今年のIg Nobel Prize 贈呈式が9月17日、米ハーバード大であった。
25周年となる今年のテーマは "Life"で、関連する10分野から受賞者が選ばれた。
このうち、医学賞を大阪府寝屋川市の開業医、木俣肇院長(62)とスロバキアの研究者らが共同受賞した。
木俣院長の受賞理由は、「情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験」。
アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の患者と健常者それぞれ30人ずつ計90人に対し、それぞれの恋人やパートナーと静かな音楽の流れる個室で30分間、自由にキスをしてもらった。
キスの前後でスギ花粉やダニに対するアレルギー反応の強度を調べる皮膚テストや血中成分を測定したところ、腫れが小さくなり、アレルギー反応が抑制される傾向がみられた。
2週間後、今度は同じカップルにキスをせずに部屋で30分抱き合ってもらったが、効果は確認されなかった。
さらに性交でもキスと同様の効果があることを確かめ、論文を専門誌に発表した。
Kissing Reduces Allergic Skin Wheal Responses and Plasma Neurotrophin Levels Physiology and Behavior, vol. 80, nos. 2-3, November 2003
Reduction of Allergic Skin Weal Responses by Sexual Intercourse in Allergic Patients Sexual and Relationship Therapy, vol 19, no. 2, May 2004
Kissing Selectively Decreases Allergen-Specific IgE Production in Atopic Patients Journal of Psychosomatic Research, vol. 60, 2006
共同受賞のスロバキアの研究者の研究は、キスのあとで、混じった相手の唾液のDNA判定を行うという実験。性犯罪の捜査に利用しようというもの。
12組のペアに激しいキスをしてもらい、女性の唾液から男性のDNAを調べた。
その結果、相手のDNAが一定期間、被害者の口のなかに残り、早い時点では唾液から分離できるため、犯罪の証拠として利用できることが分かった。
その他の受賞:
授賞式では、2005年に栄養学賞を受賞した発明家のドクター中松も参加、自身が患うがんに負けないとのメッセージを込めた歌を披露し、拍手喝采を浴びた。
過去のイグ・ノーベル賞については、下記を参照。
2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞 2007/10/8 2007年イグ・ノーベル賞 2008/10/4 2008年イグ・ノーベル賞 2009/10/3 2009年イグ・ノーベル賞 2010/10/7 2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞 2011/10/1 2011年度イグノーベル賞 2012/9/25 2012年 Ig Nobel 賞に日本人の「スピーチジャマー」 2013/9/16 2013年 Ig Nobel 賞、日本の2チームが受賞 2014/9/20 2014年イグ・ノーベル賞
名前 受賞 1992 神田不二宏, E. Yagi,
M. Fukuda、K. Nakajima,
T. Ohta and O. Nakata
(資生堂研究センター)薬学賞
足の匂いの原因となる混合物の解明1994 気象庁 物理学賞
地震が尾を振るナマズによって引き起こされるかどうかを7年間研究した功績1995 渡辺茂(慶應義塾大学)
坂本淳子
脇田真清(京都大学)心理学賞
ハトの絵画弁別(ハトを訓練してピカソとモネの絵を区別できるようにした)功績1996 岡村長之助
(岡村化石研究所)生物学的多様性賞
岩手県の岩石から古生代石炭紀(約3億年前)の石灰岩中に超ミニ恐竜化石を発見した功績
(小さな石を顕微鏡で見て超ミニ恐竜化石だと主張して発表)1997 舞田あき(バンダイ)
横井昭宏(ウィズ)経済学賞
バーチャルペット(たまごっち)の開発によりバーチャルペットへの労働時間を費やさせた功績1997 柳生隆視 他
(関西医科大学)生物学賞
様々な味のガムをかんでいる人の脳波を研究1999 牧野武
(セーフティ探偵社)化学賞
妻や夫の下着に適用して精液の跡を発見できる浮気検出スプレーの開発.2002 佐藤慶太(タカラ社社長)
鈴木松美(日本音響研究所)
小暮規夫(獣医学博士)平和賞
コンピュータ・ベースでの犬と人間の言葉を自動翻訳するデバイス「バウリンガル」開発2003 広瀬幸雄 教授
(金沢大学)化学賞
銅像に鳥が寄りつかないことをヒントに、カラスを撃退できる合金開発2004 井上大佑 平和賞
カラオケを発明し、人々に互いに寛容になる新しい手段を提供2005 中松義郎
(ドクター中松)栄養学賞
36年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調に与える影響を分析2007 山本麻由 化学賞
牛糞からバニラの芳香成分 vanillin の抽出2008 中垣俊之ほか 認知科学賞
真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てる2009 田口文章ほか 生物学賞
パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量2010 中垣俊之ほか 交通計画賞
粘菌が交通網を整備2011 今井眞ほか 化学賞
わさびの臭いが火災報知器の役割を成す理想的な空気中のわさび濃度2012 栗原一貴、塚田浩二 音響賞
迷惑を顧みず話し続ける人の話を妨害する装置「スピーチジャマー」を開発2013 新見正則ほか 医学賞
心臓移植したマウスにオペラを聴かせると生存期間が延びた今井真介ほか 化学賞
タマネギの催涙成分をつくる酵素2014 馬渕清資ほか 物理学賞
「バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいのか」を実験で解明2015 木俣肇 医学賞
情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験2005年までに11件、2007年からは9年連続で10件(2013年は2件)で、合計21件の受賞となった。
このうち、中垣俊之教授らのチームは、2008年に真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てることができることを発見し認知科学賞を受けたが、2010年にはその延長で、粘菌が交通網を整備することを発見し、交通計画賞を受賞した。
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