油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger、Cameron International を買収

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油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger Ltd.は8月26日、掘削機材メーカーのCameron International を約127億4000万ドルで買収すると発表した。

合併により、油田調査から井戸掘削までの幅広い事業にCameronの油圧制御機器や爆発防止装置といった商品を加えられるようになる。

Cameron株主は1株につき現金14.44ドルとSchlumbergerの0.716株を受け取る。Cameron株主は統合後の会社の約10%を握る計算。
1株当たりでは66.36ドルで、
Cameron株の25日終値(原油価格下落で1年で42%下落している)を56.3%上回る水準となる。

取引は2016年1-3月期中の完了予定。Schlumbergerによれば、シナジー効果(税引き前)は完了後1年目で約3億ドル、2年目で6億ドルに達する見込み。

CameronとSchlumbergerは2013年6月、海底石油・ガス市場向けに製品、システム、サービスの製造と開発を行う合弁事業のOneSubseaを60/40の出資で設立している。

今回の買収についても数ヶ月間、協議していたとされる。Schlumbergerはその間の株価下落で安価に買収できたこととなる。

原油価格の低下を受け、エネルギー各社は投資を削減している。
日本経済新聞はメジャー6社は2015年の投資を前年実績の16%に相当する約300億ドル減らすと報じている。エネルギー業界全体で投資見直し規模は2000億ドル規模に上るとの予測もある。

今回の買収はこれに対応するものであり、2014年11月に発表された業界2位のHalliburton Co. と3位のBaker Hughes Inc.の346億ドルの合併に次ぐものである。

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米資源装置・サービス大手のHalliburton Co は2014年11月17日、同業のBaker Hughes Inc を現金と株式で買収すると発表した。買収総額は346億ドルに上る。

原油安を受けて世界的に石油開発のピッチが鈍化する可能性が出てきており、互いの重複部門を整理するなどしてコスト競争力を高める。年間20億ドルのコストダウンを目指す。

売り上げ規模は単純合計でSchlumbergerを上回り業界トップの専業企業となる見通しだが、独禁法上で問題となる可能性がある。
Halliburton はこれを避けるため、75億ドル相当の事業の売却を行うとしている。

本年4月終わりに、HalliburtonはSperry Drilling 事業を売りに出した。30億ドルでの売却を狙っている。

更に掘削ビット(鑿)事業も売りに出した。15~20億ドルを見込んでいる。

独禁法をクリアできない場合、Halliburton はBaker Hughes に35億ドルを支払う。

 

しかし、米国でもEUでも公取当局の審査は難航している。

両社は米国のシェールオイルからブラジル沖の深海まで、多くの同じ地域で掘削を行っている。両社の事業所は北米、欧州、中国、中東からラテンアメリカまで重複している。

対策としてHalliburtonが行う事業売却が、合併で失われる競争を補うことになるのかどうかも疑問視される。

各当局は油田開発・サービスの2位と3位の合併による独禁法上の影響について懸念し、次々と資料を要求しており、見通しは立っていない。

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HalliburtonとCameronはともに、2010年4月20日に発生した海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig の爆発事故に関与している。

Deepwater Horizon rig 関連
  ・設計:R&B Falcon
  ・建設:韓国の現代重工業
  ・所有:Transocean(R&B Falconを買収)
  ・リース:BP Exploration and Production

  ・コントラクター 
    Transocean:掘削作業
    Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
       M-I SWACO(SchlumbergerとSmith InternationalのJV):Drilling Fluid (mud)サービス

  ・Blow Out Preventor(BOP)の製造:Cameron International

  2010/6/17 メキシコ湾石油流出事故の損害負担 

 

Halliburton:

Halliburtonは2014年9月、同社に対する一般及び漁業者からの損害賠償の訴訟で、11億ドルの支払で合意した。

BPはHalliburtonに対し、不適切かつ不注意に作業を行い、これが爆発の原因になったとして、民事訴訟を行った。
これに対し、Halliburtonは、爆発は他の関係者により起こったもので、同社の行動によるものではないとして、BP、Transoceanと他のコントラクターを訴えた。

2015年5月21日、BPとHalliburtonは和解し、それぞれに対する訴訟を取り下げた。

米政府による水質浄化法(Clean Water Act)に基く民事訴訟の裁判で、New Orleansの District Court のCarl Barbier 裁判官は2014年9月4日、BPに「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。
リグのオーナーで掘削作業を行った
Transoceanとセメント作業を行ったHalliburtonに対しても「過失」(「重大な過失」ではない)があったとみなした。

責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton が3%と認定した。

最終的にClean Water Actによる罰金は、BPは55億ドル、Transoceanは10億ドルとなったが、Halliburtonについては、政府から訴えられていないと報道 されている。

Cameron:

パイプの元には自動的に原油流出を止める噴出防止バルブ(blow-out preventer)が備えられていたが、装置が稼動しなかった。

2011年12月16日、BPとCameronは、CameronがBPに250百万ドルを支払うことで和解した。

刑事面では機器の欠陥を理由にいくつかの罪を問われたが、2013年4月にU.S. District JudgeはCameron側に重大な過失(gross negligence )無しとして全てのクレイムで免責とした。

同社は事故に伴い油井に関する新しい規則が出たため、石油会社が機器を更新したため、恩典を受けている。




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