東芝は2008年3月26日、米総合発電事業会社のNRG Energy が米テキサス州で推進する原発の建設計画 South Texas Project で、原子力発電プラント2基の主契約者に選定されたと発表した。

東芝はまた、NRGが設立した South Texas Projectの事業開発会社 (Nuclear Innovation North America) に3億ドル、12%分を出資することも併せて発表した。

NRG Energyはテキサス州 Houston 郊外で South Texas Projectを共同で推進しており、東芝が受注したのは、3号機と4号機。
具体的には、改良沸騰水型(ABWR)の原子炉2基や蒸気タービンなど主要機器の納入や建設、エンジニアリング業務を受注した。
事業費は8,000億円規模とみられ た。
2012年ごろに着工し、2015年から16年の運転開始を目指した。 

Reactor type Capacity Commercial operation
South Texas-1 Westinghouse 4-loop 1280 MW 1988/8/25
South Texas-2 Westinghouse 4-loop 1280 MW 1989/6/19
South Texas-3 ABWR 1350 MW
South Texas-4 ABWR 1350 MW

東芝は2010年11月29日、米国大手エンジニアリング会社 The Shaw Group Inc.との間で、今後東芝が海外で受注するABWR型発電所の建設関連作業について協力する契約を締結した。

Shaw は東芝との協力関係に対して 2.5億ドルを投資する。
まず1億ドルを Nuclear Innovation North America 経由でSouth Texas Projectに融資する。

Shaw はSouth Texas Project で主に建設工事を担当する。
Shaw は子会社に原子力の建設と統合的なサービスを担う Stone & Webster を持つ。

東芝とShaw Group はともにWestinghouse Electric の株式を保有し、Westinghouse の最新鋭原発 AP1000 の建設でも協力関係にある。

元々の Westinghouse Electric は 1995年に放送会社 CBC を買収、その後、防衛産業部門をNorthrop Grummanに、原子力以外の発電事業をSiemens になど、次々に売却し、1997年に CBC Corporation に改称した。


最後まで残っていた商業用原子力部門を1998年に英国核燃料会社(BNFL) に売却した。
これが現在のWestinghouse Electric である。

CBCは1999年に Viacom, Inc. に吸収合併された。

2005年7月、英国核燃料会社はWestinghouse Electricの売却を計画、各社が関心を示したが、2006年10月16日に54億ドルで東芝が購入した。東芝は77%を保有し、Shaw Group が20%、IHIが3%を保有することとなった。

2007年8月に東芝は株式の10%をカザフスタンの国営ウラン採掘企業 Kazatompromに売却した。

South Texas Project については2012年ごろの着工、2015年から16年の運転開始を目指した が、2011年3月の福島原発事故で状況が急変した。

福島原発事故を受け、米原子力規制委員会(NRC)は稼働中の全原発について安全性確認の実施を決定、新規原発の認可も棚上げとなった。

このため、South Texas Project の主体のNRG Energyは、新規原発建設の認可獲得に時間とコストがかかることを懸念し、2011年4月に追加の投資中止を決定した。

米国では外資100%出資の原発建設には制限があるため、東芝はNRG Energy に代わるパートナーが必要だが、見つけられていない。

立地のテキサス州は天然ガスが採掘できるため、原発のコスト優位性が低下しているのも一因である。

参考 

2012/7/31  原子力発電の正当化困難にーGE会長
2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ
2012/10/26 米の発電会社、不採算を理由に原発を閉鎖
2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定

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東芝とShaw Group との関係も変化した。 

2012年7月に米国大手エンジニアリング会社のCB&I が Shaw Group を買収することで合意、2013年2月に買収した。

東芝は 2012年10月10日、Westinghouseの株式 20%を Shaw Groupから取得すると発表した。Shawが当初の株式取得時のオプションを行使するもの。

これにより持株比率は87%に高まるが、東芝は50%超を保持して残りを売却するとしている。

Shaw との関係では、受注済みの案件については予定通り工事完成に向けて取り組むことで合意した。
今後は案件ごとに最適なパートナーを選定する方針。

Westinghouse は2015年12月31日、Shaw Group子会社で原子力の建設と統合的なサービスを担う Stone & Webster をCB&I から229百万ドルで買収した。

Shaw Group を買収したCB&I が原子力関係事業からの撤退を決めたもので、Westinghouse とStone & Webster は米国で建設中のボーグル発電所とV.Cサマー発電所向けにAP1000原子力発電所の設計、エンジニアリング、調達及びサポートを提供しており、買収により米国プロジェクト全体の一元管理・遂行が行える推進体制を構築する。

CB&Iが原子力関係事業からの撤退を決めたことから、CB&I からのSouth Texas Project への融資が見込めなくなったこともあり、 今回、CB&I と締結していたSouth Texas Project におけるEPC契約および改良型沸騰水型原子炉(ABWR) 原子力発電所の海外建設協力等の一連の契約について、契約解除をすることを合意したもの。

CB&Iとは火力事業を中心に引き続き重要なパートナーとして、今後も協力関係を維持していくとしている。

上記をまとめると次のとおりとなる。

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South Texas Projectの事業開発会社 Nuclear Innovation North America は2016年2月9日、米国原子力規制委員会(NRC)から、South Texas Project 3・4号機建設の建設運転一括許可(COL)の承認を受けた。ABWRとしてCOLが承認されたのは今回が初めて 。

新型加圧水型原子炉「AP1000」では、Vogtle原子力発電所3・4号機向け、Virgil C. Summer 発電所2・3号機向けにCOLが発給されている。

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

現在電力価格が低迷していることから、今後電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始の判断をすべく、協議するとしている。

しかし、原発の優位性はなくなっており、パートナーがすぐに出てくる可能性は少ない。

東芝はNuclear Innovation North America について、2013年度で310億円、2014年度で410億円の減損損失を計上している。

2016年3月決算では、Westinghouse のノレン代減損損失 2600億円を計上した。

2015/12/8 東芝の原子力事業 の付記参照