住友金属鉱山と三井物産、ニューカレドニアのニッケル事業から撤退 

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住友金属鉱山は3月29日、ニューカレドニアのGoro Nickel Cobalt Project を進めているVale Nouvelle Calédonie S.A.Sの全株式をVale Canada Limitedに譲渡する売買契約を締結した。譲渡金額は約80億円。
共同で出資する三井物産も同様に売却した。

住友金属鉱山と三井物産は、SUMIC Nickel Netherlands(住友 52.38%、三井 47.62%)を設立して2005年よりGoro Nickel Cobalt Projectに参加しているが、2015年12月末までに商業生産目標を達成できない場合には、株式をVale Canadaに売却することとしており、商業生産条件を達成することができなかったため、撤退する。

住友金属鉱山は長期ビジョンの中で、ニッケル生産量15万トン/年をターゲットに掲げている。既存プロジェクトの拡張や新規プロジェクトの戦力化等により、ターゲットの達成に向けて引き続き取り組むとしている。

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Goro Nickel Cobalt Project はカナダのInco Ltd が主体となって開発計画を推進してきたニッケル開発事業で、フランス領ニューカレドニア島の南端に位置するGoro地区、Prony地区にある大規模ニッケル酸化鉱床を対象に、高圧酸浸出法(High Pressure Acid Leach=HPAL法)によるニッケル製錬法で、酸化ニッケルおよび炭酸コバルトの生産を計画している。

ニッケル資源量については世界最大規模のものが期待されており、プラント建設工事が完了する2007年秋以降、年間約4百万トンの鉱石採掘・処理を行い、酸化ニッケル約60千トン/年(ニッケル地金換算)および炭酸コバルト約4~5千トン/年(コバルト地金換算)を生産する計画であった。

住友金属鉱山と三井物産は2005年4月8日、Goro Nickel Cobalt Project (当時の総事業費約18.78億ドル)への参画について本契約を締結した。

このプロジェクトへの出資を目的として、オランダに新会社「Sumic Nickel Netherlands b.v.」(住友52.38%、三井47.62%)を設立し、これを通じて運営主体であるGoro Nickel SA に21%出資した。

このプロジェクトへの参加により、住友および三井は、出資比率相当分のニッケルおよびコバルト製品を引き取る権利を保有し、今後発生するプロジェクト開発費もこの比率で負担する。

その後、試運転段階での設備トラブルもあり、本格的な生産開始が遅れ、補修・改良工事の費用が多額に及んだことから、2012年10月に、総事業費46億ドルを超える費用負担のための追加出資に応じないこととし、これにより出資比率は14.5%に低下した。
(プロジェクトへの参加比率は、住友が7.6%、三井が6.9%となる。)

全体の出資の推移は下記の通り。

当初 2005/4 2012/10
Goro Nickel SA 90% 74% 80.5%
Suminic Nickel 21% 14.5%
SPMSC 10% 5% 5.0%
合計 100% 100% 100%

SPMSC (Société de Participation Minière du Sud Calédonien)はニューカレドニア政府の権益で、ニューカレドニア南部州が 50%、北部州が 25%、島嶼州が 25%出資する。

計画主体のカナダのInco Ltd の前身はカナダのSudbury地域でニッケル生産を行う米国企業 International Nickel Companyで、他企業の買収などを通してニッケル・銅・PGM(白金族金属)の生産シェアを拡大し、1961年には米国・マニトバ州のThompson鉱山のフル生産を開始し、ロシアのNorilsk Nickel に次いで世界第2位のニッケル生産企業となった。

1960年代後半にはインドネシアでのニッケル事業に参入し、PT International Nickel Indonesia(PT Inco)を設立。1970年代後半にはニッケル生産を開始し、カナダ以外での主力となった。

1988年にPT Incoの権益20.09%を住友金属鉱山に売却した。(Inco 59.28%、その他 20.63%)

1992年にはニューカレドニアのGoro鉱床の鉱業権を取得した。

2005年にニッケル生産シェアのさらなる拡大を目指し、カナダのニッケル生産大手Falconbridgeに買収を仕掛けたが、交渉が難航している間に複数の他企業から買収提案を受け、2006年にブラジルのValeに買収された。

2007年にはValeの100%子会社となり、社名をVale Incoに改称した。Valeが従来より所有していたブラジルのニッケルプロジェクトも管理下に置く。
ニューカレドニアの運営主体であるGoro Nickel SA もVale Nouvelle Calédonie S.A.Sに改称した。
インドネシアのPT IncoはPT Vale Indonesia となっている。

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住友金属鉱山のニッケル事業については下記参照

2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

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