岸田文雄外相は、10月12日にイランでザリフ外相と会談し、投資協定締結で合意する見通しで、同国との経済協力を加速させる。
付記 投資協定締結で合意した。
イランが7月14日に米英独仏中露の6カ国と、核問題解決のための「包括的共同行動計画」で最終合意に達したのを受け、日本は、制裁解除を見込んで、9月からイランと締結交渉を開始した。
約1カ月の短期の交渉で合意するのは異例の速さで、政府は来年の通常国会に協定の承認案を提出し、来年半ばの発効を目指す。
ドイツ、フランス、中国、韓国など52カ国が既にイランと協定を結んでいる。
米国では、米議会が5月に、最終合意の内容を検証して承認するかどうかを判断する決議を可決している。上下両院が不承認決議案を可決した際は、政府が国内法に基づき制裁を継続するよう義務づけていた。
米議会上院は9月10日、イラン核合意の不承認決議案の審議を進めるための動議を否決した。
オバマ政権はただちに対イラン制裁の解除への具体的な作業に着手する。
岸田外相のイラン訪問に、経済界21社の役員が同行する。
イランは豊富な資源と約7800万人の市場に加え、インフラ需要が魅力。
伊藤忠商事、三菱商事、三井物産など大手商社8社は、イランで資源開発や高速鉄道、航空機、インフラ関連ビジネスの開拓を目指す。
日揮などエンジニアリング3社も石化や肥料プラントの商機を探る。
自動車分野では日産自動車、いすゞ自動車、三菱自動車、マツダの4社が同行。
エネルギーでは過去に南Azadegan油田開発に参加していた国際石油開発帝石のほか、JX日鉱日石エネルギー、昭和シェル石油の3社が資源開発や製油所改修への参画を目指す。
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イランはもともと親日国で、日本のAzadegan油田開発復帰に前向きとされる。
2000年のハタミ大統領訪日時に両国間で交渉開始に合意し、2001年7月、平沼赳夫経済産業相がテヘランでハタミ大統領と会談し、開発の早期契約に向けて努力することで合意した。
2004年2月、国際石油開発は イラン国営石油(NIOC)との間でAzadegan油田の評価・開発に係わる契約に調印した。
・国際石油開発 とイラン国営石油子会社NICOが、それぞれ75%と25%の参加権益で、Azadegan油田の評価・開発作業を推進する。
・開発第一段階は契約調印後4年4ヶ月後から日量15万バレルの生産を予定し、その後開発第二段階として、契約調印後8年後から日量26万バレルの生産を計画。
・契約調印後3年4ヶ月間で日量5万バレルのレベルで生産開始を予定。
契約後もイランの核開発疑惑を強く批判する米国がイランへの石油投資に反対の姿勢を崩さず、日本側に契約延期を要請していたが、国際石油は2005年末に「着手が遅れると権益を失いかねない」と判断し、本格生産に向けた開発を2006年中に始める方針を固めた。
Azadegan油田はイラン・イラク国境に近く、イラン・イラク戦争で100万発といわれる地雷が敷設され、そのままになっているため、地雷の除去を始めた。
その後、イランの核問題は解決のきざしが見えず、開発に着手出来ない状況が続いた。
国際石油開発はイラン側が約束した油田の地雷除去を終えていないことが遅れの主因と主張したが、イラン側は地雷除去は96%終わっており、作業に問題はないと反論し、2006年9月末までに開発を始めない場合、同社に与えた開発権を取り消し、イラン政府が引き取るとし、早期着工を促した。
2006年10月、国際石油開発とイラン政府は、日本側の開発権の保有割合(出資比率)を大幅に引き下げることで大筋合意した。
国際石油開発 75%/NICO 25% → 国際石油開発 10%/NICO 90%
2006/10/9 Azadegan油田の開発権引き下げでイランと合意
その後、NIOCの方針で北Azadegan油田と南Azadegan油田に分けられた。
2009年1月、中国のCNPCは北Azadegan油田開発の契約を締結した。石油埋蔵量は60億バレルとされる。
2009年8月にはCNPCはNIOCとの間でメインの南Azadegan油田の開発に関する覚書を締結した。油田の70%の権益を取得し、開発費用の90%を負担する。
北Azadegan CNPC
南Azadegan 国際石油開発 10%/NICO 20%/CNPC 70%2009/8/5 CNPC、イランのAzadegan油田の権益取得へ
国際石油開発帝石は2010年10月15日、Azadegan油田開発プロジェクトから撤退することについて、イラン国営石油会社との間で合意したと発表した。 権益10%を無償で返還する。
南Azadegan 国際石油開発 0%/NICO 30%/CNPC 70%
2010/10/1 日本、イラン・Azadegan油田から撤退へ
なお、Sinopec とイラン石油省は2007年12月9日、 Azadeganに隣接するYadavaran油田開発の契約に調印した。
Sinopecが今後30年間にわたり毎年2億5千万トンの液化天然ガスを購入するほか、Yadavaran油田の開発権を得るというもので、同油田の開発が成功した場合、中国側は25年間にわたって、毎日15万バレルの原油の供給を受けることでも合意している。
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中国は2010年末以降、米国を初めとする諸大国からの制裁を避けるため、イランにおけるエネルギー事業の関連作業を凍結していた。
イラン石油省は2014年4月29日、Azadeganの油田開発でCNPCとの契約打ち切りを発表した。
事業の遅れが理由で、CNPCは2012年に開発を始めたが、計画にある油井185カ所のうち7カ所しか採掘できていない。
報道では、イランは、近い将来の制裁全廃を見越し、油田開発契約の見直しを進めており、今回の決定はその一環で、日本や欧州による開発を望んでいるという。
しかし、ロイターは2015年8月3日、中国の匿名消息筋からの情報として、10月頃よりCNPC とSinopecがそれぞれ 北Azadegan油田、Yadavaran油田の採掘を再開するとし、以下の通り報じた。
CNPC は10月初めに北Azadegan油田でフェース1 のキックオフを行う。
生産開始の最終段階にあるとしており、能力は明らかにしていないが、イラン情報ではフェース1 は日量75千バレルとされる。Sinopec GroupはYadavaran 油田のフェース1で日量85千バレルの生産を開始する。
これが事実なら、2014年にイランが契約を打ち切ったのは南Azadegan油田だけであった可能性がある。
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