Butamax Advanced Biofuels, LLC とGevoは8月24日、バイオベースのイソブタノールに関して世界中での特許のクロスライセンス契約を締結し、長期間争ってきた特許紛争を解決したと発表した。
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ButamaxはDuPontとBPのJVで、DuPontのバイオ技術・バイオ関連の製造技術とBPの燃料の技術経験と販売ノウハウを結びつけるもの。
両社は2003年にバイオ燃料の共同開発で合意し、2004年に対象をバイオブタノールに決め、2005年にコアとなる特許を申請した。
両社は2006年6月19日に、既存のバイオ燃料の限界を超える次世代バイオ燃料の開発・製造・販売でのパートナーシップの設立を発表した。
2008年に事業採算を確認、2009年にButamax社が設立された。
Butamax は2013年に第一世代のエタノールメーカーのHighwater
Ethanol LLC と組み、同社のプラントをButamaxの最新の技術で改造した。
2014年に商業生産を開始した。
Gevoは2005 年にコロラド州Englewood を本拠地として設立された。
同社はカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の遺伝子組み替え技術を導入してバイオマスからイソブタノールを選択的に生産する技術を開発した。
現在、ミネソタ州Luverneの発酵プラントでイソブタノール、エタノール、高価値の動物飼料を生産している。
また、バイオアルコールから石化製品をつくる技術を開発しており、テキサス州 Silsbeeにバイオリファイナリーを持ち、South
Hampton Resources Inc.の協力のもと、バイオジェット燃料、オクタン、ポリエステル原料などを生産している。
2009年にフランスのTotal が出資し、役員1 名を送り込んでいる。このほか、 Coca-Cola Companyや東レなど多数の有力企業と提携している。
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Butamaxは2011年1月、特許侵害でGevoを訴え、それ以降、抗争が続いている。
Delaware 地裁は2013年4月11日、GevoがButamax 特許を侵害していないとの判決を出した。
これに対し、Butamaxは控訴し、控訴裁は2014年2月18日、問題となった特許請求の新しい解釈に基づき、地裁判決を覆した。
これに対し、Gevoは最高裁に上告した。
そして、前週の Teva Pharaceuticals とSandoz の特許紛争での判決で決まった控訴裁でのレビューの基準に基づき、再検討するよう控訴裁に差し戻した。
この審理が始まる予定であったこの日(8月24日)に和解が発表された。
Teva とSandozの特許紛争は下記の通り。
Tevaは多発性硬化症治療薬Copaxoneの特許権を有しており、Sandozがこの治療薬のジェネリック品を上市しようとしたため、TevaはSandozを特許権侵害で訴えた。これに対し、Sandozは 、クレームの記載用語が不明瞭であるとして、本特許の無効を主張した。地裁は、当業者であれば十分理解することができると判断し、専門家からの証言を録ったのち、特許は有効であるとの判決を下した。
連邦巡回区控訴裁は、 審理を最初からやり直し、用語が不明瞭であるとして、地裁の判決を覆した。
2015年1月20日、米国最高裁はこの事 案で、地裁のクレーム解釈判決を控訴で再審理する際に使用すべき新基準を打ち立てる判決を下した。
これまでは、「de novo基準」(地裁判決を考慮せず、最初からやり直す)を使用していたが、今回、7対2の多数決で、再審においては地裁で判決の下された事実問題は「clear error基準」(明らかな誤りがない限り、地裁の判断を尊重する)を使用するべきであり、de novo 基準は、事実問題以外の法律問題などで使用すべきであるとした。事件を総轄し、証言を実際に傾聴した地裁の判事は、証言はなく、弁論趣意書に基づいた代理人の議論だけが行われる控訴裁の判事に比べ、事実をより詳細に理解しているはずであるとしている。
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和解に当たって金銭の授受があるのかどうかについては明らかにされなかった。
クロスライセンスにより、両社はイソブタノールの全分野で全ての特許を使用できる。サブライセンスも可能。
各分野で年間30百万ガロンまではロイヤリティなしで販売できるが、これを超えた場合、下記の通りロイヤリティを支払う。
分野 幹事会社 ロイヤリティ
支払 受取 On-roadのガソリンブレンド Butamax Gevo Butamax ジェット(Alcohol-to-jet) 燃料 Gevo Butamax Gevo 船舶用ガソリンブレンド、卸パッケージ燃料、
パラキシレンー Butamax Gevo ケミカル イソブチレン ー Gevo Butamax Off-road ガソリンブレンド、イソオクタン、
ディーゼル、溶剤ー 双方無し
幹事会社は必要な許可(EPA、ULその他)を取ったり、相手側の製品のこの分野での販売を手助けする。
イソブタノール製造・販売で全ての特許をクロスライセンスするが、両社とも独自のバイオ触媒やプロセス技術を持ち、これらは自由に第三者にライセンスできる。
両社とも発表分以外は情報を秘密とすることで合意した。
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