日立化成は3月15日、再生医療等製品の開発を行っているCaladrius Biosciences, Inc.の子会社であり、再生医療用細胞の受託製造の分野で米国最大手の一社であるPCT, LLC, a Caladrius Company へ出資するとともに技術提携契約を締結し、再生医療用細胞等日本国内向けの受託製造事業に参入すると発表した。
日立化成はPCTの株式 19.9% を1,940万ドルで購入する。Caladrius Biosciencesは残り80.1%を保有する。
日立化成は、PCT が行う米国における受託製造事業の経営に参画するほか、PCT から本事業に関する技術およびノウハウの供与を受け(日本を含むアジア地域がテリトリー)、再生医療用細胞等日本国内向けの受託製造事業に2018 年度をめどに参入する。
2030年度に売上高 100億円を目指す。
PCT からの技術およびノウハウの取得に加え、日立グループの技術支援を受け、自動化設備等を備えた生産管理システムを開発することで、高品質・低コストの再生医療用細胞等の受託製造が可能となる。
日立はPCTに一時金として560万円を支払うとともに、事業収入に応じ、サービスフィとロイヤリティを支払う。
日本とアジアにおける事業の投資資金と運営費用は日立が負担する。
日立とPCTは更に、欧州でのJV設立について検討することで合意した。
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再生医療は、けがや病気で損傷した臓器および免疫の機能を回復させるため、細胞を体外で培養するなどして体に移植する治療法であり、がん免疫療法や、体性幹細胞・iPS 細胞等を用いた治療法がある。
近年、特にがん免疫療法、体性幹細胞を用いた治療法の臨床応用例が急増している。
さらに日本での法規制緩和およびiPS 細胞の実用化等により、再生医療の急速な立ち上がりが期待され、周辺産業市場は2025 年頃から急拡大し、2030 年には5 兆円、2050 年には15 兆円の世界市場が見込まれている。
(経済産業省「再生医療の実用化・産業化に関する報告書」2013 年)
日本では、2014 年11 月、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の施行により、細胞培養加工について、医療機関から企業への外部委託が可能となり、さらに「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(略称: 医薬品医療機器等法)」の施行により、再生医療等製品の特性に応じた早期承認が可能となった。
これらにより、国内再生医療市場の急速な拡大が期待されている。
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日立化成は、1981 年から診断薬を中心とした医療関連製品を手掛けている。
扱い製品
・臨床化学自動分析装置:特定健診に必要な血液検査項目がこれ1台で測定可能
・同時多項目アレルゲン特異的IgE 測定試薬:血清を用いてアレルギーの原因となる物質の特異的IgEを測定
・アレルギー性結膜疾患迅速測定試薬
・抗クラミジア トラコマチス IgA、IgG、IgM抗体測定試薬:性感染症の一種であるクラミジア トラコマチス感染症を診断する検査試薬
医薬品医療機器等法の下での医薬品の臨床試験、薬事承認取得および製造販売で蓄積してきたノウハウを生かし、高品質と低コスト化を両立した、がん免疫療法用をはじめとする細胞の自動培養システムの確立および本事業の早期立ち上げを目指す。
さらに、容器や試薬などの消耗材についても取り組む。
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