攀鋼集団は四川省に本拠を置く企業で、鉄鋼のほか、子会社でバナジウムやチタンを生産する。
サンフランシスコ連邦裁判所に提出された起訴状によると、攀鋼集団は、DuPont のコンピューターに不正アクセスしたハッカーが得た情報を入手したとして、経済スパイの共謀罪と未遂罪が問われている。
攀鋼集団の技術者が2011年に「DuPontのコンピューターに不正にアクセスして入手した情報」を含む資料を中国から米国に持ち込んだという。
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攀鋼集団は2012年にもDuPontの塩素法酸化チタンに関する企業秘密を盗んだ容疑で起訴されている。
サンフランシスコの連邦陪審院は2012年2月8日、攀鋼集団とその子会社3社及び米企業1社を、商業機密窃取の疑いがあるとして起訴した。
また中国系アメリカ人夫婦2人、デュポン前職員2人が起訴された。起訴されたのは、
攀鋼集団と子会社の攀鋼バナジウムなど
Robert J. Maegerle(元DuPont社員)
Tze Chao(同上)
Walter & Christina Liew(夫婦)
USA Performance Technology Inc. (Walter Liewの経営していたコンサルタント会社)中国系アメリカ人夫婦が2人のDuPont元社員からDuPontの二酸化チタンに関する商業機密を手に入れ、攀鋼に売却した疑い。
Liewの貸金庫にあった書類には、Liewは1991年に中国政府の役人から中国で二酸化チタン工場を建設するための技術の取得を依頼されたと書かれている。
検察側はLiewと会った中国人の一人は中国共産党の高官で、その後政治局入りをしていることを明らかにした。検事は論告で、中国は二酸化チタンの能力が不足しており、この技術の確保が経済的にも科学的にも必要であるが、DuPontが中国にライセンスする気がないため、中国政府はこれを盗もうとしたとしている。
1998年に Maegerle は二酸化チタン製造プラントの設計に必要なプロセスや機器などのDuPontの秘密情報を Liew に渡した。
2005年にMaegerleはDuPontの塩素法プロセスに関する秘密情報を送った。
2008年にMaegerle、Liew、Tze Chaoは攀鋼集団に、中国で年産10万トンの二酸化チタンのプラントを建設するための資料を送った。
しかし攀鋼集団については、検察側が容疑を通知するやり方が法律上は不十分であったとして、判事が起訴を却下した。
攀鋼集団側の弁護士も出廷したが、米国の司法が中国企業を裁くことは出来ないと主張、司法権についての争いのためだけの出廷だとした。
この事件では、関与した個人は全て有罪となっており、Walter Liew は禁固15年となった。
2012/3/15 中国企業によるDupontの二酸化チタン技術の産業スパイ事件
今回の起訴状によると、攀鋼集団と身元不明のコンピューターハッカーは、上記のLiew夫妻などと並行してDuPontの機密を盗もうとした。
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DuPontは2013年7月に統合応用科学戦略を全事業で展開するための人事を発表したが、二酸化チタン事業を含む Performance Chemicals 事業をどうするかを戦略的に検討することを明らかにした。
スピンオフ、売却、その他の取引により同事業の全体又は一部分を分離することを検討するとしていたが、2015年7月1日にThe Chemours Company としてスピンオフし、New Yorkで上場した。
2013/7/29 DuPont、Performance Chemicals 事業の売却を検討
Pangang Titaniumによると、2014年末時点での酸化チタン能力は16万トンで、更に10万トンのプラントを重慶市に建設中で、2015年末には総能力は26万トンになる。
DuPont に関しては、同社の有機ELに関する企業秘密を盗んで母校の北京大学に持ち帰ろうとしたとして中国生まれの研究員Hong Mengが2010年10月に禁固14か月となっている。
2009/9/12 DuPont、産業スパイを摘発
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