住友化学、CO2分離膜の実証試験に成功 

| コメント(0)


住友化学は12月1日、子会社 CO2 M-Tech が開発中のCO2分離膜の実証試験で良好な結果が得られたため、2017 年初頭を目途に、国内化学メーカーの工場内にCO2分離膜の商業設備を導入する検討を進めると発表した。

CO2を分離する技術は、主に水素製造や天然ガス精製過程において CO2を除去するために使われているが、現在実用化されている「化学吸収法」や「物理吸収法」などのCO2分離技術は、多くの熱エネルギーと大型の設備が必要で、低コスト化が大きな課題となっている。

化学吸収法では、CO2を溶剤に吸収させ、CO2を吸収した溶剤をスチームで加熱することでCO2を分解・除去し、再び溶剤として回収している。このため、大量のスチームが必要で、エネルギー多消費型かつ巨大な脱炭酸塔が必要となる。

住友化学がルネッサンス・エナジー・リサーチとの合弁会社で開発中の膜分離法によるCO2分離技術は、既存の化学吸収法に比べプロセスがシンプルでエネルギー消費を大幅に削減でき、かつ、設備の大きさを2 分の1 以下に小型化できる点が特徴。


大阪ガスで触媒の研究を行っていた岡田治氏が2004年に大阪ガスを退職して設立したルネッサンス・エナジー・リサーチは、
世界最高水準の分離能力を有するCO2選択透過膜の開発に成功した。

2009/12/17 CO2選択透過膜の開発

住友化学、住友商事およびルネッサンス・エナジー・リサーチは2012年10月、「膜分離法」による CO2 分離事業への参入に向け、合弁会社を設立することで合意、2013年6月に CO2 M-Tech ㈱ を設立した。

当初の出資比率は、住友化学 47.5%、住友商事 47.5%、ルネッサンス 5%であったが、
現在は、住友化学 97%、ルネッサンス 3%となっている。

CO2 M-Tech 設立後、2014 年5 月から住友化学愛媛工場で、また2015 年9 月からは国内化学メーカーの工場内にパイロット設備を導入し、実際のプラント稼働環境下での実証試験を行い、分離膜のCO2透過性能や耐久性などを確認してきた。

水素製造や天然ガス採掘時のガスが本来有している数百kPa~数MPaの圧力を利用するだけでCO2を分離することが可能であり、分離に当たってスチーム等は全く使用せず、新たなエネルギーを殆ど必要としないため、大きな省エネ効果を達成できる。

例えば、一般的な規模の水素製造プラント(水素製造量:4万t/年)にこの膜を導入した場合、スチーム使用量を大幅にカットでき、石油換算で年間1,600万リットルもの節減が可能となる。

さらに、促進輸送機構を応用しているため、膜分離で最も重要な性能であるCO2分離スピード並びにCO2選択性は世界最高水準であり、この性能はシステムのコンパクトさを実現すると共に、プラントへの柔軟な対応をも可能にしている。

本システムを水素製造プラントに導入する場合のイメージは下記の通りで、化学吸収設備の前工程にCO2分離膜設備を設置し、CO2を50%程度事前に除去することで、スチームコストを削減する。

今後、水素エネルギーの利用拡大に伴い、需要の拡大が見込まれており、さらに、温室効果ガス削減の有望技術であるCCS(CO2を回収し地中に貯留)においても、コストの過半を占めるCO2の分離・回収コストを抑える観点から、「膜分離法」の実用化が期待されている。

コメントする

月別 アーカイブ