米国連邦巡回控訴裁判所は2月26日、AppleとSamsungが互いに特許違反で訴え、2014年5月2日付で地裁で陪審が両社に賠償金支払を命じた事件に関し、実質的にApple側の勝訴に終わった法廷闘争の結果を覆し、Samsungに対する119.6百万ドルの支払い命令を取り消した。
Samsungの控訴を受けて再審議された結果、「Samsung は主張される特許を侵害してはいない」との判決が正式に下された。
Samsungは損害賠償を払う必要がなくなり、またデザイン変更も不要となる。
Appleは、スマートフォンの画面上をスライドしてロック解除する方法、一連の数字が入力された際に検知して発信する方法、テキストの自動修正に関する特許を侵害したと主張していた。
3人の判事は、そのうち最初の2件の特許は"invalid" と裁定し、3つ目についてはSamsungは侵害していないとした。
2件の特許は、同じような技術が既に出回っていたため、"obvious"であるとした。
Appleの特許のうち、陪審が特許侵害はなかったと認定した2つについては、同様の判断を行った。
逆に、Samsungの動画圧縮特許を侵害したとしてAppleが支払うべき賠償金は158.4千ドルとする陪審判断を支持した。
Appleはコメントしていないが、仮に最高裁に上告しても、取り上げられないだろうと見られている。
また、巡回控訴審2015年9月17日、Appleの販売差し止め命令を判事が却下した一審判決を破棄し、連邦裁判所に再審理を求めて差し戻したが、侵害がないことが確定すると販売差し止めは当然、あり得ない。
今回のケースは両社が争う2つのケースの一つである。
今回のケース | もう一つのケース | ||
発端 | 時期 | 2014年3月 | 2011年4月 |
原告 | Apple & Samsung | Apple | |
内容 | Appleは別の5つの特許侵害で、 Samsungは自社の2つの特許侵害で、相互を訴え |
Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害 | |
判決 | 2014年5月2日 連邦地裁の陪審 Samsungに119.6百万ドルの賠償金支払命令 (Appleの22億ドルの請求に対し) Appleに158.4千ドルの賠償金支払命令 (Samsungによる620万ドルの請求に対し) |
2015/5/18 連邦控訴裁判所の判決 ↓ 2015/12/14 Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金支払 |
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2015年末の 状況 |
Samsung 控訴 Appleの販売差し止め命令を判事は2014年8月、却下 |
Samsung 2015/12/14、米最高裁判所に上告 | |
Apple 2015/12/23、付随的賠償および利子請求訴訟 | |||
最新ブログ | 2016/1/23 Samsung 製品に特許侵害で販売差し止め命令 |
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今回判決 | Samsungに119.6百万ドルの賠償金支払命令 取り消し Appleに158.4千ドルの賠償金支払命令 支持 |
もう一つのケースでは、Samsungは連邦控訴裁判所の判決に基づき548百万ドルの損害賠償金をとりあえずApple に支払ってはいるが、同時に最高裁に上告している。
最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは1800年代までで、 その後は扱っていない。
(その当時の訴訟は、スプーンの取っ手、カーペット、鞍、ラグなどに関するものだった。)
Samsungは最高裁に対し、意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか、またどのような賠償を請求できるのかについて指針を示すことを求めており、最高裁が上訴を受理した場合、最高裁の最終判断がハイテク業界や消費者の購入できるすべてのガジェット類に波及的な影響を及ぼす可能性がある。
Samsungは、「この判例が効力を持った場合に影響を受けかねない大小すべての米国企業のために、米最高裁判所に上訴することが重要であると考えている」と述べている。
Appleは2016年2月4日、これに関する回答書を提出した。
Appleは、この訴訟が「法的に例外的な事例ではない」と主張し、法廷闘争を「長引かせる」ことがないよう最高裁に求めた。
さらに、この件には米国の最高裁による解決を必要とするほどの重要な案件ではないとも述べている。
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