実効税率の引き下げ 

| コメント(0)

政府・与党は、来年度の税制改正で焦点の1つである法人税の実効税率の引き下げについて、来年度に29.97%まで引き下げる方向で最終調整に入った。

平成27年度税制改正では従来の34.62%を本年度に32.11%、来年度に31.33%にすることが決まっているが、安倍首相は来年度をこれ以下に引き下げ幅を拡大し、早期に20%台とすることに意欲を示している。

安倍晋三首相は2014年6月、法人実効税率を来年度から数年間で20%台に引き下げる方針を表明し、「日本の法人税は成長志向型に変わる。雇用を確保し、国民生活の向上につなげていきたい」と語った。

アベノミクスの第3の矢となる成長戦略の柱として6月24日の臨時閣議で策定した「骨太の方針」に 、「2015年度から引き下げ、数年で20%台を目指す」と明記した。

2014/6/26 法人税率の引き下げ 

12月5日付けの日経によると、与党は2018年度に更に29.74%まで引き下げる方針を固めた。財源を確保できる目途が立ったという。

実効税率の計算は下記の通り。

法人には法人税と住民税と事業税(事業税+地方法人特別税)がかかるが、事業税は翌期に損金算入できるため、これを折り込んで実質の税率を計算する。
計算は、(法人税率+住民税率+事業税率) / (1+事業税率)となる。

付記 12月16日に発表された税制改正大綱で2016年以降の計算が明らかになった。

法人税率  2016-17年は23.4%、2018年は23.2%に下げる。
事業税(地方特別税を含む)は、2015年の6.0%を3.6%に下げる。
これにより、実効税率は29.97%、29.74%となる。   

 

平成27年度税制改正では下記の通りとなっている。

現行 2015年度 2016年度
法人税率 25.5% 23.9% 23.9%
法人事業税所得割(地方特別税含む) 7.2% 6.0% 4.8%
実効税率 34.62% 32.11% 31.33%

原資の中心は欠損金繰越控除の見直しである。

現行 2015年度~ 2017年度~
控除限度(大法人) 所得の80% 所得の65% 所得の50%
繰越期間 9年 9年 10年
2017/4以降の欠損

今回の29.97%への引き下げについては、政府・与党は、赤字の企業にも事業規模に応じて課税する外形標準課税の拡大で、代わりの財源の確保にめどが立ったとしている。

法人事業税で、利益にかかわらず事業規模(資本金や従業員数)に応じて課す外形標準課税の割合を全体の3/8 から5/8に拡大し、約8000億円の財源を確保する。

更に29.74%への引き下げの原資として、企業の設備投資を促す目的で設けた設備投資減税を2016年度末に廃止し、年間1300億円を確保する。

他方、欠損金繰越控除は2017年度以降控除限度を所得の50%とする予定を1年延ばす。これにより、2017年度は財源は差し引きゼロとなるため、29.97%に据え置く。

2017年4月には消費税率の引き上げがあることを配慮するもの。

ーーー

赤字企業への課税強化は、これまで経済界は強く反対してきた。

11月26日の官民対話で、経団連の榊原会長が、今後3年間で設備投資を約10兆円増やすこと、春季労使交渉で今年を上回る水準を期待するとしたうえで、「来年度の実効税率20%台実現をお願いしたい」と述べたのに対し、首相は「産業界も法人税改革の財源確保に協力して欲しい」と要請した。

他に財源がないことから、経団連は赤字企業への課税強化を受け入れた。

ーーー

実効税率引き下げは、日本での投資促進が主目的だが、大部分の中小企業は赤字のため、実効税率引き下げは投資促進のインセンティブにならない。

自民党税制調査会は、2016年度からの3年間、中小企業が新たに購入する機械装置の固定資産税を50%軽減することを決めた。

対象は、資本金1億円以下の中小企業が、新たに導入する160万円以上の機械装置で、生産性やエネルギー効率改善が条件。
2014年度で対象は1兆460億円。

3年間にわたり、年1.4%の固定資産税を50%軽減する。

コメントする

月別 アーカイブ