米医薬品メーカー Sucampo Pharmaceuticalsは8月26日、アールテック・ウエノを330億円で買収すると発表した。
アールテック・ウエノ
の持つ現金約54百万円とSucampo 株式 (250万株、持株比率5.5%)を含む。
1株1900円で公開買付けを行い、全株式の56%を取得する。
残る44%については、アールテックの創業者と関係団体から1株1400円で買い取る。
Sucampo も アールテックも、上野隆司博士と久能祐子博士夫妻が設立した会社で、夫妻は両社の大株主である。
今回、両社を一体化する。
Sucampo:夫妻及び夫妻の資産管理会社(S&R Technology Holdings)が46.17%を所有
(2015年3月に株式公開のため一部放出した後の持株比率)アールテック:S&R Technology Holdingsが32.99%、上野博士が16.57%、久能博士が10.35%
(他にオリックスが9.19%)
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夫妻は新技術開発事業団(現 科学技術振興機構)で研究に携わっていたが、上野博士はプロスタグランジンの代謝物でケトン基を有するものが活性を有することを発見し、プロストン(Prostone) と名付けた。
夫妻は上野博士の父親が社長の上野製薬で緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ点眼液」の開発を進めた。
夫妻は1989年にアールテック・ウエノを設立、久能博士は経営に専念した。
1994年に「レスキュラ点眼液」の製造承認を取得し、藤沢薬品工業(現 アステラス製薬)と独占的販売契約を交わした。(2004年10月に眼科領域に強い参天製薬へ変更)
2001年に上野製薬からレスキュラの製造販売業務の承継を含む事業承継を受け、製造発売元になった。
夫妻は1996年に米国にSucampo
Pharmaceuticalsを設立し、Prostoneをベースにした医薬品の開発を開始
した。
最初の製品がAmitizaで、成人向け慢性特発性便秘症治療薬として2006年1月に米食品医薬品局(FDA)より販売認可を受けた。
2002年に英国にSucampo Pharma Europe、日本にスキャンポファーマを設立し、日米欧三極で医薬品を開発する体制を構築した。
アールテック・ウエノは、グループの中で、プロストン製剤の全世界への製造供給を担う。
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Sucampo Pharmaceuticalsは米国とカナダでのAmitizaの独占販売権を武田薬品に譲渡、武田薬品は米国で 2006年4月に販売を開始した。
久能博士は「ワシントンDCライフスタイル」のインタビューで次のように述べている。
1996年には最初に開発した薬のロイヤリティーも入り始めていたので、それを元手にしてアメリカで上野と共に創薬ベンチャーの「スキャンポファーマシューティカルズ」を1997年に立ち上げ、私はCEOに就任しました。
2002年にお金がなくなった時に投資家を募ったほか、最終的にまたお金がなくなった時にはまた新薬の販売権を武田薬品に合計200億円で売る(マイルストンを含む)ことにし、2006年に2番目の新「アミテーザ」の販売にこぎ着けました。
Sucampo Pharmaceuticalsは2010年3月15日、武田薬品が便秘薬のCollaboration and License Agreementに違反したとして、この契約の終了と損害賠償を求めて国際仲裁裁判所に調停を申し立てたと発表した。
Sucampoが開発した便秘型過敏性腸症候群治療薬アミティーザの売上高が当初予想を下回ったことなどを理由に「武田側が販促活動を怠った」として契約終了を要求していたが、武田側が要求を受け入れなかったとしている。
2012年7月、国際仲裁裁判所はSucampoの主張
を認めず、損害賠償についても認めなかった。
この結果、2004年に締結した独占的供給契約は継続することとなった。
その後2014年10月に、Sucampo Pharmaceuticalsと武田薬品
は、AMITIZA®について、グローバルでの開発、販売、供給に関する契約を締結した。
武田薬品は、これまでの米国・カナダに加え、日本および中国以外のすべての国におけるAMITIZAの独占的販売権を獲得した。
日本については2009年2月にアボットジャパンが独占販売権を取得している。
また、Sucampoは2015年5月11日、Harbin Gloria Pharmaceuticals Co., Ltd. (哈爾濱譽衡藥業有限公司)との間でAMITIZA®に関する中国での独占的ライセンス契約を締結した。
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