日本政府、反ダンピング課税申請要件を緩和

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政府は4月5日の閣議で関税定率法の政令改正を決めた。5月にも実施する。

反ダンピング課税の申請が出来るのは、一定条件を満たす生産者とその団体であるが、団体についての要件を変更する。

この改正により、団体による申請がし易くなるとしている。

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反ダンピング課税は、関税定率法の第八条で規定されているが、その第四項では、次のとおりとなっている。

本邦の産業に利害関係を有する者は、ーーー 当該貨物に対し不当廉売関税を課することを求めることができる。

不当廉売関税に関する政令の第五条では、「利害関係を有する者」を以下の通りとしている。

1) 生産企業で、生産高が日本の総生産高の1/4 以上

2) 生産企業の団体で、メンバーの過半数がその製品を生産、生産高合計が日本の総生産高の1/4以上



1) の場合は、生産高が日本の総生産高の1/4 以上という条件を満たすよう、企業が集まる必要がある。

これまで、TDIと電解二酸化マンガンは実質1社で申請できたが、カットシート の場合は8社、ポリエステル短繊維の場合は5社が集まる必要があった。

2) の場合、例えば石油化学工業協会や日本化学工業協会の場合、対象製品を「構成員の過半数」が生産しているケースは少なく、協会として「利害関係を有する者」になれるケースは少なかった。

経済産業省によると、申請段階でこうした厳しい条件を設けている国はないという。

今回の改正により、ハードルを海外並みに下げ、被害を受ける企業が業界団体の一部にとどまる場合でも、業界団体として申請ができるようになる。

政府は、反ダンピング措置をできるだけ取らずにきた従来の方針を転換し、中国などから安い製品の輸出攻勢を受ける鉄鋼や化学業界に活発な利用を促す。

申請手続きの面でも、日本の場合は複雑であった。

このため経済産業省は昨秋、必要な申請書類をこれまでの4分の1に減らすほか、書類の記入例を明示して企業や業界団体が申請しやすくした。
申請に必要な費用を約10分の1に軽減するほか、審査期間も従来の14カ月間から10カ月間に短縮した。

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政府は4月5日、韓国と中国原産の水酸化カリウムに対して暫定的な不当廉売関税を賦課する政令を閣議決定した。

2015年4月にカリ電解工業会から申請を受け、5月から調査を実施してきた。この結果、本年3月5日に日本産業への実質的損害等の事実を推定する仮決定を行った。
4月9日から8月8日までの間、暫定的な不当廉売関税が課せられる。

しかし、これを含めても、1993年以降で反ダンピング調査を行ったのは7件で、うち1件はシロとなっている。

製品 対象国 申請者 調査開始 仮決定 最終決定 税率 終了
水酸化カリウム 韓国
中国
カリ電解工業会 2015/5/26 2016/4/5 仮 韓国 49.5%
  中国 73.7%
TDI 中国 三井化学 2014/2/14 2014/12/25 2015/4/25 69.4% 2020/4/24
カットシート インドネシア 製紙 8社 2012/6/29 2013/6/26 賦課せず
電解二酸化マンガン
スペイン
中国
南ア
東ソー
東ソー日向
2007/4/27 2008/6/14 2008/9/1

豪    29.3%
スペイン  14.0%
中国1社  34.3%
  他 46.5%
南ア  14.5%


2013/8/31

スペイン
中国
南ア
2012/10/30 2014/3/5

2019/3/4

ポリエステル短繊維 韓国
台湾
合繊5社 2001/4/23 2002/7/26 韓国1社 6.0%
 4社  ゼロ
 他  13.5%
台湾  10.3%
2006/8/31 2007/6/29 2012/6/28
綿糸20番手等 パキスタン 日本紡績協会 1994/2/18 1995/8/4 9社  2.1~7.9%
8社  ゼロ
他   9.9%
1999/7/31
フェロシリコマンガン 中国 日本フェロアロイ協会 1991/11/29 1993/2/3 5社 4.4~19.1%
他  27.2%
新規事業者 8.9%
2社 価格約束 
1998/1/31


これに対し、中国は1997年12月10日の第一号の新聞用紙の調査開始以降、91件90品目の調査を行っ ている。

結果は下記の通り。

ダンピング税を徴収  73
  同上のうち、国務院決定で取り消し ( 1
損害なし裁定で調査取り止め   4
提訴取り下げで調査取り止め   8
ダンピング率が2%未満で調査終了   1
調査中:暫定反ダンピング措置   3
調査開始   2
計(ビスフェノールA、提訴取り下げ後、再審)  91

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