イラン、制裁解除で原油の輸出、生産を拡大へ

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イラン核問題をめぐってウィーンで協議を続けていた
米英独仏中露の6カ国とイランは7月14日、問題解決のための「包括的共同行動計画」で最終合意に達した。
イランは今後10年以上にわたり核開発を大幅に制限し、軍事施設に対する査察も条件付きで受け入れる。

6カ国は、イランが核開発を縮小する見返りに、原油禁輸や、金融取引を制限してきた対イラン制裁を解除していく方針で、AP通信は、今回の合意で数百億ドル分の制裁が緩和されると伝えた。

ただし、米議会は本年5月に最終合意の内容を検証し、承認するかどうかを判断する決議を可決している。
米議会は今後60日間にわたり、最終合意の内容を検証するが、この間は大統領は対イラン制裁を解除できない。
議会が合意を承認しない場合、大統領は「合意の履行を妨げるいかなる立法にも、拒否権を発動する」としている。

イランは国際的な経済制裁の解除をにらみ、原油の供給拡大の準備に入った。

イランの足元の輸出量は日量 約120万バレルで、制裁前の半分以下に落ち込んでいるが、石油相は、輸出は制裁解除直後に日量50万バレル、6カ月後には100万バレル増えるだろうと指摘し、近い将来に輸出量は日量250万バレルまで回復するとの見通しも語った。

イランのタンカー船団は約4千万バレルの原油を蓄えており、制裁解除に伴う在庫放出で1700万バレル以上を直ちに出荷できる模様。

イランは、制裁が解除された場合に、潜在的な出荷分を吸収してもらうほか、新たな油田に投資してもらうため、以前同国から原油を購入していたEUの企業、例えば世界最大の独立系石油取引会社のスイスのVitol Groupや、Shell、TOTAL、ENIといった石油生産大手、アジアの既存の輸入者とも連絡を取っているとされる。

原油相場で一段の価格下落圧力になる。

ーーー

イランはOPEC第2位の生産国としてのかつての地位を取り戻すことに意欲を示しており、OPEC内の競争が激化する可能性があ る。

OPECの国別生産枠は2008年11月が最終で、イラクを除く全体 日量 27,300千バレルのうち、サウジの8,477千バレルに次ぐ第二位の3,618千バレルであった。

OPECは2012年1月にイラクを含めた全体枠を30,000千バレルと決め(国別枠なし)、その後変更していない。

生産枠   日量千バレル
  2008/11
(除イラク)
2009/1
(除イラク)  
2012/1~
(含イラク)  
Algeria    1,286   






国別なし 






国別なし
 

Iran    3,618   
Kuwait    2,399   
Libya    1,623   
Nigeria    2,050   
Qatar 785     
Saudi    8,477   
UAE    2,433   
Venezuela    2,341   
Angola    1,801   
Equador 493   
Iraq (ー)     (-)
合計 27,300      24,845 30,000


サウジの現在の生産量は約1千万バレルとなっているが、イランは2012年7月の制裁開始で生産量は大きく減少しており、
6月の生産量は日量2,800千バレルとされる

イランの場合、老朽施設の更新が急務で、2022年までにエネルギー産業に1800億ドル(約22兆円)を投資する計画を表明している。

外国の石油大手の誘致のため、資源開発の契約方式の見直しも進めている。現行の「バイバック契約」に代え、外国企業が出資比率に応じ収益を得られるようにする見通し。

但し、国際石油資本がイランに再参入し、増産が軌道に乗るには1~2年かかるとの見方がある。
OPECも、年内は生産枠を据え置く見通し。

来年は世界の原油需要が日量134万バレル拡大すると予想 しており、「非OPEC国の生産が想定通りに鈍化し、同時に需要の伸びが来年も続くなどの条件が満たされれば、市場はイラン産原油を吸収することができる」としている。

 

 

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