塩野義製薬、新規インフルエンザ治療薬の開発でRocheと提携 

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塩野義製薬は2月29日、自社創製のインフルエンザ感染症治療薬S-033188の提携に関するライセンス契約をF. Hoffmann-La Roche との間で締結したと発表した。

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塩野義製薬は2015年10月30日の投資家向けの経営説明会で、インフルエンザを1回の投与で治療できる新薬(S-033188)を 2018年にも発売する計画を公表した。

従来のインフルエンザ治療薬とは全く異なる仕組みの薬で、売上高が年間500億円以上の大型薬になるとみられ、抗エイズウイルス(HIV)薬や、複数の薬に耐性ができた菌の治療薬とともに事業の柱に育てる。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐもの。

オセルタミビル(oseltamivir)  Roche 商品名 タミフル
ラニナミビル(Laninamivir) 第一三共 商品名 イナビル
ペラミビル (Peramivir)    米国 BioCryst Pharmaceuticals

発症後48時間以内に服用しなければ効果が得られず、タミフルの場合は5日間程度服用を続ける必要がある。

エボラ出血熱の治療に使われた富士フィルムのファビピラビル(favipiravir)(商品名アビガン)は元々インフルエンザ用治験薬で、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

これに対し、塩野義が開発中の新薬(S-033188)はウイルスが細胞に進入後、最初の反応となるmRNA合成の開始を特異的に阻害するCapエンドヌクレアーゼ阻害剤である。ウイルスの増殖に必要なタンパク質が合成できなくなり、ウイルス粒子が形成されなくなる。
タミフルが5日間の服用が必要なのに対し、
1回の服用で治療できる。

2015/11/6 塩野義製薬、インフルエンザ新薬を開発、1回投与で治療

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日本では、 2015年10月には厚生労働省より先駆け審査制度対象品目に指定され、現在、国内における第Ⅱ相臨床試験の段階にあり、最速で2017年度内の国内申請を予定している。

塩野義製薬は今後、日本と台湾を除く全世界におけるS-033188の開発をRocheとの提携下で進め る。

Rocheは、インフルエンザ治療薬タミフル®のグローバルにおける開発及び販売による豊富な経験と実績、高い専門性をもっており、Rocheと組むことで、欧米をはじめとする世界各地での早期実用化を目指す。

Rocheのタミフルはノイラミニダーゼ阻害剤で、同じ仕組みの薬の登場でシェアは年々低下している。
Rocheは、
タミフルに続く感染症領域の新たな収益の柱として、塩野義の新薬に着目した。

日本では、Roche が61.62%出資する中外製薬がタミフルを販売している。

塩野義は今回の契約で、一時金と、今後の開発進展や承認取得などに応じたマイルストン、製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーをRocheから受け取る。

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