TPP の発効条件

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環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の閣僚会合が10月5日午前閉幕し、交渉参加12カ国は貿易・投資ルールについて大筋合意した。

今後、参加12か国は協定案の内容が法的に矛盾していないか、詳細にチェックして最終案を取りまとめる作業を行う。

TPPが発効するためには、各国政府が協定に署名し、その後、各国の議会で批准される必要がある。

参加12カ国は10月5日の閣僚会合で、協定を発効する条件として、
すべての参加国が署名後2年以内に議会での批准手続きを終えるか、
2年以内に参加国すべてが手続きを終了できなかった場合、TPP全体のGDPの85%以上を占める、少なくとも6か国が批准手続きを終えることと決めた。

2013年の参加12カ国の名目GDPと、12カ国合計での比率は下記の通り。

発効には合計85%以上が必要なため、1国で15%以上の日本と米国の批准は必須となる。
残り10カ国のうち、4カ国合計6.9%以上の批准で発効することとなる。

仮に、 残り10カ国の上位3国(カナダ、豪州、メキシコ)のうちの2国が批准しなくても、他が批准すれば発効する。
カナダは10月19日に総選挙を控える。

世界
順位
GDP
(10億US
ドル)
12カ国での比率 発効条件
1 米国   16,768.05 60.4% 必須
   78.1%
3 日本 4,919.56 17.7%
11 カナダ 1,838.96 6.6% 残り4カ国以上
合計 6.9%以上   
12 オーストラリア 1,501.88 5.4%
15 メキシコ 1,262.25 4.6%
35 マレーシア 313.16 1.1%
36 シンガポール 302.25 1.1%
38 チリ 276.59 1.0%
53 ペルー 202.39 0.7%
55 ニュージーランド 184.75 0.7%
58 ベトナム 170.57 0.6%
112 ブルネイ 16.11 0.1%
合計 12カ国 27,756.52 100.0% 85.0%以上

 

最大の問題国はアメリカである。

政府が協定に署名する3か月前までに議会に協定内容を通知することが法律で定められているため、オバマ大統領が署名するのは少なくとも2016年の1月以降となり、議会での審議は2月以降となる。

来年早々には大統領選挙が始まるため、政治的に利用される恐れが多分にある。

民主党からの候補者指名を目指すHillary Clinton前国務長官は10月7日、「現時点では支持できない」とする声明を発表した。

「TPPが私が求める高い水準に達しているとは思わない」と指摘、為替操作への対応が不十分で、医薬品メーカーの利益を患者や消費者の利益よりも優勢させているとし、「何年も生活のやりくりに苦しんできた勤勉な米国民に害をなすリスクが大きい」としている。

共和党の候補者指名争いのトップを走る不動産王Donald Trumpは「現政権の能力のなさは理解を超えている。TPPはひどい協定だ」とツイッターで酷評した。
"Mike" Huckabee元アーカンソー州知事は「外国と交渉すると、オバマ政権は寿司のように巻かれてしまう。TPPは米国の労働者の腹を殴るようなものだ」と非難した。

民主党指名争いで2位につける"Bernie" Sanders上院議員は「消費者を傷つけ、米国人の雇用を犠牲にする破滅的なTPPを進める決定に失望した」とコメントを発表した。


米議会は2015年6月にTPPの合意のカギを握る「貿易促進権限(TPA)」法案を可決、オバマ大統領は6月29日、TPA法案に署名、成立した。
これにより、議会は、大統領と外国政府との通商合意の個別内容の修正を求めずに、一括承認するか不承認とかのどちらかである。

しかし、今回のTPA法案には、法案を通すために多くの条件をつけており、議会は要件を満たさない場合は上院の60%の賛成で貿易促進権限を取り消す権限も持つ。
条件の一つに
「通貨操作対策」があり、日本などの反対で折り込まなかったが、Clintonはこれを問題にしている。

2015/4/18 米超党派の議員、TPA法案を議会に提出

米国は医薬品業界の主張を容れ、「新薬データの保護期間」を長くすることを主張したが、Clintonは逆に短縮を主張している。 共和党は12年を8年に短縮したことに不満を持っている。

ほとんどの分野で立場により賛否が異なるため、場合によっては法案が通らない可能性もあり得る。
米国は Al Gore 副大統領が中心になりまとめた京都議定書を批准しなかった。

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