アイルランドの製薬会社Shire Pharmaceuticalsはバイオ医薬品の米Baxalta
に株式交換による約300億ドル相当の買収案を提示した。
Baxalta はBaxter Laboratoriesから7月にスピンオフしたばかり。
Shireの提案では、Baxalta
の株主は1株当たりShireの米国預託証券(ADR)を0.1687ADR受け取る。
Baxalta 株を45.23ドルと評価したことなり、これは8月3日終値を36%上回る水準。
非米国会社が、米国において株式により投資家から資金を集めようとする場合、母国との物理的な制約から株券の受け渡しに手間がかかる上、配当金が企業の母国通貨建てで支払われることから、米国投資家に取引上・為替上のリスクや不便が生じていた。
ADRは、これらの不都合を解消し米国株式と同様、米ドルでの売買・決済、および配当金の受領を可能にした。併せて証券の保管も米国内で行われる。
Shire はBaxalta に対し「買収協議に応じる」よう求めたが、Baxalta はこれまでのところ協議を拒否しているという。
Baxaltaは希少な血友病や免疫不全症の治療薬を手掛け、Baxterからスピンオフ(分離・独立)を完了したばかり。
スピンオフ後もBaxterが24%前後の株式を保有し、筆頭株主の座を維持している。
Baxterは2014年3月27日、バイオ製薬事業を分離し、別会社として上場する計画を発表した。バクスター本体には、輸液製剤などの医療用品事業が残る。
市場や成長ペースが異なる2つの事業を分離し、経営効率や株主価値の向上を見込む。新会社として分離するバイオ製薬事業は、血友病や他の血液疾患の治療剤、ワクチンなどを手がける。2013年の売上高は約60億ドルだった。
一方、本体に残る医療機器事業は輸液製剤や薬剤投与関連製品が中心。2013年の売上高は90億ドルだった。
2012年に血液透析システム大手のスウェーデンのGambro ABを約40億ドルで買収し、事業規模を拡大していた。
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Shire は患者数の少ない希少疾病に強い製薬会社で、競合を避けながら4割弱の高い営業利益率を誇っている。
Shire Pharmaceuticalsは2014年7月、2013年初めに米Abbott
Laboratoriesからスピンオフして誕生したAbbVie Inc. に買収されることで合意したが、AbbVie は2014年10月15日、Shire
Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。
米政府が9月22日に節税目的の本社移転の抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断したもの。
AbbVie による買収案の撤回により、Shire は違約金16億ドルを受け取った。
2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる
NPS Pharmaceuticals は、希少疾病用医薬品(Orphan drug)に重点を置いたバイオ製薬企業で、下記の有力製品を持つ。
成人の短腸症候群 (SBS) 治療薬としてGattex®が米国と欧州で承認されている。
成人の副甲状腺機能低下症における NatparaTM(遺伝子組み換えヒト副甲状腺ホルモン)は、第3相試験が完了した。
ShireのCEOは、バイオテクノロジー企業としての存在感を増すために、引き続き買収機会を模索していくと述べた。
これらの関係は下記のとおり。
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