三井物産と三菱商事、減損損失計上で2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ

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三井物産は3月23日、三菱商事は3月24日、それぞれ2016年3月期の連結最終損益予想を大幅に引き下げた。
両社とも、初の連結赤字決算となる。

損益予想の引き下げ理由は下記の通りだが、減損損失のうちの大口のもの(チリ銅事業と豪州LNG事業)は両社の共同事業である。

三井物産
事業分野 内容 主な理由 当期損益
税引き後 
  億円
金属 チリ銅事業 Anglo American Sur 銅価格見直し等 -900
カセロネス銅事業 -250
ブラジル資源事業 Vale 減損 -350
豪州石炭事業 長期石炭価格 -250
エネルギー 豪州Browse LNG事業の減損 開発計画遅延 -400
その他原油・ガス資産の減損 長期原油・ガス価格 -150
機械・インフラ 海外発電事業の減損 長期電力価格 -300
合計 -2,600

三菱商事
事業分野 内容 主な理由 当期損益
税引き後 
  億円
金属 チリ銅事業 Anglo American Sur 銅価格見直し等  -2,800
豪州鉄鉱石 鉄鉱石価格下落 -300
南ア フェロクロム フェロクロム価格下落 -200
エネルギー 豪州Browse LNG事業の減損 開発計画遅延 -400
上流部門 アジア 原油・ガス価格 -120
  同   北米   -60
  同   北海 廃坑費見直し -70
シェールガス 遊休資産再評価 -30
その他 -120
その他 海外発電事業 、船舶関連ほか -200
減損損失 合計 -4,300
市況下落による持分損益の悪化等 -200
損益見直し 合計 -4,500

註) いずれも税引き後の損益であり、実際の減損損失計上額とは異なる可能性がある。
    (三菱商事のLNGの減損損失計上額は600億円となっている)

(1) チリ銅事業における減損損失

Anglo American Surは、チリ国内にLos Bronces銅鉱山、El Soldado銅鉱山、Chagres銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有する。

同社については、2011年11月に三菱商事が24.5%の出資を発表したが、それまでに、世界最大の銅製錬企業であるCorporación Nacional del Cobre de Chile(コデルコ)と三井物産のJVのAcrux(Inversiones Mineras Acrux SpA)が最大49%の出資を約束していたことで、取り合いとなった。

本件は2012年8月に和解で解決し、次のとおりとなった。(三井物産は2012年11月にAcruxの出資を増加)

2012/8/27 チリ銅鉱山・製錬所運営会社の紛争で和解

両社は今回、昨今の市況及び今後の需給の動向を踏まえ、長期銅価格の見直しを行った結果、減損損失を計上する。

三菱商事は、銅市況の低迷に加え、新規鉱山プロジェクトの開発期間の長期化等を踏まえて総合的に見直したとしている。

同社では、取得時に1ポンド4ドル(8,800$/ton)程度だった銅価格が2ドル(4,400$/ton)程度に下落、 急回復は見込めないとして、中長期の価格見通しを3ドル(6,600$/ton)に引き下げた。

銅市況の推移は下記の通り。

両社の参加時の価格は8000$/tonを超えていたが、最近は4500$程度まで下がっている。

しかし、2005年までを見ると、4000$以下である。2010年頃から2014年頃までが中国の需要増により異常に上昇していたといえる。

三井物産はこれに加え、Minera Lumina Copper Chileのカセロネス銅事業について、足元の操業状況を勘案し、約250億円の減損損失を計上する。

三井物産が25%、Pan Pacific copper (JX日鉱日石金属 66%、三井金属鉱業 34%)が75%出資する。

なお、Pan Pacific copperは、これに隣接するFrontera 地域における銅・金資源の探鉱権益の40%を石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から譲り受けている。

Pan Pacific copper株主のJXホールディングスは800億円、三井金属鉱業は193億円の減損損失を計上している。

2012/9/13 JX日鉱日石金属と三井金属鉱業、チリ・アルゼンチンの銅・金の探鉱権益を取得 



(2) 豪州LNG事業

豪Browse LNGの当初計画は、西豪州沖合で採掘したガスをパイプラインで圧送し、James Price Pointに建設する施設で精製、液化、出荷するものであった。

両社は折半出資する豪Japan Australia LNG (MIMI) Pty Ltdを通じて、2012年4月に参加した。

しかし、計画を主導するWoodside は
2013年4月にJames Price PointでのLNG建設は投資基準に合致しないと判断したと発表した。
Shell社のFloating LNG技術及びWoodsideが有する上流開発における知見を活用した開発を検討中で、
最終投資決断は2016年後半を予定

両社は、開発実行が当面見送ることとなるため、減損損失を計上した。

なお、当初は東西地区で別のJVをつくっていたが、統合することで合意した。

従来出資比率 新出資比率
East JV West JV
Woodside 34% 17% 30.60%
三井物産・三菱商事 16% 8% 14.40%
Shell 25% 35% 27.00%
PetroChina 8.33% 20% 10.67%
BP 16.67% 20% 17.33%
合計 100% 100% 100%


2013/4/16 三菱商事・三井物産出資の豪Browse LNG計画、採算合わず計画見直し

(3) 三井物産のブラジル資源事業会社Valeの損失取込 (約350億円)

三井物産は2003年に、ブラジル資源事業会社Valeの持株会社であるValepar の株式15%を取得し、役員差入れなどを通じてVale社の経営に参画している。

Valeが2015年12月期の第4四半期決算に減損損失を計上したことにより、取込損失約350億円を計上する。

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その他の商社の決算予想は下記の通り。

住友商事

2014/10/1 住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上 

本年1月にマダガスカルのニッケル事業で770億円の減損損失を計上すると発表した。

2016/1/19 住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで約770億円の減損損失を計上

新たにチリの銅開発で140億円、南アの鉄鉱石関連投資で183億円の損失が発生した。1~3月期にも、豪州の鉄鉱石などで追加損失が出る見込みと説明している。

丸紅

丸紅は前期比70.4%増の1800億円とする予想を据え置く。

北海やメキシコ湾での原油開発にからみ減損損失を計上するが、電力や環境インフラなどの増益でカバーする。

伊藤忠

伊藤忠は前期比9.8%増の3300億円という期初予想を据え置いており、このままいけば過去最高益を更新し、業界トップとなる。

生活資材や繊維などが好調で、資本提携した中国最大の国有複合企業CITICグループの利益が寄与する。




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