Samsung とLG、九州の有機ELベンチャーに出資

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九州大学の研究成果を活用したベンチャーで、「究極の有機EL発光材料」を開発する ㈱ Kyulux は4月6日、総額15億円の出資を得て本格稼働したと発表した。

㈱ Kyulux は九州大学の安達千波矢主幹教授が内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)で開発に成功した第三世代有機EL発光材料(TADF材料)の実用化を担うスタートアップ企業で、2015年3月9日に設立された。

増資にあわせ、実用化に伴う技術の特許に関して権利者である九州大学らと実施許諾等を締結、本技術を世界中で実用化できる体制を構築した。
(2015年4月に基本特許の実施許諾契約を締結しているが、今般、基本特許以外の特許についても、契約を締結した。)

2018年に予定している製品化に向けた活動の加速が期待される。

今回出資に応じたのは、次の各社:
 Samsung Display
 LG Display

 ジャパンディスプレイ(ソニー、東芝、日立の中小型液晶ディスプレイ事業を統合)
 JOLED (ソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合)

 
他に
 産学連携機構九州(九大TLO)
 出資型新事業創出支援プログラム
 ベンチャーキャピタル(西日本シティ銀行等が出資するQBキャピタル、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル、
               SMBCベンチャーキャピタルなど)               

  九州大学は特許に関する契約の対価として株式を取得し、資本参加する。

韓国紙は、長年のライバルである両社が「共通の敵」である中国の台頭に危機感を覚えての「呉越同舟」だとしている。
金額は公表されていないが、両社がそれぞれ3億-4億円ほど出資したとみられる。

韓国が主導するテレビ用大型液晶パネル分野では中国メーカーの攻勢にさらされており、両社はこれに対し、有機ELパネルで対抗する考えだが、有機ELパネルは製造コストが高いのが難点となっている。

Kyuluxは、レアメタルのイリジウムを使わず、有機ELの製造コストを下げる技術を開発しており、Samsung Display とLG Displayは今後、Kyuluxの技術を使用して有機ELの性能向上に取り組む。

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安達教授は2012年12月に第三世代の有機EL発光材料であるTADF(熱活性化遅延蛍光)材料の開発に成功した。

TADFは、第1世代の発光材料である蛍光材料と同等の低コスト(レアメタル不使用)と、第2世代のリン光材料と同等の発光効率を同時に達成する画期的な第3世代の発光材料で、100%の内部量子効率を達成した。

同じく九州大学で発明されたHyperfluorescence はTADFと第1世代の発光材料である蛍光材料を組み合わせることで、高効率発光、低コストに加え高純度な発光色を実現した。

TADFとHyperfluorescence の組み合わせで、高効率、低コストのみならず、高純度の発色と高強度のEL発光を実現できる。その結果、日中屋外でも視認性の良い鮮やかな映像を楽しむことができ、モバイルディスプレイの性能向上だけでなく、屋外での新しい用途の開発につながる。
また、省エネ効果が上がり、携帯機器の長時間使用を可能にする。

有機ELの発光材料は、発光の原理的な違いによって蛍光材料とリン光材料に分けられる。

蛍光材料は、励起子が「一重項状態」というスピンの状態を経由する場合にだけ発光する。
リン光材料は、一重項状態に加えて、三重項状態というスピン状態からでも発光する。 レアメタルを使用する。

一重項状態と三重項状態は1:3 の割合で発生するため、蛍光材料の内部量子効率は最大で25%、リン光材料は同100%と考えられていた。

TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence) は励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動を熱活性化によって生じさせ、蛍光発光に至る現象を示す。
三重項経由で発光が生じるために一般に寿命の長い発光が生じることから遅延蛍光と呼ばれる。

電子を光へほぼ100%の効率で変換でき、低コスト・高効率発光を可能とし、また、無限の分子設計の自由度を最大限生かせる夢の発光材料の創出と位置付けることができる。
また、蛍光分子からのEL発光効率を究極の100%まで向上させることに成功した。

一重項と三重項の励起エネルギー差(ΔEst)の極めて小さな分子設計によって三重項励起子を一重項励起状態にアップコンバージョンさせる。
有機ELデバイスの発光層の大部分を占めるホスト材料にTADFと蛍光材料を分散させ、励起エネルギーの生成をTADFが行い、そのエネルギーを蛍光材料に遷移させ、発光させることで、これまでの蛍光材料に比べ4倍の発光効率を実現した。

これまでは内部量子効率が高い材料は、イリジウムなどのレアメタルを利用するリン光材料に限られていたが、新材料ではレアメタルは利用しない。

高効率、低コスト、高純度発光色の全てを実願する究極の発光メカニズムである。

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