田辺三菱製薬は、12月21日、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(一般名:Infliximab)について、既存治療では効果不十分な川崎病の急性期に対する効能・効果追加の承認を取得したと発表した。
生物学的製剤として、世界で初めての「川崎病」の効能・効果の承認取得となる。
川崎病の急性期では、冠動脈病変(冠動脈の拡大や瘤の形成)の発生を抑えるために、発熱などの急性期症状を早期に鎮静化することが治療目標とされているが、実際には既存治療では効果不十分で追加治療が必要な患者が存在し、そのうち、およそ4人に1人の患者に冠動脈病変をきたしてしまうとの報告もあることから、新たな治療薬の開発が望まれていた。
この高い医療ニーズを受け、同社は既存治療に効果不十分な急性期の川崎病患者を対象とした国内臨床試験を実施し、その結果、レミケード®の有効性ならびに安全性が認められた。
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川崎病は1967年に川崎富作博士が、小児の「急性熱性皮膚粘膜リンパ腺症候群」として発表し、現在は「川崎病」という病名になった。
川崎病は主に4歳以下の乳幼児に発生し、次の6症状のうち、5つを満たせば川崎病と診断する。
1. 5日以上続く発熱(38℃以上) 2. 発疹 3. 両目の充血 4. 唇が赤くなり、舌の表面に苺のようなブツブツができる(いちご舌) 5. 初期に手のひらや足裏がはれあがったり、赤くなったりする。熱が下がってから指先や手全体の皮がむけることがある。 6. 首のリンパ節がはれる。
最も問題になるのは、冠動脈に炎症が起きて、冠動脈瘤ができてしまうこと。
原因が不明のため根本的な治療法はないが、症状を軽くしたり、冠動脈瘤ができないようにするために、いくつかの治療が行われている。
(1) 急性期
a.アスピリンの内服
b.γ‐グロブリン療法:冠動脈瘤をつくりにくくさせる
γ‐グロブリンが効かない重症の場合は、ステロイド薬の投与や血漿交換療法を行うこともある。◎実際には既存治療では効果不十分で追加治療が必要な患者が存在、
そのうち、およそ4人に1人の患者に冠動脈病変をきたしてしまうとの報告もある。
今回の承認取得により、既存治療では効果不十分な川崎病患者の治療選択肢が拡大した。
(2) 急性期以後
冠動脈瘤ができた場合: こぶの程度に合わせてアスピリンの内服を続ける。
巨大なこぶの場合、アスピリンに、別の抗凝固薬の内服を加える。血管が詰まってしまう可能性が高い人:
血管バイパス手術や、カテーテルを血管に入れ、風船をふくらませて押し広げたり、
血管の壁が厚くなって内腔が狭くなっているところを削る治療も行われている。
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抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(REMICADE、一般名:Infliximab)は、Johnson & Johnson の子会社 Janssen Biotech(旧 Centocor Biotech) が創製した関節リウマチ等の治療薬で、1993年に田辺製薬が、日本及びインドネシア、台湾における本剤の開発・販売に関する契約を締結し、2002年にクローン病治療薬として日本での販売を開始した。
(田辺製薬は2007年10月1日に三菱ウェルファーマと合併し、田辺三菱製薬となった。)
田辺三菱製薬は、Unmet medical needs に応えるため、稀少疾病を含めた各種難病に対するレミケードの開発と適応性の拡大に取り組んでおり、今回の川崎病を含め13の適応症を有している。
適応症 承認時期 クローン病 2002年1月 関節リウマチ 2003年7月 べーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎 2007年1月 尋常性乾癬 2010年1月 関節症性乾癬 膿疱性乾癬 乾癬性紅皮症 強直性脊椎炎 2010年4月 潰瘍性大腸炎 2010年6月 腸管型ベーチェット病 2015年8月 神経性ベーチェット病 血管性ベーチェット病 川崎病(急性期) 2015年12月
なお、本剤は2012年に「難治性川崎病」に対して希少疾病用医薬品に指定されている。
希少疾病用医薬品は、次の指定基準に合致するものとして指定される。
希少疾病用医薬品の指定が、直ちに製造販売承認に結びつくものではない。
- 当該医薬品の用途に係る対象者の数が、本邦において5万人未満であること。
- 医療上の必要性
- 代替する適切な医薬品・医療機器又は治療法がないこと。
- 既存の医薬品・医療機器と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること。
- 対象疾病に対して当該医薬品を使用する理論的根拠があるとともに、その開発に係る計画が妥当であると認められること。
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