英国を訪問している中国の習近平国家主席は10月21日、フランス電力公社(Électricité de France:EDF)がイングランド南西部サマセット州Hinkley Pointで進める新規原子力発電所Hinkley Point Cの建設プロジェクトに33.5%を出資することで正式に合意した。
中国広核集団(CGN)が33.5%を出資、残りはEDFが出資する。
同原発の運転開始は当初の計画より2年遅い2025年になるが、総投資額が240億ポンド(約4兆5千億円)と見込まれ、25千人の雇用を生み、約60年間にわたり、約600万世帯に電力を供給することになる。
オズボーン財務相は9月に中国を訪問した際、同国の投資を促すため、英政府も自らHinkley Point Cに20億ポンドを投入することを確約していた。最終的な投資決定は、早ければ向こう数週間以内に下される見通し。
Sizewellの新原発は中国から20%の出資を受け入れる。
一方、Bradwell新原発は資金の2/3 を中国から受け入れるとともに、欧米で初めて中国製の原子炉を採用する。
採用するのは「華龍1号」と呼ぶ新型原発で、フランスから技術供与を受けた中国国有大手の中国広核集団(CGN)と中国核工業集団が中心となって開発した。主要部品の国産化率は85%を超えるという。
福清5-6号機の建設工事が始まっており、防城港の3-4号機もこれを採用する。
2015/10/16 中国の原発
英国では19基の原発が稼働しているが、英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。
稼働中 廃止 政府案 Berkeley 2基 Bradwell 2基 ◎ Calder Hall 4基 Chapelcross 4基 Dounreay DFR 2基 Dungeness 2基 2基 Hartlepool 2基 ◎ Heysham 4基 ◎ Hinkley Point 2基 2基 ◎ Hunterston 2基 2基 Oldbury 2基 ◎ Sizewell 1基 2基 ◎ Torness 2基 Trawsfynydo 2基 Windscale 1基 Winfrith SGHWR 1基 Wylfa 2基 ◎ Braystones ◎ Sellafield ◎ Kirksanton ◎ 合計 19基 26基
しかし、福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。
英国政府はこのため、原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。
フランスのEDF と英国政府は2013年10月、2基の原発リアクターの建設で合意した。
英国での原発新設は1995年完成したSizewell B 原発以来となる。2023年の運転開始を目指す。
Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基(総出力320万kW)のHinkley Point C 原発を建設する。
これに続いて、Sizewell に2基のEPRの建設を進めるとしていたが、今回、Bradwellも加わった。
運営体制としては、機器メーカーのAREVA、提携している中国の中国広核集団(CGN:旧称中国広東核電集団)と核工業集団公司 (CNNC) に加え、他社の参加を交渉していたが、今回、EDFと広核集団による事業となった。
広核集団はこれを海外原発事業への進出の足掛かりにしようとしている。
同社はHorizon 買収にも名乗りを上げたが、英国政府は安全保障上、懸念を示し、最終的には日立製作所が取得した。
英国政府とEDFはこの時、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。
Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合 £92.50/MWh(約14.6円/kWh)これは現在の卸価格の約2倍になる。
2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加
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