1/19 メキシコ湾原油流出事故の責任流出量 認定 

BPは罰金を1990年時代の最高額であるバレル当たり 3,000ドルに引き下げるよう要請したが(罰金は95.7億ドルに減る)、判事は却下した。
(EPAはその後、インフレ対応で罰金を引き上げたが、判事はこの引き上げを妥当とみなした。)

罰金額は計算上は上記の通り 91.8億ドルとなるが、判事による最終判決はまだで、間もなく行われるとされていた。

罰金額の決定に当たっては、下記の点が考慮される。

・被告側の流出量を抑える努力
・法律違反の重大性
・被告側の流出量を抑える努力の内容、程度、効果
・罰金が被告に与える経済的影響
・違反により被告が得る利益(もし在れば)
・有責性の程度
・同様事故での罰金
・以前の違反の事例

また、他の関係者の問題もある。

Operator 責任比率 Owner 出資比率 水質浄化法責任
BP 67% BP 65%  
Anadarko 25% ①判事「Ownerとしての責任のみ」
②政府は10億ドルを求める。
(2014/12)
Mitsui 10% 2012/2/20  メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解
  罰金 70百万ドル+環境保全 20百万ドル
Transocean 30%   2013/1/8 Transocean Deepwater Horizon 事故で罰金14億ドル支払い
Halliburton 3%    

今回、米国政府はBPとの間で55億ドルの罰金で和解した。

詳細は不明だが、司法長官は、「数週間にわたる最近の交渉で、政府や州の主張に合った、湾岸地域に今後にわたり利便をもたらすような合意に達した」としている。

各州にとっては、Restore Actによる水質浄化法の罰金の80%を含めると、裁判ではとても得られない多額の収入となる。

BPにとっては、これでほぼ全ての問題が解決する。

ーーー

罰金は下記の通り分割払いされる。(億ドル)

CWA NRD NRD 追加 5州
0           10.00
1 3.79 4.89    
2 1.89 2.45    
3 3.79 4.89   2.60
4 3.79 4.89   2.60
5 3.79 4.89   2.60
6 3.79 4.89   2.60
7 3.79 4.89   2.60
8 3.79 4.89   2.60
9 3.79 4.89   2.60
10 3.79 4.89   2.60
11 3.79 4.89   2.60
12 3.79 4.89   2.60
13 3.79 4.89   2.60
14 3.79 4.89   2.60
15 3.79 4.89   2.60
16     2.32 2.60
17       2.60
Totals 55.00 71.00 2.32 49.00


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