田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン

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2月23日付けの日本経済新聞の下記報道を受け、同社株に買いが入り、各紙が報道した。

田辺三菱製薬はタバコの葉を使ってつくるインフルエンザワクチンを2018~19年度にも実用化する。
鶏卵でウイルスを培養する従来方法で半年かかる製造期間を1カ月に短縮する。年ごとに流行する型が変わる季節性インフルに素早く対応できる。
ウイルスを使わないため、投与時の感染リスクも抑えられるとみている。ワクチンの効率的な製造技術として広がる可能性もありそうだ。

本件は、同社が60%所有するカナダのMedicagoの状況の報道である。

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田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダの医薬品会社 Medicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。

両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。

Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。

VLPは、ウイルスと同様の外部構造を持つ一方、遺伝子情報を持たないため、ワクチンとしての高い免疫獲得効果が期待されることに加え、体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる有望なワクチン技術として注目されている。

田辺三菱製薬は2011年9月にMedicago株式6%を取得、2012年2月にVLP製造技術を用いた新規ワクチンの共同研究契約を締結した。
まず、同年春から「ロタウイルスVLPワクチン」の研究を開始した。

田辺三菱はMedicagoのVLP技術を評価した結果、同技術は幅広い種類のワクチンを効率的に製造することが可能な有用性の高いものであり、同社買収により更なるパイプラインの強化を実現できるものと判断した。

Phillips Morrisは2012年9月、Medicagoとライセンス契約を締結し、Medicagoのインフルエンザワクチンを中国で独占的に開発、製造、販売する権利を獲得した。

同社は世界のたばこ喫煙の40%前後を占める中国での活動を広げているが、たばこ葉から派生するインフルエンザワクチンの開発や、健康に対する悪影響のより少ないたばこの開発など、単なる煙草の販売以外の活動も行っており、その一環である。

2013/7/19 田辺三菱製薬、カナダ医薬品会社Medicagoを子会社化

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Medicagoは下記の技術を持つ。

 Proficia™  植物の葉でのワクチン製造
 VLP     遺伝子情報を持たないウイルス様粒子(
体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる)
 
VLPExpress™  新ワクチンを早く見つける手法

インフルワクチンの製造は鶏卵を使ってウイルスを培養するのが一般的で、ウイルスが人の体内で働かないよう不活化処理を行うが、6ヶ月ほどかかる。

これに対し、Medicagoの開発したProficia™ はタバコの1種 ベンサミアナタバコ(学名 Nicotiana benthamiana)を使うもので、1ヶ月で製造できる。

Medicagoはいろいろのウイルスのワクチンを開発しているが、新型インフルエンザ H5 について、米国、カナダで安全性や有効性を確かめる第2段階の治験がほぼ終了、年内にも第3相と呼ぶ最終治験に進む。同社はカナダに工場を持っている。

インフルエンザ以外でも、重篤な下痢などを引き起こすロタウイルス(田辺三菱と共同)、狂犬病 (Rabies) ウイルスなどのワクチンも開発している。

同社はタバコのほかに遺伝子組み換えアルファルファも扱っている。
これは大量に生産するのに適しているが、生産に6ヶ月程度かかる。

ワクチンの製造には向かないが、バイオシミラー(バイオ後続品)の生産に向いている。

 

田辺三菱製薬は未来を切り拓く挑戦として「米国事業展開」を掲げており、2020年度までに米国売上高 800億円をめざす中期経営計画を策定したが、インフルワクチンは米国市場開拓の柱となる製品の一つで、年間数百億円の売り上げを見込んでいる。

なお、同社は阪大微生物病研究会と組み国内でインフルワクチンを販売しているが、日本では製造方法や成分など製剤基準が厳格に決められており、Medicagoの手法は遺伝子組み換え技術を使うことなどから、国内では基準改定が必要になり実用化に時間がかかる。

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田辺三菱製薬は2月8日、米国において医薬品販売会社 MT Pharma America, Inc. を設立した。

同社は日本で2015年6月に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の効能追加が承認された「MCI-186」(日本国内での販売名:ラジカット®)について、米国での2016年度の承認・上市をめざして、最優先課題として取り組んでいるが、この販売会社設立により、MCI-186の販売準備を進めていくために必要な機能や要員を計画的に拡充していく。

同社は米国での事業基盤拡充のためにM&Aを含めて、2,000億円以上の投資を計画している。



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