ギリシャ支援が失効

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EU やIMFによるギリシャへの支援が6月30日に失効した。凍結されたままとなっていた 72億ユーロの融資枠が消滅した。

ギリシャは支援が切れる直前に、「欧州安定メカニズム(ES
M)」に対して2年間の資金繰り支援や債務再編、つなぎ資金を確保する現行支援の延長を求めた。(今回はIMFへの要請はせず)
新提案が受け入れられれば、国民投票を中止する用意があるとの考えを示した。
但し、財政緊縮策の受入では譲歩姿勢を示してい
ない。

ギリシャ政府はまた、欧州中央銀行(ECB)に対し、緊急流動性支援(ELA)枠の拡大を検討するよう要請した。

欧州中央銀行(ECB)は6月28日、緊急理事会を開催し、緊急流動性支援(ELA)での資金供給を増額しないことを決めた。
緊急支援枠は6月23日の引き上げで890億ユーロ前後とされる。

ギリシャの銀行が担保として差し入れているギリシャ国債は2月11日をもって適格担保要件を失ったため、ギリシャの銀行にとってはELAでの資金供給が唯一の道である。

2015/2/9 ギリシャ問題 

この増額が拒否された結果、銀行の資金繰りがつかないため、チプラス首相は6月29日から銀行を休業させ、資本規制を導入した。
銀行は6月29日から7月6日まで6営業日を休業する。6月29日はATMを含め、金融サービスが全面的に止まり、6月30日以
降は1日の預金引き出し額が60ユーロに制限された。 

付記 高齢者の多くがキャッシュカードを持たないため、銀行は7月1日から120ユーロまでの年金引き出しに限り
     窓口業務を再開した。

   ECBは7月1日の理事会で上限を890億ユーロで据置くことを決めた。毎週見直す。

IMFは、ギリシャが6月30日の期限までに15.5億ユーロの債務を返済しなかったことを確認し、ギリシャを先進国として初めての「延滞国」に認定した。

過去の延滞は、ソマリア、スーダン、ジンバブエのみ。

ギリシャは、6月5日のIMFへの債務返済を月末に先送りした。
6月中に期限を迎える4回分の返済計1
5.5億ユーロは、6月30日にまとめて支払うこととしていた。

6/5 3.0

億ユーロ

6/12 3.4  
6/16  5.7  
6/19  3.4  
15.5  

ギリシャ財務相は6月30日、IMFへの債務を返済しないと述べた。
政府は6月30日支払予定の年金
についても一部で遅れが生じると発表したが、こちらはなんとか支払が出来た。

IMFの報道官はギリシャが同日、返済期限の延期を要請したことを明らかにし、IMFは理事会で検討すると述べた。
一方、追加融資については、債務を返済しなければ受けられないと述べた。

ユーログループは7月1日に電話会議を開き、ギリシャ問題について討議する。

付記 ユーロ圏財務相会合で、7月5日の国民投票の結果が出るまでギリシャ側と交渉はできないとの見解で一致した。

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ギリシャの債務の8割は公的部門向けとなっており、民間保有の国債は390億ユーロ(12%)に止まる。
このためギリシャがデフォルトになっても、影響は大きくないと見られている。

  EU(欧州金融安定基金:EFSF) 1310億ユーロ(42%)
欧州中央銀行(ECB)  国債 270億ユーロ(9%)
IMF 7%

 

2015/7/1 日本経済新聞  2015年3月末時点

 

ギリシャは6月30日にIMFへの返済ができなかった。7月13日にはIMFへの4億5千万ユーロの返済を控える。
S&Pは公的機関であるIMFへの返済が滞ってもデフォルトにはあたらないとの見方を示している。

しかし、7月14日 にはギリシャ政府が抱える債務返済案件のうち、1995年に発行した20年物のサムライ債の約117億円(約8300万ユーロ)償還がある。
また7月17日は、2014年7月発行の3年もの国債の利払い(7100万ユーロ)がある。

これらの支払が滞った場合、格付会社はギリシャ国債をデフォルトと判断するとみられる。

更に、7月20日 にはECBへの 35億ユーロ、8月20日には同じくECBへの32億ユーロの返済を控えている。

S&Pは6月29日、状況が好転しなければ6ヶ月以内のデフォルトは避けられないとし、ギリシャ国債の格付けをCCCからCCC-に一段階下げた。
ギリシャがユーロ圏から離脱する可能性は50%程度あるとしている。

ギリシャ国債の格付け推移

S&P Moody's
B (ギリシャ ↓  2015/2/6) B2
B- (ギリシャ ↓  2015/4/15) B3
CCC+ (ギリシャ ↓  2015/6/10) Caa1 (ギリシャ ↓  2015/4/29) 
CCC (ギリシャ ↓  2015/6/29) Caa2 ギリシャ
CCC- ギリシャ Caa3
付記 Mpody'sは7月1日、ギリシャをCaa3 に引き下げた。


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米自治領プエルトリコは6月29日、「720億ドルに上る負債を返済できない」として、事実上のデフォルト宣言をした。

2008年のリーマン・ショック前後から、石油高などで苦しみ、経済立て直しが進まない中で歳入の見通しが甘く、想定以上に財政赤字が増えたという。

今後は債権者との協議で数年間の支払い猶予を求める方針。

ギリシャに加え、プエルトリコの債務問題も新たな懸念材料となる。




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