Pfizer は4月6日、Allerganとの合併を両社の合意で中止すると発表した。

米財務省が4月4日、税率の低い国へ本社を移転する税逃れ行為「インバージョン」をめぐり追加措置を発表したが、これが合併契約書に規定している「不利な税制変更」に該当すると看做した。

Pfizer はAllergan に対し、取引に関する費用の補償として150 百万ドルを支払う。

PfizerはAllergan買収を通じて本社を税率の低いアイルランドに移す考えだったが、米国の新たな税制では本社移転による恩恵がなくなる。

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Pfizerとアイルランドに拠点を置く同業のAllerganの両取締役会は2015年11月23日、満場一致で両社の合併を承認した。

株式交換方式で合併する。実質的に、Pfizerによる1600億ドルでのAllergan 買収となる。

形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業は Allergan plc に統合され、アイルランド法での企業となるが、社名を"Pfizer plc" に改称し、New York Stock Exchangeに上場する。
実務上の本拠はNew Yorkに置く。

この買収は過去最大の"inversion"(納税拠点の低税率国への移転)」となる。

米国は連邦法人税率が35%だが、アイルランドは12.5%と低く、形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業 を Allergan plc に統合し、アイルランド法での企業となることで、年間で約20億ドルの節税効果があると言われている。

2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収 

Tax Haven や低税率の国を利用して法人税を回避する動きについては、各国で問題になっていた。

2013年6月に北アイルランドで開かれたG8サミットは、首脳宣言に多国籍企業の税逃れを防ぐための国際協調などを盛り込んだ。
経済協力開発機構(OECD)と連携し、「多国籍企業がどこで利益を生み、税を払っているか」を把握する仕組み作りを進めることで合意した。


米財務省は2014年9月22日、節税のための本社移転の抑制を狙った新規則を発表した。

税率の低い国へ本社を移転する "
inversions" と呼ばれる行為について税制上の恩恵を減らすとともに、新たな本社移転をこれまでよりも困難にするもの。
新規則は即日適用された。

新規制の概要は以下の通り。

1)"hopscotch" loans (石蹴りローン)の禁止

2) "De-controlling" 戦略の禁止

3)抜け道の禁止

4)規定の厳格化による"inversions"の禁止

2004年の改正税法では、海外企業との合併による海外への本社移転を認めているが、その条件として、元の米国企業の株主が新しい海外親会社の80%未満を所有するということになっている。(80%以上の場合は米国の税法を適用する。)

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる  

PfizerはAllergan買収に当たり、Pfizerの株主は誕生する合併企業の株式56%を保有する ため、この新規制をクリアする予定であった。