8月20日は世界モスキート・デーであった。
マラリアはマラリア原虫に感染したハマダラ蚊に刺されることにより人に感染する病気で、世界で毎年約2億人が発症し、約58万人が亡くなっていると言われている。
1897年8月20日にイギリスの医学者であるRonald
Ross(1857~1932)が、ハマダラカ蚊の胃の中からマラリアの原虫を発見した。
これを記念して、8月20日はWorld Mosquito Day と呼ばれている。
Ronald Rossはこの発見により1902年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。1911年にナイトに叙勲された。
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次のような経緯がある。
マラリアの語源は "mala aria" で「悪い空気」を意味し、水はけが悪い地域の毒気に当てられた、と考えられていた。
フランスの Alphonse Laveran (1845~1922)
は、ストラスブルグ大学で医学を学び、アルジェにいた時マラリアの研究を始めた。
1880年11月、コンスタンチンの陸軍病院においてマラリア患者の血液を検査し、赤血球内にある小体が色素を含有して運動するのを見つけ,また赤血球外に飛び出しては鞭毛を出し、活発に運動するものを発見した。
マラリア原虫のプラスモジウスであった。
この発見でフランス科学アカデミーの名誉会員になり、後にコルシカ島に行きマラリアの撲減を計画し,蚊の絶減と湿地の治水を実行して効果を挙げた。
1907年にマラリア原虫を発見した功績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
Patrick Manson (1822-1922) は、蚊によるマラリア媒介説を提唱した。
Mansonは、フィラリアの寄生によるフィラリア症の研究を行った。
フィラリアは人体内においては発育し得ないことを見つけ、中間宿主の体内においてのみ発育し、ヒトに移ると推定し、蚊に注目した。
1877年に、蚊の胃においてフィラリアが袋を破り、脱皮して胃壁をとおり抜けて筋肉に入り、ここで成長する事実を発見した。
Mansonはフィラリア研究より推論して、マラリアも中間宿主があって人に伝染するもので、恐らく一種の蚊が伝染の仲介者であろうと考え、1894年にマラリア・蚊媒介説を発表した。
Ronald Ross は、インドで生まれ、英国に帰って教育を受け、India Medical Service の試験に合格し、インドに渡った。
マドラスで多数のマラリア患者の血液を検査したが、原虫プラスモジウスを発見することができなかった。
ロンドンでMansonの研究室を訪ねた際に、Mansonはマラリア・蚊媒介説を説明し、この分野の研究を行なうことを勧めた。
Rossは1895年にインドで研究を開始、1897年にマラリア患者がRossの知らない種類の蚊(ハマダラ蚊)を示した。
Rossはこの蚊に患者の血液を吸わせ、毎日その蚊の胃を検査した。
その結果、1匹の蚊の胃壁に小球体を発見し、この小球体は蚊が患者の血液を吸って、4日後に発生することがわかり、またこの小球体が発育することを知った。
Ross はノーベル賞を受賞したが、Rossにマラリア・蚊媒介説を伝え、研究を指導したManson は受賞していない。
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住友化学は世界モスキート・デーの8月20日、マラリア対策向け新規殺虫成分の現地試験を開始すると発表した。
(英文発表は住友化学と下記のIVCCの共同発表)
非営利団体 IVCC(蚊が媒介する疾病の感染を減らすことなどを目的として、2005年にBill & Melinda Gates Foundationの支援を受けて設立)と共同で、マラリアなどの感染症を媒介する蚊を駆除する新たな殺虫成分のアフリカでの現地試験を開始する。
開発品は従来のマラリア対策用の殺虫成分と異なる作用機作を持っており、既存の殺虫剤に抵抗性をもつ蚊に対する効果や安全性について、研究室レベルですでに確認されている。
これまで、住友化学の「オリセット®ネット」をはじめとする長期残効型防虫処理蚊帳や、室内残効性スプレーが普及することで、罹患率は大きく低下してきた が、一部地域では、既存殺虫剤に抵抗性をもつ蚊の発生が確認されている。
開発中の新規殺虫成分は、こうした抵抗性問題の解決につながることが期待される。
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