スイスの高級時計「FRANCK MULLER」のパロディー商品「フランク三浦」を商標登録した大阪市の会社が、この商標を無効とした特許庁の判断を取り消すよう求めた訴訟の判決が4月12日、知財高裁であった。
判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/835/085835_hanrei.pdf
「フランク三浦」の権利者は、株式会社ディンクスで、2012年3月に商標出願 を行い、2013年8月に商標登録がなされた。(商標5517482)
これに対し、FRANCK MULLERが2015年4月に商標無効審判請求を行い、特許庁は2015年9月に無効審決を行った。
ディンクスは2015年10月、知財高裁に無効の取り消しを提訴したもの。
裁判でMULLER側は、「語感が極めて似ている」「信用や顧客吸引力への『ただ乗り』目的だ」などと主張した。
鶴岡裁判長は「イメージや外見が大きく違う。呼称は似ているが、外観で明確に区別できる」と指摘。「多くが100万円を超える高級腕時計と、4千~6千円程度の低価格商品の『三浦』を混同するとは到底考えられない」として、「三浦」側の勝訴とする判決を言い渡した。
判決の結果、「フランク三浦」の商標は有効となった。
両社の販売する時計は全くそっくりである。
しかし、今回の問題は「商標」であり、商品そのものよりも、「商標」が類似したり混同するかどうかで判断される。
商標 商標番号 分類 登録年
2701710 時計 1994 4978655
(浦の字の上の「 、」がない)5517482 時計 2013/8
特許庁の審決は次のとおりであった。
呼称は似ている。
パロディであっても「ただ乗り」であることは間違いない。
パロディとして認識し、模した商品を製造・販売しているから、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的で使用するものと認められる。商標4条1項19号
「全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するもの」で、「不正の目的をもって使用をするもの」は無効となる。
しかし、知財高裁の判断は以下の通り。
呼称は似ているが、商品の出所に誤認混同が起こらない。
・前者は英語かカタカナ(標準文字)、後者はカタカナと漢字(手書き風の字体)で、外観で明確に区別できる。
・「三浦」で日本、日本人の観念が生じるが、前者では生じない。前者が100万円程度、後者が4000円~6000円の商品(「とことんチープにいくのがコンセプト」としている)で、指向性をまったく異にする。需要家が混同するとは考えられない。
商標を模倣する意図があっても、直ちに商標の類否判断に影響しない。
商標そのものが類似するとはいえないから、不正の目的かどうかに関係なく、商標4条1項19号に該当しない。
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今回は商標法の問題であるが、不正競争防止法違反(他人の商品と混同を生じさせる行為)で製造販売を差止められる可能性はある。
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