環境省、石炭火力発電所の建設を容認

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丸川環境大臣は2月8日、林経済産業大臣と会談し、石炭火力発電所の新設を容認する方針を伝えた。

その理由として、電力業界が新たに協議会を設置して電力事業者の削減計画の進捗をチェックすることを決めたこと(下記)や、経済産業省が発電効率の悪い発電所を建設する事業者に是正勧告や命令を行うことを検討していることなどを挙げた。

環境省と経産省の合意内容は下記の通り。

・火力発電の効率に数値目標を設定、効率の悪い設備は休廃止
・再生可能エネルギーと原発を合わせた非化石電源の利用を合計で原則44%以上にするよう電力会社に求める
・発電所のCO2排出量などの情報の開示
・電力業界は削減計画を誠実に実行

・環境省は電力業界の取り組みを毎年点検し、不十分なら見直しを求める

丸川環境相は2月9日の閣議後の記者会見で、全国で相次ぐ大型石炭火力発電所の新設計画を容認する意向を正式に表明した。

個別案件のアセス審査については国の温暖化ガス削減目標との整合性で判断する。
効率の悪い発電所の新設を認めず、経済産業省や電力業界が進める温暖化ガス削減計画の進捗を環境省が毎年点検することなどを条件にした。
達成が危ぶまれる場合は再び新設に異議を唱え、新たな規制の導入を検討する。

取り組みが不十分な場合について、丸川環境相は合意の見直しに言及。「最終的には炭素税などの導入も排除しないで考えたい」と語った。

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日本では大型石炭火力発電所の建設計画が続出している。

政府は2015年7月17日、地球温暖化対策推進本部を開き、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

2015/7/18 温室効果ガス 2030年に2013年比 26%減 

環境相は2015年6月12日、山口宇部パワー宇部興産の構内で石炭を燃料とする総出力120万kWの火力発電所を新設する「西沖の山発電所(仮称)」について、「現段階において是認しがたい」との意見書を経産相に提出した。

環境影響評価法及び電気事業法では、出力11.25万kw以上の火力発電所の設置又は変更の工事について、環境相は、提出された計画段階環境配慮書について、経産相からの照会に対して意見を言うことができるとされている。

2013 年4月に関係閣僚会合で承認された「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」では、電力業界全体で二酸化炭素排出削減に取り組む枠組の存在が不可欠であるが、枠組は構築されておらず、エネルギーミックスに基づく約束草案政府原案の達成に支障を及ぼす懸念があるとした。

電力業界各社は、2015年7月17日、低炭素社会の実現に向けた新たな自主的枠組みを構築するとともに、「電気事業における低炭素社会実行計画」を策定した。

内容は下記のとおりで、2030年度の販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を2013年度比約35%減らすというもの。

2030年度に排出係数 0.37kg-CO2 / kWh 程度(使用端)を目指す。

 2030年度CO2排出量(3.6億トン-CO2) / 電力需要想定(9.808億kWh) = 0.37kg-CO2/kWh

2013年度比 ▲35%程度相当と試算

火力発電所の新設等にあたり、BAT(Best Available Technology) を活用すること等により、最大削減ポテンシャルとして約1,100万トン-CO2の排出削減を見込む。


参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集するというだけで、具体的な「実行計画」はない。

環境相は2015年8月14日、中部電力が愛知県武豊町で2022年の運転開始を目指す大型石炭火力発電所(出力107万kw)について、また、8月28日、九州電力・東京ガス・出光興産の3社が設立した「千葉袖ケ浦エナジー」が千葉県袖ケ浦市で計画している大型石炭火力発電所の建設について、「環境影響評価(アセスメント)法に基づき「現段階では是認できない」とする意見書を経済産業相に提出した。

電力業界各社の「電気事業における低炭素社会実行計画」で公表した二酸化炭素削減目標は実効性が不十分なため、CO2排出量を2030年までに2013年比26%減らす政府目標達成に「支障を及ぼしかねない」と判断した。

2015/8/20 環境相、中部電力の石炭火力計画 是認せず 

環境省は2015年11月13日、関西電力などが千葉県市原市と秋田市で計画している2件の石炭火力発電所の建設について「現段階では是認できない」とする環境影響評価(アセスメント)の意見を経済産業省に提出したと発表した。

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電気事業連合会加盟会社と、電源開発、日本原子力発電、および新電力有志は2016年2月8日、「電気事業における低炭素社会実行計画」で掲げた目標の達成に向けた取り組みを着実に推進するため、「電気事業低炭素社会協議会」を設立した。

今回設立した「協議会」は、目標達成に向けた取り組みが実効性あるものとなるよう、会員事業者がそれぞれの事業形態に応じて策定・実施する取り組みを促進・支援する。

加えて、会員事業者の取り組み状況を適切に確認・評価し、本協議会全体でPDCAサイクルを推進することにより、目標の達成に向けた取り組みの実効性を高める。

協議会はCO2排出削減が進んでいない企業に対し、計画見直しを求める権限をもつ。
目標の厳守に向け、罰則を設けた。
削減努力が十分でない企業について、社名や違反内容の公表や、除名もあり得る。

電気事業連合会の八木会長(関電社長)は、この仕組みにより、2030年度に2013年比35%削減という「目標の達成を確実なものにしていきたい」としている。

今回環境省は、電力業界が協議会を設置して電力事業者の削減計画の進捗をチェックすることを決めたことを石炭火力新設承認の理由の一つとした。

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OECD作業部会は2015年11月17日、下記を除き、公的金融機関からの融資を制限することで合意した。
   ①「超々臨界圧」技術、
②低所得国と島嶼国向けに限り、出力50万kw以下の「超臨界圧」や30万kw未満の「亜臨界圧」

米政権の高官が匿名を条件に語ったところでは、石炭プロジェクト全体の85%に当たる案件で今後、金融支援が打ち切られる。
合意によると、融資制限は4年後に再び厳格化される見通し。

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