人工知能を取り入れた新型コンピュータのWatsonを医療分野で活用するサービスの普及に向け、約2億人分の治療データを新たに獲得する。
Watsonはデータを蓄積・学習する機能を持つ。データ量が多ければ多いほど、利用者の問いかけに適切に回答する可能性が高まる。
ただしデータの背後にある個人については身元特定可能な情報を持たない仕組みになっている。
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IBMは2015年4月13日、医療データ解析部門「IBM Watson Health」を立ち上げると発表した。
ヘルスケア関連のデータをクラウドに集め、Watsonの自然言語認知機能によるビッグデータ解析サービスを開発、提供する。
この事業に関連して、Appleとの提携拡大や、Johnson & Johnson 及びMedtronicsとの提携も発表した。
AppleとIBMは2014年7月、企業向けモバイルサービスで提携したと発表した。
IBMのビッグデータと分析機能を iPhoneおよびiPad で利用できるようにする。今回のAppleとの提携拡大では、Appleのアプリが収集するユーザーの健康関連データをセキュアに保存・解析・モデリングするための場として「Health Cloud」を提供する。
J&J社とは、人工関節置換術や脊髄手術などの手術前後における患者のケアに関して、モバイル端末とWatson Health Cloudを活用した患者への指導ソリューションなどを開発する。
インシュリンポンプなどを手掛けるMedtronic社とは、糖尿病患者向けの個別化健康マネジメントに関して、患者の情報や、インシュリンポンプやグルコースモニターなどのMedtronic製機器で測定したデータをWatson Health Cloudで解析し、患者のケアなどに生かす。
更に、IBMはヘルスケアクラウド基盤を手掛ける Explorys、ヘルスケアマネジメント用ソフトウエアを手掛けるPhytel の買収を発表した。
Explorysは、オハイオ州クリーブランドを拠点とする企業で、同社のクラウド・コンピューティング・プラットフォームは、病気、処方、結果のパターンを認識するために、26の主流な統合ヘルスケアシステムで使われている。
Phytelは、テキサス州ダラスを拠点とする企業で、ヘルスケア提供事業者とケアチーム作業者が共に効果的なケアができるようなクラウドサービスを色々と開発、提供をしている。
2015年8月には、Watson Healthは医療用画像解析を行うMerge Healthcareを10億ドルで買収した。
これによりWatson Healthは膨大な医療画像データを所有することとなった。
Mergeの技術は、アメリカ中の7500の医療機関で使用されており、これまで合計300億ものレントゲン写真、MRI、CTスキャン画像を解析してきた。
IBMの研究者は、現在の医療データの90%は画像形式であると推測している。
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今回買収するTruven Health Analytics は米連邦政府やや州の機関、またその従業員組合、健康保険会社、生命保険会社など8500以上の顧客を抱え、医療機関などに対し、効率的な医療機関の運営や治療の質の改善などを指導するサービスを提供している。
Truven Health Analytics の買収で一気に2億人分の患者データを追加し、累計で3億人分を確保、世界最大級の医療データベースを構築する。
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