サントリー、中国のビール合弁企業の株式譲渡 

| コメント(0)

サントリーは10月19日、中国子会社が青島啤酒(青島ビール)との50/50 合弁企業の2社「三得利青島啤酒(上海)」と「青島啤酒三得利(上海)銷售」の同社保有の全株式を来年の春をめどに青島ビールに譲渡することで合意し、10月18日に契約調印したと発表した。 売却額は156億円とされる。


青島ビールとの間で新たに製造・販売に関するライセンス契約を結ぶことで、株式譲渡後も三得利(サントリー)ビールブランドは上海、江蘇省を中心に、これまで通り販売される。


サントリーは2012年6月5日、100%出資の子会社 サントリー(中国)ホールディングスが中国のビール会社青島ビールとの間で、上海および江蘇省におけるビールの事業会社と販売会社を50/50合弁で上海に設立する契約に調印した。

サントリーは1984年から中国でビール事業を開始、1995年には清涼飲料事業をスタートした。その後も「響」「山崎」などのウイスキーを発売、2005年に黄酒(ホアンチュウ)事業に参入したほか、2010年には中国のワイン輸入販売会社「ASC Fine Wines Holding」を買収し、伸長する中国ワイン市場への進出を果たした。
ビール事業は上海・江蘇省を中心に展開しており、特に上海ビール市場におけるシェアはNo.1を誇っていた。

青島ビールは、1903年中国山東省青島で設立された中国で最も伝統のあるビール会社の一つで、中国全土で販売している主力ブランド「青島ビール」は毎年伸長を続けている。

上海および江蘇省におけるビール事業をいっそう強化したいという両社の意向が一致し、同エリアに特化したビールの事業会社および販売会社を合弁で設立した。

事業合弁会社 販売合弁会社
社名 三得利青島啤酒(上海)
Suntory Tsingtao Brewery(Shanghai)
青島啤酒三得利 (上海)銷售
Tsingtao Brewery Suntory (Shanghai)Sales Co
場所 上海市松江工業区 上海市虹口区
出資 サントリー(中国)HD 50%
青島啤酒   50%
サントリー(中国)HD 50%
青島啤酒   50%
事業内容 「三得利」「青島」ブランドビールの事業企画、ブランドマーケティング、生産など 「三得利」「青島」ブランドビールの営業企画、販売、物流など

2013年4月、設立の手続きが完了し、事業を開始した。

年間売上高は400億円程度とみられる。2014年に約8600万ケース(大瓶20本換算)を販売、大市場の上海で約3割のシェアを握る三得利はこのうち約3400万ケースで、日本のサントリーのビール類全体の約半分の規模にあたる。

しかし、中国は世界最大のビール消費国だが、伸び悩みが顕著で競争が激化しており、景気減速や倹約令などの影響で2014年に初めて前年割れとなった。
合弁会社も首位の華潤雪花ビールなどとの価格競争が激化し、赤字に陥っていた。

サントリーはこのまま青島との合弁事業を継続しても大きな成長は見込めないと判断し、 ライセンス契約に変更、今後、中国でのビジネスはワインや洋酒などに軸足を移すこととした。

ーーー

青島ビールにはアサヒビールが19.99%を出資している。

アサヒビールは1994 年に伊藤忠商事と共同で1994年に杭州西湖啤酒朝日有限公司(杭州ビール)に資本参加した。
(ASAHI Breweries ITOCHU Holdings 55%、杭州市工業資産経営有限公司 45%)

その後、杭州市工業資産経営有限公司が持分を華潤雪花啤酒に売却したため、青島ビールと提携していたアサヒは2011年、持分を華潤雪花に売却した。

1995年にはAsahi Breweries Itochu は北京啤酒朝日有限公司と煙台啤酒朝日有限公司(煙台ビール)の経営権を取得した。

2008年11月、青島ビールが煙台ビールの株式の39%を取得することで調印した。
煙台ビール「煙台啤酒青島朝日有限公司」となり、Asahi Breweries Itochu 51%、青島ビール39%、煙台集団が10%となった。

更にビール事業を強化するために、1996 年には青島ビールとの提携協議を開始し、1997 年には深圳青島啤酒朝日(深圳青島ビール)の合弁事業を共に立ち上げ、また2002 年には日本での青島ビールの販売も開始している。

青島ビールにはAnheuser Busch が27%出資していた。

2008年6月にベルギーのビール会社 InBev Anheuser Busch に買収を提案した。

中国商務部は2008年11月、これを以下の条件付きで許可する通告を出した。

 (1)青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない (以下略)

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

2009年1月、アサヒビールは統合した Anheuser-Busch InBev SA が保有する青島ビールの株式の一部、約19.99%を約6億6,650万米ドルで取得する契約に調印した。

青島ビールは2009年8月27日、アサヒビールグループと「戦略的協力合意」を締結したことを発表した。

アサヒビールは青島ビールによる書面での同意がない限り、青島ビール株の保有率をいかなる状況でも19.99%を超えるものとしないことを約束した。
アサヒビールはさらに、協力合意の有効期間中、青島ビールをアサヒビールの中国ビール業での唯一の戦略協力パートナーとすることにも合意した。

アサヒビールの中国のビール会社の持株は以下の通り。
  北京ビール    47%
  煙台青島ビール 51%
  深
青島ビール 29%
  青島ビール    19.99%

ーーー

ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev (AB InBev)と同2位の英のSAB Millerの取締役会は10月13日、AB InBevによるSAB Miller買収に原則的に合意した。

中国ではSAB Miller が中国No.1の華潤雪花ビールに49%を出資する。

AB InBevは、青島ビール(
7.01%)や珠江ビールのほか、中国4位のハルビンビール(Harbin Brewery)を、SAB Miller との買収合戦の末に買収している。

AB InBevは中国商務部から、華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならないとの条件を付けられている。

2015/10/14 ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev、2位のSAB Millerを買収へ

AB InBevがSAB Millerとの合併審査で青島ビール等の売却を求められる可能性は多分にある。

今後、中国のビール業界に大きな変動が予想される。

コメントする

月別 アーカイブ