天津爆発事故のその後 (2)

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天津の爆発事故を受け、市トップの黄興国・共産党委員会書記代理兼市長が8月19日、事故後初めて市内で記者会見し 「天津市の党委と政府の主要な責任者として私には今回の事故に対して逃れられない責任がある」と述べ、責任を取る意向を表明した。
黄市長は、習近平国家主席に近い指導者として知られる。

中国共産党中央規律検査委員会は8月18日、天津市の爆発事故現場で事故対応を指揮していた楊棟梁・国家安全生産監督管理総局長(閣僚級)を「重大な規律・法律違反の疑い」で調べていると発表した。
楊氏は天津市で国営化学メーカーや市経済分野の幹部を歴任し、2001~2012年の間、天津市副市長を務めた。

中国メディアは瑞海国際物流の董事長ら10人が拘束されたと報じた。ずさんな管理体制や贈収賄などについて調べている模様。

爆発現場の南約800メートルにマンションが立ち並び、数千人が暮らしていたが、壊滅的な被害を受けた。

中国の法律は、周囲1キロの範囲に住宅などがある場所に危険化学物質の貯蔵施設を造ることを禁じているが、人民日報によると、近くのマンション群が完成した後の2013年に爆発が起きた貯蔵施設の建設許可が出ていた。

地元では貯蔵施設の管理会社の幹部が天津市の幹部の親類だったといったうわさも繰り返し流れてい たが、同社の株の45%の所有者・董社軒が天津港公安局の元局長の息子であることが分かった。会長が55%を保有する。

この董社軒が新華社のインタビューで、「警察や消防当局とコネがある。私が彼らに資料を渡せば、すぐに認可をくれた」と話したという。 贈賄の事実には触れなかったという。 

付記  
会長は李亮で55%株主とされるが、実際の55%株主は創業者の於學偉于学伟)で、元 Sinopec 天津分公司副總經理

また、爆発した倉庫には許可量を大幅に上回る猛毒の化学物質があったことが分かっている。

天津市当局は、損壊した周辺の住居を買い取ったり、修繕したりする方針を明らかにした。破損程度を当局が査定する。

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天津市は8月19日、現場に残る化学物質について、硝酸アンモニウムや硝酸カリウムなどの酸化物が約1300トン、ナトリウムやマグネシウムなどの可燃性の高い物質が約500トン、シアン化ナトリウムなどの毒物が約700トンあると明らかにした。

国営中央テレビは17日、爆発現場の空気中から高濃度の有毒な神経ガスが検出されたと伝えた。李興華副参謀長は「シアン化ナトリウムと神経ガスという二つの有毒物質の値が最高値に達した」と述べたという。

しかし、天津市環境保護局長は、「そのような物質は検出されていない」と否定した。

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新交通システム津浜軽軌の東海路駅(終点)の駅舎とコントロールセンターは爆発で大きく損傷した 。イオンの近くの会展中心駅や隣の市民広場駅の駅舎も大きな損傷を受けた。
このため、8月13日から全線は運営停止になった。

周辺3キロが立ち入り禁止となっている。

中国天津市トップの黄興国・同市共産党委員会書記代理は19日の記者会見で、天津の大規模爆発で生産停止に追い込まれるなどして影響を受けた企業は176社に上ると明らかにした。
損害額はまだ分からないという。

トヨタ自動車は8月19日、現地合弁会社の天津一気豊田自動車の泰達工場と西青工場の生産停止を8月23日まで続けることを明らかにした。
24日以降に稼働を再開するかどうかも未定という。

同社は夏期休業(8月9日~16日)明けの生産を8月17日から始める予定になっていたが、避難勧告が出されたため、19日までの3日間を操業停止と していた。

天津一汽トヨタは中国における主力生産拠点の1つで、小型車「カローラ」などを生産しており、2014年の生産実績は44万台。

泰達工場は爆発現場から約2キロほどしか離れておらず、爆発により窓ガラスが割れるなどの被害があった。3キロ以内は現在、立ち入り禁止となっている。
西青工場は約70キロと離れているが、泰達工場からの部品供給が滞るため、同様に稼働を停止していた。

部品供給が滞っているため、長春西工場(吉林省長春市)も20~21日に休止する。

トヨタは完成車や部品受け入れのための代替の港を探す準備を進めている。 トヨタは2工場の操業停止を再延長し、週明けの24~26日の3日間も続けると発表した。また、爆風の被害に遭った出荷待ちの新車が約4700台に及んだことも明らかにした。

付記

トヨタは2工場の操業停止を再延長し、週明けの24~26日の3日間も続けると発表した。また、爆風の被害に遭った出荷待ちの新車が約4700台に及んだことも明らかにした。

天津港は中国の主要な自動車の荷揚げ港の一つで、2014年の日本などからの輸入台数は約50万台と、中国全体の約4割を取り扱っているとされる。

ルノーの中国の合弁会社は港の倉庫に保管していた輸入車 1500台近くが焼けたり壊れたりする被害に遭ったとしてい る。
フォルクスワーゲンと現代自動車も、倉庫などに保管していた輸入車が被害を受けたことを認めている。
地元の自動車輸入販売会社「国機自動車」は当時、現場近くの倉庫に日本円で580億円余りに相当する6500台余りの輸入車を保管していたことを発表した。
被害は不明。

富士重工業は中国に生産工場を持っておらず、現地で販売する車両はすべて日本から輸出している。
天津港は2014年度に中国向けに輸出した約51千台のうち4割超を取り扱った最大の拠点となっているが、事故現場から約2キロ離れた物流拠点に保管していた新車百数十台が被害を受けた。

同社は8月19日、華北部向け輸出車の荷揚げを天津港から上海港へ一時的に変更する方針を明らかにした。8月20日に日本を出港する予定の輸送分から上海港に荷揚げ先を切り替える方向で最終調整している。

三菱自動車もスポーツタイプ多目的車(SUV)約600台の被害があった模様だが、「現場に立ち入れないので確認ができない」という。
同社は中国への輸出車の陸揚げを上海や大連などほかの港に切り替えることを決めた。

 

天津でカーナビなどを生産している富士通テンは製品を陸路で別の港まで搬送し出荷できないか検討している。  

大塚製薬は現場からおよそ4キロ離れたスポーツドリンクの工場で、窓ガラスが割れるなどの被害が出たため、14日から操業を停止していて、再開のめどは立っていないとしている。

イオンは爆発現場からおよそ2キロの場所にモールがあるが、周辺の立ち入りが規制されて被害の状況などが確認できず、営業再開のめどは立っていない 。

三越伊勢丹は
客入りが鈍いため閉店時間を3時間繰り上げている。

Hewlett-Packardは被害が比較的大きく、正常化の目途は立っていない。
 

三井化学(7月から三井化学SKCポリウレタンが85.1%出資する天津天寰ポリウレタンは 北東の漢沽区で通常通り操業している 。
しかし、トヨタ向けの自動車座席の素材を製造していることから、「トヨタの生産停止が長引けば影響が出る可能性がある」という。

2009年9月に天津市の市轄区のうちの渤海海岸に面した塘沽 区(TangGu)、漢沽区(Hangu)、大港区(Dagang)が合併し、浜海新区が設置された。

爆発が起こったのは塘沽区。
天津天寰ポリウレタン漢沽区にあり、Sinopec天津とSinopec SABIC天津石油化学は南の
大港区にある。

 

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