マイナス金利の波紋 

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日本銀行は1月29日、政策委員会・金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定した。今後は、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使して、金融緩和を進めることとした。

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日本銀行は2013年4月4日の政策委員会・金融政策決定会合で、「量的・質的金融緩和」の導入を決めた。

量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、それまでの金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)からマネタリーベース に変更し、マネタリーベースが年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う こととした。

* マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うこととし、長期国債の買入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国債としたうえで、買入れの平均残存期間を、 それまでの3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長した。

2014年10月31日の政策委員会・金融政策決定会合では、マネタリーベース増加額を拡大し、マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う こととし、資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化を決めた。(賛成 5、反対 4)

今回、引き続きマネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う とともに、マイナス金利の導入を初めて決めた。
(マイナス金利導入は、賛成 5、反対 4)

これまでの経緯は下記の通り。

白川・日銀

黒田・日銀

2013/4/4 2014/10/31 2016/1/29
金融市場
調節手段
無担保コール翌日物金利 マネタリーベース
マイナス金利の導入
マネタリー
ベース
年間 60~70兆円増 年間約80兆円増
2012年末 138兆円 2013年末 200兆円
2014年末 270兆円
長期国債
買い入れ

残高 年間50兆円増
40年債を含む全ゾーン
残高 年間80兆円増
平均残存 3年弱 7年程度 7年~10年程度

マイナス金利の概要は以下の通り。   

金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。 (2月16日から)
今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。

具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。
発表後、銀行株が急落したため、日銀は2月3日、
銀行収益への影響を見通しやすくするため、当面の処理を発表した。

2月3日発表 

金利率
2月残高 年80兆円増
2015年平均残高 210兆円 210兆円 0.1%
これを超えた残高 うち一定割合(下記①+② 40兆円 残り  0%
これを超える分  10兆円 10~30兆円 -0.1%

所要準備額に相当する残高
金融機関が貸出支援基金および被災地金融機関支援オペにより資金供給を受けている場合には、その残高に対応する金額

これまでの「量的・質的金融緩和」では、思ったほど銀行貸し出しは増えていない。
このため、日銀はマイナス金利により、金融機関が日銀から預金を引き出し、貸し出しに回すことを期待した。

マイナス金利の導入で円安・株高への期待が高まったが、 その後の国際的な株価下落で状況が一転した。

金融機関が日銀預け分を国債購入にまわすとの思惑と、国際的な株価下落で、比較的安全な日本国債に集中、国債価格が上昇 、2月9日には長期金利の指標となる10年物国債の市場利回りが一時、マイナス 0.005%となった。長期金利のマイナスはスイスに続き2例目。
満期9年以下の国債は既に金利がマイナスとなっている。

長期金利のマイナスは、多額の資金を国債で運用している金融機関の損益に影響を与える こととなる。

今のところ、個人の預金がマイナス金利になることは想定されていない。

欧州では環境対策プロジェクトなどへの融資を専門とするスイスの小銀行 Alternative Bank Schweiz が1月から個人の顧客にマイナス金利を適用した。
当座預金は -0.125%とし、10万スイスフラン(約10万ドル)以上の顧客には -0.75%とする。

株価の下落、円高が続いている。

日銀の黒田総裁は2月12日の衆院財務金融委員会で、急激な円高、株安、金利低下が進む国際金融市場について「日銀のマイナス金利が影響しているとは考えない」と明言し、「投資家のリスク回避姿勢が過度に広まっている」と指摘した。

マイナス金利政策は国債の利回り曲線(イールドカーブ)を押し下げる効果を発揮しており、「今後は効果が実体経済に着実に波及する」とし、「当然2%の物価目標の早期実現に資する」と強調した。「直接国民生活にマイナスになるとは考えられない」との見解を示し、「マイナス金利の趣旨や影響、効果について十分説明していきたい」と述べた。

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欧州では欧州中央銀行(ECB)やスウェーデン、デンマーク、スイスの中央銀行が既にマイナス金利を導入している。

導入 現在
ユーロ圏(ECB)  2014/6   -0.1% -0.3%
デンマーク 2012/7 -0.2% -0.65%
スイス 2014/12 -0.25% -0.75%
スウェーデン 2015/2 -0.1% -0.5%



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