子会社の買収を巡る東京国税局の追徴課税を不服として、ヤフーが国に約178億円の課税処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は2月29日、ヤフーの上告を棄却した。課税を適法とした一、二審判決が確定した。
第1小法廷は、合併など企業の組織再編において、税負担を不当に減少させる租税回避に当たる要件について初めて判断し、通常は想定されない方法や、実態とかけ離れた形をつくり出すなど不自然なものかどうか、合理的な理由があるか―という基準を示した。
その上で、ヤフーが行った一連の組織再編は「明らかに不自然で、税制を乱用した」と指摘し、請求を棄却した東京高裁の判断は正当とした。
事態は以下の通り。
当初の状況
IDCソルージョンズ(IDCS)は2007年3月期以後利益を上げるようになったが、繰越損失の繰越期限切れが予想された。
2008年12月26日、ヤフーの代表取締役がIDCSの取締役副社長("非常勤で無報酬")に就任した。
合併による損失引継ぎの条件として、「合併法人と被合併法人との間に支配関係が生じる前から被合併法人の社長、副社長等の経営者クラスの役員となっている者が、合併後の合併法人でも、同じく特定役員として残ると見込まれること」(特定役員引継要件)がある。
なお、ヤフーによるIDCS買収時にはIDCSの他の役員はすべて退任している。
そのわずか2か月後の2009年2月、IDCSが会社分割により営業部門を切り出し、100%子会社のIDCフロンティア(IDCF)を新設した。
IDCSが有していた繰越欠損金の一部はIDCF株式譲渡益によって消滅したが、IDCFにおいて「のれん」(5年間にわたって損金算入可能な資産調整勘定)が計上された。(これにより、繰越損失の繰越期限が延長される)
2009年2月、ソフトバンクがIDCS株式100%をヤフーに約450億円で譲渡した。
その後、2009年3月29日にIDCSがIDCF株式100%をヤフーに譲渡、翌日の3月30日にヤフーがIDCSを吸収合併した。
IDCFの資産調整勘定(5年間の損金算入)を先ずヤフーに移してしまってから、その後にIDCSを合併した。
ヤフーはIDCSの欠損金約540億円を自社の利益と相殺して税務処理しようとしたが、税務当局が認めず約178億円を追徴課税した。
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本件は①ヤフー事件、②IDCF(IDCフロンティア)事件の2つに分かれる。
①ヤフーとIDCSの合併においてIDCSの青色欠損金の引継ぎが認められるか。
直前に IDCS取締役副社長に就任させた行為を含めてヤフーの一連の行為が、IDCSの未処理繰越欠損金額をヤフーの欠損金額とみなして損金算入することを目的とした異常ないし変則的なものであるのかどうか。
②IDCFの会社分割は適格分割かどうか、資産調整勘定が認められるか。
「のれん」(資産調整勘定)を計上し、その損金算入を目的とした異常ないし変則的なものかどうか。
東京地裁は、ヤフー社長のIDCS取締役副社長就任を以下の理由で税法上否認し、その結果、IDCSの繰越欠損金のヤフーへの承継も否認した。
IDCSの取締役副社長に就任してからIDCS買収までの期間が約2か月程度しかなく極めて短いこと
IDCS取締役副社長としてIDCSのデータセンター事業に固有の経営に関与していたと評価することはできないこと
IDCSの経営を担ってきた役員はいずれもヤフーとの合併後に役員に就任しなかったこと
IDCFの分割についても、租税回避行為と認め、国税局による「のれん」の損金否認を認めた。
ここでは、営業部門のみIDCFをさきにヤフーに譲渡する事業上の必要性等が認められなかった。
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