米最高裁、Samsung とApple のデザイン訴訟を審理

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米国連邦最高裁は3月21日、Samsung が同社とAppleとの間で争われている知的財産侵害訴訟の判決を見直すよう求めて上訴した件について、Samsungの上訴を認める決定を下した。
連邦最高裁は10月から9カ月にわたり、口頭弁論を開くとみられる。

連邦最高裁が上訴を認める確率は1%にも満たない。連邦最高裁がデザイン特許事件を審理するのは約120年ぶりとなる。

本件経緯は下記の通り。

2011/4  Apple が提訴
    Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害

2012/8/24 陪審団は、SamsungがAppleの一部特許を侵害したとして、1,050百万ドルのAppleの損害を認定

技術特許 
Bounce back ('381):ページの端をスクロールしたとき跳ね返る機能
Single Scroll, Pinch to Zoom ('915):1本指でスロール、2本指でピンチ、ズーム
Tap to Zoom ('163) :画面タップにより文書を拡大
デザイン特許
iPhone Front (D'677) 、② iPhone Back (D'087)、③iPhone Home Screen (D'305)

2013/3/1

Lucy Koh判事は、陪審員による賠償金額の算定方法に2つの法的な誤りが見つかったとし、1次評決で陪審員団が算定した1,050百万ドルの賠償金のうち43%に当たる450.5 百万ドルを削減する」と判決し、
この部分について、
新たな陪審員団に知的財産侵害の損害を再算出するよう命じた。

その後、削減したうち、Galaxy SII AT&T に関する賠償金 40百万ドルを承認した。

2013/11/21  

削減した分についての算出を担当する新しい陪審員は、Samsungに290 百万ドルの支払いを命じた。
この結果、当初の1,050百万ドルの賠償金は、929百万ドルとなった。 (1,050ー451+40+290)

2015/5/18 米連邦巡回区控訴裁判所、 賠償の一部は無効と判断した。

一般に認識されているiPhoneの特徴的な外観やデザインをSamsung がまねたとする「Trade dress」については、米商標法の保護対象にならないiPhoneの機能的要素に基づくものだと判断、損害賠償額を見直すように、下級審に差し戻した。

Trade dress 分は382百万ドルで、これを除くと548百万ドルとなる。

2015/12/14 Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金支払

2015/12/14 Samsung、米最高裁判所に上告

2015/12/30 iPhone と iPad の特許をめぐるApple、Samsungとの特許係争、続く 


高裁はSamsung が Apple のデザイン特許を侵害しており、特許デザインを使用したSamsungのスマートフォンによる利益の一部を受け取る法的権利がAppleにあると判断したが、Samsung はこれに異議を唱えた。

連邦最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは1800年代までで、その後は扱っていない。

最初の訴訟は1871年のGorham v. Whiteで、Gorham and Co.がスプーンやフォークの取っ手のデザイン("cottage pattern")で特許を取り、評判が良かったが、Whiteが類似品を出した件。


最高裁は、一般人はデザインの違いを認識できないとして、特許侵害と認めた。

1885年のDobson v. Hartford Carpet Co. ではカーペットのデザインが問題となった。


Samsungは申し立てで「スプーンやじゅうたんでは、特許を取得したデザインが本質的な特徴であるかもしれない。しかし、デザインとは全く無関係である顕著な機能性など他に多くの特徴を含むスマートフォンに同じことは当てはまらない」と主張し 、最高裁に対し、「意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか」、また「どのような賠償を請求できるのか」について指針を示すことを求めた。

これに対し、Appleは、この訴訟を「法的に例外的な事例ではない」と述べた上で、Samsung との法的闘争を「長引かせる」ことがないよう最高裁に求めていた。
Appleはまた、この件は米国の最高裁による解決を必要とするほどの重要な案件ではないとも主張した。

Samsung は、「この判例が効力を持った場合に影響を受けかねない大小すべての米国企業のために、米最高裁判所に上訴することが重要であると考えている」と述べている が、多くの企業、団体がSamsung を支持する法廷助言書(amicus curiae)を提出した

Google、Facebook、eBay、Hewlett-Packard、Dell、Vizioなどの各社に加え、スタンフォード大学やジョージタウン大学などの法律専門家、Public Knowledgeや電子フロンティア財団といったNPO、Computer & Communications Industry AssociationやHispanic Leadership Fundなどの権利擁護団体がそれぞれ提出した。

いずれもSamsung の要求を支持するもので、 「最近の判決は一部装飾的な特許を違反したとの理由で (スマートフォンのような)複雑な革新製品の全体を侵害したと見なしており、憲法的価値と合わない」と述べ、最高裁に対して、デザイン特許に関する定義を明確にすることや、この特許の侵害に関する賠償金の額を制限することなどを求めている 。

これはSamsungに好意をもってのことでなく、情報技術業界の利益がかかる問題であるためだと見られている。

最高裁の決定を受け、Samsung は3月21日の声明で、「われわれの上訴を受理した最高裁の決定を歓迎する。最高裁によるこの判決の見直しは、創造的な活動を支え、革新的な成果に報いるという特許法の公正な解釈を導き出す可能性があるものだ」と述べ た。

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