大津地方裁判所は3月9日、高浜原子力発電所3号機と4号機について、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、運転の停止を命じる仮処分の決定を出した。
滋賀県内の高浜原発から約30~70キロ圏内に居住する住民29人が、地震災害に伴う重大事故が原発で起きた場合、放射性物質で琵琶湖が汚染されて水が飲めなくなり、生命や健康を脅かされるとして、運転の停止を求める仮処分を申し立てていた。
裁判長は、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法、基準となる地震の揺れの策定についても危惧する点がある」、「津波対策や避難計画についても疑問が残り、住民の権利が損なわれるおそれが高いにもかかわらず、安全性について電力会社は十分な説明を尽くしたとは言えない」とした。
住民らは2011年8月にも高浜原発などの再稼働禁止を求める仮処分を申し立てたが、大津地裁が2014年11月、避難計画が未整備な点などを挙げて「原子力規制委が早急に再稼働を容認するとは考えがたい」と却下した。その後、規制委で再稼働に向けた審査が進み、2015年1月に再び仮処分を申し立てた。
3、4号機をめぐっては福井地裁が再稼働前の2015年4月、運転を禁じる仮処分を決定。同12月、別の裁判長がこれを取り消し、住民側が抗告している。
2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定
高浜3、4号機はいずれもプルサーマルで、2015年2月12日に安全審査に合格、3号機は本年1月29日に再稼動した。4号機は2月26日に再稼動したが、直後にトラブルで停止している。
なお、高浜1、2号機は40年超であるが、原子力規制委員会は本年2月24日、事実上の審査合格とした。
今後は老朽化対策に特化した運転延長審査に焦点が移るが、7月7日の期限までに延長審査や、設備の詳細設計をまとめた工事計画の認可など、残りの手続きを終えなければ廃炉になる可能性が高い。
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判決では、以下の記述が注目される。
原子力規制委員会が設置変更許可を与えた事実のみによって、十分な検討をしたとはいえない。
福島第一事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。
その災禍の甚大さに真摯に向き合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講じるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。
この点に意を払わないのであれば、そしてこのような姿勢が、関電ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとすれば、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものといわざるを得ない。
地球温暖化に伴い、地球全体の気象に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、
また、有史以来の人類の記憶や記録にある事項は、人類が生存し得る温暖で平穏なわずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、
災害が起こる度に「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば、
十二分の余裕をもった基準とすることを念頭に置き、
常に、他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、
対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って、
新規制基準を策定すべきものと考える。
避難計画について
福島第一事故を経験した我が国民は、事故発生時に影響の及ぶ範囲の圧倒的な広さとその避難に大きな混乱が生じたことを知悉している。
安全確保対策としてその不安に応えるためにも、地方公共団体個々によるよりは、国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり、
この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか、それ以上に、
過酷事故を経た現時点においては、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいのではなかろうか。
大津地裁は2014年11月に再稼働禁止を求める仮処分申し立てを却下したが、この際の裁判長は今回と同じ裁判長である。却下理由として以下の通り述べている。
「原発事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画等についても現段階においては何ら策定されておらず、これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ないことに照らしても、このような段階にあって、同委員会がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたく、上記特段の事情が存するとはいえない。」
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菅官房長官は3月10日、以下のように述べた。
「世界最高水準の規制基準に適合すると、原子力規制委員会が専門的見地から判断したものであり、政府としてはこの判断を尊重し、再稼働を進めていくことに変わりはない」
「避難計画の作成段階から国が関与し、総理大臣を議長とする原子力防災会議で了承する仕組みであり、国が前面に立って支援はしっかり行っている」
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