サウジアラビア 10兆円超の赤字予算、石化原料も値上げ

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WTI原油価格12月18日には34.73ドルとなり、12月31日は37.04ドルで終わった。
2015年の平均は48.78ドル/バレルと、前年までから大幅に低下した。

この結果、産油国の財政は急激に悪化した。

2015年11 月8日,IMFのラガルド専務理事は湾岸協力会議(GCC)諸国の財政相との会合で、思い切った財政改革と歳出削減の必要性を強調した。早急に付加価値税を導入する必要があるとも述べた。

サウジアラビアのサルマン国王は12月28日、閣議を開き、2016年の予算を承認した。

原油価格の低迷が続くなか、歳入が5138億リアル、歳出が8400億リアルとなり、財政赤字が3262億リアル(日本円で10兆4000億円)を上回る。
これに合わせて、財務省は2015年の予算執行の現状も発表したが、11兆7000億円を超える財政赤字になる見通しとなった。

単位:億リアル ( )は億米ドル 1リアル =0.26662米ドルで換算
2015 予算 2015 実績 2016 予算
収入 7,150 (1,906) 6,080 (1,621) 5,138 (1,370)
支出 8,600 (2,293) 9,750 (2,600) 8,400 (2,240)
赤字 1,450 (387) 3,670 (978) 3,262 (870)

2015年については、収入が予算よりも減少し、支出が増加した結果、赤字が予算の1,450億リアルから3,670億リアルに2.5倍に膨れ上がっている。

収入減は、石油関連の収入減少によるもの。
北海ブレント原油価格は1バレル37ドル前後で、2014年の高値の3分の1という低水準で、産油諸国の財政を圧迫している。
2015年の予算では、前提となる原油価格を明らかにしていないが、収入が前年度比で約30%減少すると見ていた。
実績はこれをはるかに下回る。

サウジは、これを覚悟の上で「減産しない」との決定を行った。

支出増は、1月にサルマン新国王の即位を祝って、総額320億ドルにのぼるボーナスを国民に支払った分と、隣国イエメンに対する空爆による軍事費の拡大などが影響した。

アブドラ国王が2015年1月23日に逝去し、弟のサルマン皇太子が新国王に就任した。

サルマン国王は「親愛なるわが国民はもっと報われるべきだ、わたしからどれだけのものを与えようとも、あなたがたに相応しいだけのものを与えることはできない」と述べ、下記のボーナスを支払った。

・国家公務員(軍人を含む)に基本給2か月分
・公教育を受けている全ての学生に2か月分の褒賞
・退職者に2か月分の年金
・社会保障の対象者、障害者に2か月分の給付金
・社会保障関係機関、スポーツクラブなどへの助成金
・電気・水サービスへの200億リアルの拠出

イエメンへの軍事介入に関連した防衛・安全保障関連支出の増加は200億リアル(53億ドル)に達する。
政府は2016年の防衛・安全保障関連費として予算で最大の割合の2130億リヤルを配分している。

赤字の補填について、サウジアラビア政府は、2016年の歳出の削減と一部国有組織の段階的民営化のほか、下記の諸案を検討している。

1) 国債の発行や対外資産の取り崩し

サウジは国債の発行や外貨準備の取り崩しで急場をしのいでいるが、準備資産残高は11月時点で2兆3832億リヤルと前年同月に比べ14%落ち込んだ。IMFは2015年10月、このままでは5年以内にサウジの準備資産が枯渇すると警告している。

2) 付加価値税の導入

IMFなどは湾岸諸国に対し、VAT導入や法人税・物品税の拡大などで歳入を多様化することを求めている。

アラブ首長国連邦の財務大臣によると、湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council )のメンバー諸国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの6カ国は12月初めに会合を持ち、付加価値税(VAT)導入で大筋合意した。各国は3年以内にVATを導入する計画で、最終合意には至っていないが、健康、教育、社会福祉、及び食品(94品目)を対象外とすることで合意した。

2015/12/12 湾岸諸国が付加価値税導入で合意

3) タバコやソフトドリンクへの増税

4) 今後5年間で光熱費や水道料金などに投入されている巨額な補助金の見直し

料金を安く抑えるために投入されている補助金の見直しの一環として、サウジアラビア政府は国内のガソリンや光熱費、それに水道料金などを値上げをすると発表した。

2015年12月から2016年1月にかけて実施され、企業や大口契約者だけでなく、国民も対象となる。

このうち、 ガソリンは12月29日から値上げとなり、高オクタンガソリンはリットル当たり0.60リアルから0.90リアル(24セント)に50%アップし、低オクタンガソリンは0.45リアルから0.75リアル(20セント)に 67%アップとなる。

天然ガス、ディーゼル、ケロシンなどの油類や、補助金の大きい電気代、水道代も値上げされる。

こうした対策は、生活を直撃し、国民の不満につながるおそれがあるため、政府は慎重に検討を進めるものとみられる。

5) 石油化学原料も12月29日から大幅に値上げされた。

メタンの価格はこれまでの100万BTU当たり75セントから1ドル25セントに、エタンは75セントから1ドル75セントに引き上げられる。
(米国の最新のエタン価格は100万BTU当たり2ドル24セント)


これを受け、サウジの石化各社は影響額予想を発表した。

SABIC 5%のコストアップ
Saudi Arabia Fertilizers Co (SAFCO) 8%のコストアップ
Yanbu National Petrochemical Co (Yansab) 6.5%のコストアップ
National Industrialisation Co (Tasnee) 190百万リアル (51百万ドル)
Saudi Cement Co 68百万リアル (18百万ドル) 
Petro Rabigh 300百万リアル (80百万ドル)

付記
Saudi International Petrochemical Co (Sipchem) 120百万リアル (32百万ドル)

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