アサヒビールは2月10日、Anheuser-Busch InBev (AB InBev) に対し、AB InBevによるSABMillerの買収実行を条件として、SABMillerのイタリア、オランダ、英国事業その他関連資産を取得するための法的拘束力のある最終提案を行 ったと発表した。
株式売買契約は、対象事業の買収に関連する従業員との協議手続が完了して初めて締結される。
今後両社は、対象事業の買収に関連する従業員との協議手続を開始するが、この協議手続期間中、 アサヒは独占交渉権を得ている。
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ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev (AB InBev)は2015年11月11日、英のSAB Miller を697億8000万英ポンド(約13兆円)で買収することに正式合意したと発表した。
両社の合併については、各国の独禁法当局が問題視するのは必至だが、AB InBev は対策に "best efforts" を約束、承認を得られない場合には30億米ドルのReverse Break-Up Fee(買主からの解約金)を支払うことも約束した。
調査会社Euromonitor によると、世界シェア(2014)はAB InBevが20.8%、SAB Millerが9.7%で合計すると30.5%となる。
以下、3位はHeineken(9.1%)、4位 Carlsberg(6.1%)、5位 華潤雪花(6.0%)、6位 青島ビール(4.7%) と続く。日本のキリンは2.3%、アサヒは1.2%に過ぎない。
米当局から合併の承認を得るため、SAB Millerは保有するMillerCoorsの持株 58%を合弁相手の米 Molson Coors Brewing に120億ドルで売却する。
AB InBev は欧州でも、Corona やStella Artois (ピルスナータイプのビール) を持つため、独禁法で問題になるのを恐れた。
このため、AB InBev は2015年12月17日、SABMillerの欧州のブランド、Grolsch ビールとPeroni ビールを売りに出すことを明らかにし、3ヶ月以内の成約を求めた。
これに対し、多くの企業が意欲を示した。
米国の買収ファンドのKKR、Bain Capital、TPG、欧州のPAI Partners、BC Partners、Cinven、Permira などの名前が挙がった。
ビール会社では、 Heineken は独禁法で問題となる恐れがあり、Carlsberg は資金面で無理だろうとされた。
アサヒビールは独禁法で問題とならない数少ないビール会社とされた。
フィリピンの大手複合企業 San Miguel も買収入札に参加する方針を明らかにした。
今回、アサヒビールが買収を決めた。
株式売買契約は、対象事業の買収に関連する従業員との協議手続が完了して初めて締結される。
概要は下記の通り。
1)買収対象:
SABMillerのイタリア、オランダ、英国の事業を構成する会社の全株式と、3ブランドの知的財産権その他関連資産
ただし、「Peroni」と「Grolsch」は米国・プエルトリコにおけるブランドに係る知的財産権を除く。
買収対象会社 ブランド Birra Peroni S.r.l.(伊) 「Peroni」 150年以上の歴史 Royal Grolsch NV(蘭) 「Grolsch」 400年の歴史 Meantime Brewing (英) 「Meantime」 英国のクラフトビールのパイオニア的ブランド Miller Brands (UK) (英)
2)対価:2,550百万ユーロ(キャッシュフリー・デットフリー企業価値ベース)
3)前提:AB InBevによるSABMiller買収が実行され 、アサヒが対象事業の買主として欧州委員会から承認されること
アサヒビールは、事業の将来像として、「酒類を中核とする総合飲料食品グループとして、国内では、高付加価値化を基軸とするリーディングカンパニーを目指すとともに、日本発の『強み』を活かすグローバルプレイヤーとして独自のポジションを確立する」ことを掲げてい る。
『中期経営方針』の重点課題の一つに、「国内収益基盤の盤石化と国際事業の成長エンジン化による『稼ぐ力』の強化」を掲げ、海外を中心とした新たな成長基盤の獲得を目指してい る。
アサヒは 日本国内ではシェア首位だが、国内偏重が課題である。
2014年12月期の国際事業の売上高はグループ全体の13%で、キリン(37%)やサントリー(36%)と比べると、大きな差がついている。
本件は、こうした戦略の一環であり、 こうしたブランド及び事業の買収により、欧州における成長基盤を拡大するとともに、強力な販売ネットワークの活用により、「強み」である『スーパードライ』のプレゼンス向上などでシナジーを発揮し、「独自のポジションを持つグローバルプレイヤー」として持続的な成長を目指してい くとしている。
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