ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev、2位のSAB Millerを買収へ

| コメント(0)


ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev (AB InBev)と同2位の英のSAB Millerの取締役会は10月13日、AB InBevによるSAB Miller買収に原則的に合意した。

1株当たり44ポンド、総額では674億ポンド (1,036億米ドル)の買収で、買収打診が表面化する前日(9月14日)の株価に50%のプレミアムとなる。

約41%のSAB Miller株式については、最大3億2600万株のAB InBevの特殊株と交換するオプションが含まれる。

特殊株はAB InBev株とは異なる種類の形式(制限株)を取り、非上場で取引所での取引が認められず、5年間のロックアップ(譲渡禁止)期間があり、その後は普通株に1株対1株で転換できる、配当や議決権に関してはAB InBev普通株と同等というもの。

特殊株の選択肢を選んだSAB Miller株主は、保有する1株当たり特殊株 0.483969株と1株当たり3.7788ポンドの現金を受け取る。
10月12日の株価で計算すると、1株当たり39.03ポンドに相当し、33%のプレミアムとなる。

AB InBevでは、税金を考慮して特殊株の選択肢を選ぶのは第1位株主(26.99%)のAltria Groupと第2位株主のBevCo Ltd (13.99%)のみとみている。

両社の合併については、各国の独禁法当局が問題視するのは必至だが、AB InBev は対策に "best efforts" を約束、承認を得られない場合には30億米ドルのReverse Break-Up Fee(買主からの解約金)を支払うことも約束した。

調査会社Euromonitor によると、世界シェア(2014)はAB InBevが20.8%、SAB Millerが9.7%で合計すると30.5%となる。
以下、3位はHeineken(9.1%)、4位 Carlsberg(6.1%)、5位 華潤雪花(6.0%)、6位 青島ビール(4.7%) と続く。日本のキリンは2.3%、アサヒは1.2%に過ぎない。
下記の通り、華潤雪花には
SAB Miller が、青島ビールにはアサヒとAB InBevが出資する。

ーーー

AB InBev は10月7日、SAB Millerに正式に買収を提案した。

1株当たり42.15ポンドでの買収で、 約41%のSAB Miller株式については、最大3億2600万株のAB InBevの特殊株と交換するオプションが含まれる。

AB InBevはこれまで、水面下で1株当たり38.00ポンドを提案して拒否され、40.00ポンドでも拒否されていた。今回の提案は買収打診が表面化する前 日(9月14日)の株価に44%のプレミアムを加えたものとなる。

AB InBevとSAB Miller の補完的な地理的事業展開領域とブランド・ポートフォリオを考慮すると、合併グループは事実上すべての主要なビール市場で事業展開することになる。
これにはアフリカ、アジア、中南米など大きな成長が見込まれる主要な振興地域が含まれる。

合併企業となるこのグループは、640億米ドルの収入とEBITAで240億ドルを生み出すとしている。

SAB Millerの最大株主で26.99%を保有するAltria Group(旧称 Philip Morris、2003年1月に改称)は、合併は株主にとって利益になるとし、この提案に賛成の意向を表明し、SAB Miller の取締役会に早急に、また建設的にAB InBev と話し合い、合意するよう求めた。

しかし、SAB Millerは同日、これを拒否した。Altria Group指名の取締役を除き、全員が提案を拒否したという。

AB InBevによる同社の企業価値の評価は不十分であるとしている。「非常に著しく過小評価している」とした。

10月12日、AB InBevは新しい提案を行い、1株当たり43.50ポンドに引き上げた。(48%のプレミアム)
特殊株の選択肢を選んだSAB Miller株主は、保有する1株当たり特殊株 0.483969株と1株当たり3.56ポンドの現金を受け取る。(33%のプレミアム)

この翌日、更に若干の価格引き上げで合意した。

ーーー

SABMiller の母体は1895年に本社ロンドン、工場ヨハネスブルグとして作られたSouth African Breweriesである。
2002年にアメリカ第2のビール会社Miller を買収してSABMiller となった。

2004年にベルギーのInterbrew とブラジルのAmBev が合併してできたInBev が、2008年6月にBudweiser で知られる世界3位のAnheuser Busch に買収を提案した。

InBev は2008年11月、520億ドルでの買収 を完了し、社名をAnheuser-Busch InBev と改称した。
2012年には、50%保有のメキシコのGrupo Modelo の残り50%を201億ドルで取得し、完全子会社化した。


仮に両社が合併すると、米国や中国の独禁当局から事業売却を迫られるのは必至である。

報道では、米国ではAB InBevだけでもシェアは半分近いため、また中国では両社のネットシェアが高いため、事業売却を求められる可能性が強い。

SAB Miller が米国で58%を出資するMillerCoors の売却は確実とされる。

中国ではSAB Miller が中国No.1の華潤雪花ビールに49%を出資する。
(下記の通り、AB InBevは中国商務部から
、華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならないとの条件を付けられている。)
AB InBevは、下記の青島ビール(7.01%)や珠江ビールのほか、中国4位のハルビンビール(Harbin Brewery
)を、SAB Miller との買収合戦の末に買収している。

中国の独禁法は2008年8月1日に施行されたが、同年10月に InBevによるAnheuser Busch 買収の申告を受け、商務部は11月18日、これを以下の条件付きで許可した。

 (1)青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない。
 (2)
InBev の主要株主もしくは主要株主の株主に変化が発生した場合には、ただちに商務部に通告すること。
 (3)珠江ビールに対する
InBevの株式保有率28.56%を増加してはならない。
 (4)華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならない。
     華潤雪花は華潤創業と米Miller の合弁会社で中国販売量ナンバーワンビール(シェア15%)
 (5)上述の条件に反する業務を求める場合、商務部が認可するまで実施してはならない。

AB InBev は2009年1月、所有する青島ビールの株式27%のうち、19.99%をアサヒビールに売却することで合意、4月30日に実施された。

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

InBev は韓国第二のビール会社 OBビールを所有していたが、Anheuser Busch 買収に伴う負債返済のため、この売却を計画した。

InBev 2009年7月にKohlberg Kravis Roberts (KKR)に18億ドルで売却したが、2014年1月に再買収した。

2014/1/25 Anheuser-Busch InBev、韓国のOBビールを再買収 

AB IBevによるメキシコのGrupo Modelo (コロナビールで有名)の100%子会社化に際しては、米司法省の反対を受け、コロナなどの米国における無期限販売権をワイン大手のConstellation Brandsに付与した。

コメントする

月別 アーカイブ