Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反の集団訴訟で和解

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Dow Chemical は2月26日、2005年に米国の需要家が集団訴訟を行ったポリウレタン独禁法事件について、835百万ドルの支払で和解したと発表した。

1999年~2003年にDow Chemical、Bayer、BASF、Huntsman、Lyondell の各社がポリエーテルポリオール、MDI、TDI、MDI-TDI ブレンドなどの Polyether Polyol 製品で価格カルテルを結んだとして 、米国の需要家が集団訴訟を行ったもの。

この事件では、Dow 以外の各社はいずれも違法行為はなかったとしながらも、和解した。

2013年2月20日に陪審員はDowを有罪とし、4億ドルを支払えとする決定を行った。

Dowは裁判長に対し、有罪の証拠がないとして判決を取り消すように求めるとともに、集団訴訟の原告同士の被害が異なるとし、集団訴訟の要件である"共通性" がないため、集団訴訟扱いを取り消すことを求めた。

2013/2/27 Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反裁判で有罪

しかし、Kansas City地裁の判事は2013年5月15日、陪審員決定を退けるよう求めたDowの要請を却下し、3倍賠償の12億ドルを支払うよう命じた。
その後、別の事情で12億ドルから10.6億ドルに減額された。


Dowは控訴したが、コロラド州Denverの控訴裁は9月29日、一審判決を支持した。

裁判では、Dowがカルテルに参加したかどうかという点のほかに、 「集団訴訟」を認めるかどうかが問題になった。
米最高裁は2011年のWal-Mart Stores 事件と2013年のComcast Corp 事件の判決で、集団訴訟に厳しい制限を加えている。

2014/10/4 Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反の集団訴訟で控訴審でも敗訴 

コロラド州Denverの控訴裁は、上記の最高裁判決を勘案しても、集団訴訟として認められると判断したが、Dowはこれを不満とし、最高裁に上告していた。


2月13日、米連邦最高裁のAntonin Scalia判事が急逝した。

Scalia判事は共和党のレーガン大統領に任命され、保守的な価値観を持つ。
上記のWal-Mart Stores 事件とComcast Corp 事件の判決は
Scalia判事が書いたもの。

米国の現在の9名の判事のうち共和党大統領が任命した判事は5名、民主党大統領が任命した判事は4名であったが、Scalia判事の死亡で 4対4 となった。
オバマ大統領は大統領の考え方に近い判事を任命する可能性が強いが、共和党主導の議会の反対で承認されない恐れもあり、暫くはこの状態が続く。

Dowは、敗訴のリスクが増えたとして、一転して和解に応じた。

一審判決の10.6億ドル(プラス金利、弁護士費用)に対し、835百万ドルの支払で和解した。

Dowは、和解には応じたが、カルテルには参加していない、 Scalia判事の書いた最高裁の2つの判決から考え、本件は集団訴訟の対象ではない、との主張は保持している。

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