武田薬品工業がカナダの製薬大手、Valeant Pharmaceuticalsに買収を提案し、拒否されていたことがわかった。
Valeant はこれまで、成長の大部分を買収や、買収で手に入れた割安な医薬品の値上げに依存していた。
同社は米国での医薬品値上げで監督当局や政治家から監視の対象となり、数カ月にわたって混乱に見舞われている。
3月15日の米国の株式市場で、Valeantの株価が51%下落した。
業績見通しを下方修正したことや、2015年第4四半期決算が予想を下回ったこと、4月の期限までに年次報告書を提出しなかった場合はデフォルトに陥る恐れがあると明らかにしたことなどが理由。
Valeant は再建対策の一つとしてコアでない資産の売却も検討しており、問い合わせもあるという。
Wall Street Journal (5月26日付)によると、1、2ヶ月前に武田薬品と投資会社TPGから共同での買収提案があった。金額の提示はなかったとされ、Veleantはこれを拒否、その後の話し合いはないという。
武田薬品は、この件に関して「コメントできない」としている。
Valeantは4月25日にライバルのアイルランドの製薬大手 Perrigo Co. のCEOのJoseph Papaを会長・CEOとして迎えることを決めた。
武田の提案はこれ以前とされる。
4月29日に2015年の年次報告書を提出し、デフォルトをひとまず免れた。
これによると、株主帰属純損益は、2014年の+881百万ドルに対し、2015年は-292百万ドルとなっている。
その後、資産家のWarren Buffett が5月初めに、Valeant のビジネスモデルには非常に大きな欠陥があると述べたこともあり、株価は2015年8月の高値から85%余り下落している。
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Wall Street Journal では、武田薬品の狙いは旅行者下痢症やIBS(過敏性腸症候群)のような胃疾患薬を扱う Salix Pharmaceuticalsではないかという。
ValeantはSalix のIBS薬の Xifaxanに期待しており、本年の売上高を10億ドルとみている。
Valeant は昨年、110億ドルでSalix を買収したが、武田薬品も争奪戦に参加していたとされる。
2015/3/18 Salix Pharmaceuticals の買収合戦
TPGは傘下にAlder BioPharmaceuticals などの医薬品会社を持ち、アイルランドのEndo International PLC にも出資している。
TPGは2015年5月に、所有するPar Pharmaceutical をEndo International に売却した。
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ValeantはAllerganの買収も狙ったが、失敗している。
各社の買収合戦の状況は下記の通り。
2015/2/28 Valeant Pharmaceuticals、米同業Salix Pharmaceuticalsを買収 2015/3/18 Salix Pharmaceuticals の買収合戦 2015/8/26 Valeant Pharmaceuticals、女性用バイアグラの Sprout Pharmaceuticalsを買収 ーーー 2015/11/19 ジェネリック医薬品大手のMylan、アイルランド製薬大手Perrigo のTOBに失敗 ーーー 2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦 2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収 2015/7/29 後発薬最大手のTeva、米 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収
2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念
付記米著名投資家のCarl Icahn は5月31日、米製薬大手 Allerganの株式について「大量のポジション」を取得したと自身のホームページに掲載した文書で公表した。取得数や保有率は明らかにしていない。
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