米司法省、油田サービス会社2位のHalliburton による 同業3位のBaker Hughes 買収 を認めず 

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米司法省の反トラスト局は4月6日、米油田サービス会社2位のHalliburton による 同業3位のBaker Hughes 買収 は競争を脅かす恐れがあるとして、Halliburtonを提訴した。 米司法省は1年半近くにわたって競争上の問題がないかを審査してきた。

司法省は、買収は石油探査で使用する23種類の製品・サービスにおいて直接的な競争を失う恐れがあると主張した。
洋上掘削仕上げや油井を強固にする工程などで両社を合わせた市場シェアは5割を超え、首位の
米のSchlumberger を加えると、占有率は99%に達するという。
Halliburtonが対策として提案している事業売却案は不十分であると看做した。

司法長官は「計画されているHalliburton とBaker Hughes の合併は必要不可欠な競争を消滅させ、エネルギー市場をゆがめ、米国の消費者に損害をもたらすだろう」と述べた。

これに対し、Halliburton とBakr Hughes は強く抗議すると発表した。司法省の結論は取引の評価を誤ったものであり、エネルギー産業が直面する問題のもとで反生産的行動であるとしている。

両社の統合は競争を促進するものであり、今よりも柔軟で、イノベーティブで、効率のよい油田サービス会社となり、需要家は高品質で、もっと効率のよい製品・サービスの供給を受け、コストダウンを得られるとしている。

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Halliburton Co は2014年11月17日、Baker Hughes を現金と株式で買収すると発表した。買収総額は346億ドルに上る。

当初、Halliburtonは10月13日に提案したが、協議が難航し、敵対的買収に向けた動きも浮上したが、一転、合意した。

原油安を受けて世界的に石油開発のピッチが鈍化する可能性が出てきており、互いの重複部門を整理するなどしてコスト競争力を高める。年間20億ドルのコストダウンを目指す。

2013年の売り上げ規模は単純合計で518億ドルとなり、1位の米のSchlumberger の453億ドルを上回り業界トップの専業企業となる見通しだが、2社の事業では、少なくとも7つの主要製品ラインが重複している。

独禁法上で問題となるのは確実なため、Halliburton はこれを避けるため、75億ドル相当の事業の売却を行うとした。(但し、当局はこれを大きく下回る事業の売却を求めると想定した。)

Halliburton は、 独禁法をクリアできない場合、Baker Hughes に35億ドルを支払う用意があると表明した。

2015年3月末に両社の株主総会は本件を承認した。

Halliburton は2015年4月7日、ドリルビット掘削(Fixed Cutter and Roller Cone Drill Bits)事業、傾斜掘削(Directional Drilling)事業, 同時測定・掘削工法(Logging-While-Drilling /Measurement-While-Drilling) 事業の3つを個別に売却すると発表した。売却契約の正式成立は、規制当局からBaker Hughesの買収の承認を得た後になるとした。

GE Oil & Gasがこれに 大きな関心を示し、交渉を行ってきたと報じられたが、現時点ではまとまっていない。

米国でもEUでも公取当局の審査は難航した。

両社は米国のシェールオイルからブラジル沖の深海まで、多くの同じ地域で掘削を行っている。両社の事業所は北米、欧州、中国、中東からラテンアメリカまで重複している。

各当局は油田開発・サービスの2位と3位の合併による独禁法上の影響について懸念し、次々と資料を要求した。
対策として
Halliburtonが行う事業売却が、合併で失われる競争を補うことになるのかどうかも疑問視された。

欧州委は2016年1月、合併が「深刻な競争上の懸念」を引き起こす可能性があるとして、本格調査を開始した。

欧州委は、業界の上位4社のうち1社がこの買収で消滅することになると懸念している。(4位は米のWeatherford International)

「EU域内で競争上の選択肢を減らしたり、石油・ガス開発・生産サービスの価格を押し上げたりしない」ようにするため、同合併計画を「注意深く調べる」必要があると述べた。

両社は2015年12月15日、司法省の懸念事項に対応するため、合併の完了時期を2016年4月30日に延期すると発表した。

Halliburtonは2016年1月、米司法省に新しい計画を提出したと説明したが、売却を計画する資産の内容は明らかにしていない。

両社は、Halliburton案は司法省の競争面での懸念を解決するには十分すぎるものだとしているが、司法省の今回のHalliburton提訴は、Halliburton案が十分納得できる案でないことを示している。

両社は今後、司法省が、油田サービス事業の競争性が高いこと、統合計画の多くのメリット、事業売却案が十分なことを過小評価していることを示していきたいとしている。

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油田サービス業界で2位のHalliburton と3位のBaker Hughes の合併が難航する一方で、1位のSchlumberger は掘削機材メーカーのCameron International の買収に成功している。

Schlumberger は2015年8月26日、掘削機材メーカーのCameron International を約127億4000万ドルで買収すると発表した。

Cameron株主は1株につき現金14.44ドルとSchlumbergerの0.716株を受け取り、統合後の会社の約10%を握ることとなる。

2015/9/1 油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger、Cameron International を買収

こちらについては独禁法上で問題とされず、Schlumbergerは本年4月1日にCameron買収を完了したと発表し た。

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HalliburtonとCameronはともに、2010年4月20日に発生した海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig の爆発事故に関与している。 

Deepwater Horizon rig 関連

  ・設計:R&B Falcon
  ・建設:韓国の現代重工業
  ・所有:Transocean(R&B Falconを買収)
  ・リース:BP Exploration and Production

  ・コントラクター 
    Transocean:掘削作業
    Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
     M-I SWACO(SchlumbergerとSmith InternationalのJV):Drilling Fluid (mud)サービス

  ・Blow Out Preventor の製造:Cameron International

  2010/6/17 メキシコ湾石油流出事故の損害負担 


Halliburton:

2014年9月、同社に対する一般及び漁業者からの損害賠償の訴訟で、11億ドルの支払で合意した。

BPはHalliburtonに対し、不適切かつ不注意に作業を行い、これが爆発の原因になったとして、民事訴訟を行ったが、2015年5月21日、和解した。

Clean Water Actによる罰金は、BPは55億ドル、Transoceanは10億ドルとなったが、Halliburtonについては、政府から訴えられていない。

Cameron:

2011年12月16日、BPに250百万ドルを支払うことで和解した。

刑事面では機器の欠陥を理由にいくつかの罪を問われたが、全てのクレイムで免責となった。

事故に伴い油井に関する新しい規則が出て石油会社が機器を更新したため、同社は恩典を受けている。

 

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