アイルランドに本社を置く医薬会社 Allergan plc は10月29日、Pfizerから事業統合の提案を受け、友好的に予備的交渉を行っているという28日付けのWall Street Journal の報道を認めた。
Allerganは後発医薬品世界最大手の イスラエルのTeva Pharmaceutical に 後発薬事業を売却することで最終合意しているが、Pfizerとの話がどうなろうと、売却は実行するとしている。
2015/7/29 後発薬最大手のTeva、米 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収
米メディアは「実現すれば今年最大のM&Aになる」と伝えている。Allergan の時価総額は1100億ドル前後で、実現すると、ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev による同2位の英のSAB Millerの買収金額(1,036億米ドル)を上回り、今年最大のM&Aになる可能性が高い。
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Allergan plc は下記の歴史を持つ。
2012年4月に米ジェネリックメーカーのWatson Pharmaceuticalsは同じくジェネリックメーカーのActavis Groupを買収し、社名をActavisに改称し、2014年11月にしわ取りの医薬品BOTOX®が有名なAllergan plc を買収して、買収した会社の社名のAllerganに改称した 。
2回の買収で、ともに被買収会社の社名に改称したこととなる。
旧Allerganのしわ取りの医薬品BOTOX®が有名で、Pfizer は商品群をさらに広げるねらいがある。
Allerganはアイルランドを本拠にしており、Pfizerは統合後、本社をアイルランドに移すことを検討している。報道では本社海外移転によって年間の納税額は20億ドル前後も少なくなるという。
Pfizerは2014年1月に英同業のAstraZenecaに買収提案を行い、交渉を続けたが、同年5月26日、買収断念を発表した。Pfizerの経営幹部が、買収目的の一つを「効果的な租税負担を構築する」ことと述べており、買収目的の一つが、買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するというものであった。
2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案
但し、租税回避を巡っては、各国が対応策を検討しており、今後はメリットがなくなる可能性がある。
欧州委員会は10月21日、Starbucksがオランダ政府から、Fiat Finance and Tradeがルクセンブルグ政府から、それぞれEUでは違法となる優遇税制を受けていたと判断し、更に、アイルランドによる米 Apple、ルクセンブルクによる米 Amazonへの税優遇などでも正式調査を進めている。
G20は10月8日、ペルーの首都リマで財務相・中央銀行総裁会議を開き、タックスヘイブン(租税回避地)などを使った多国籍企業の税逃れを防ぐ新たなルールを採択した。
米国も課税ルールの変更を検討している。
2015/10/27 欧州委員会、StarbucksとFiatの税優遇を違法と認定、追加徴税を指示
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