米、インドに原発6基建設で基本合意、Westinghouseが建設

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オバマ米大統領は6月7日、訪米中のインドのモディ首相とホワイトハウスで会談し、東芝傘下のWestinghouseが原子炉6基をインドに建設することで基本合意した。
共同声明で「インドで拡大する電力需要に応え、化石燃料への依存を減らすという両国の意志を示すものだ」と意義を強調した。

2008年発効の米印原子力協定に基づく最初の契約となる。

またオバマ大統領は48カ国で構成される原子力供給国グループ(NSG)へのインド加盟について改めて支持を表明した。
NSGは民生用の原子力関連資機材の軍事転用防止を目的として輸出管理を行っている。
(インドは核拡散防止条約に加盟していないため、米国がインドのNSG加盟を後押しすることを問題視する声もある。)

Westinghouseとインド原子力発電公社(Nuclear Power Corporation of India Limited =NPCIL) が、2030年までに加圧水型軽水炉「AP 1000」6基をインドに建設する契約を2017年6月までに締結する。米輸出入銀行が資金支援する。原子炉設計や立地選定は「すぐに始める」としている。

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インドは経済成長に伴う電力不足への対応に加え、温暖化対策として2030年までに総発電量に占める非化石燃料の割合を40%に引き上げる目標を掲げる。
太陽光などの再生可能エネルギーとともに原発の増設を重視している。

インドは現在21基 (5,780MW) の原子炉を抱え、6基(4,300MW)を建設中。これに加え、既に政府は2015年4月に10発電所、44基の新設承認を行った。さらに2基の計画がある。
計画には今回のWestinghouseの案件や、フランスのArebaと三菱重工の案件、GEの案件、ロシアの案件も含まれている。

しかし、これまでインドへの原発輸出には2つの障害があった。

第一は、インドが核拡散防止条約(NPT)に加盟せず核兵器を保有したため、米国が原発輸出を禁じていた。

このため、インドはかつて導入した米製技術を元に国産化した。1974年以降に納入された外国製原発はロシアの2基だけで、うち1基が稼働、1基が建設中。

しかし米国は2008年の米印原子力協定の調印で方針を転換した。
日本も日本の原発輸出を可能とするため、2015年末に日印原子力協定の締結に向けて原則合意した。

第二の問題は、インド国会が2010年8月末に可決させた「原子力損害賠償法」 である。

インドで1984年に起きた史上最悪の産業事故であるボパール化学工場有毒ガス漏出事故は未だに解決をみていない。

2010/12/8 インド政府、Bhopal事故補償で13億ドルの追加請求

インドはこの経験から、「汚染者負担の原則」を原子力にも取り入れた。

放射能漏れなどの原発事故が発生した際、通常は原発の操業会社のみに負わせていた賠償責任を、原子炉などのメーカーつまり供給企業にも負わせるとしたもの。
これにより、万一の際の保障体制がより強力な形で整うことになる。
いざという場合には政府のバックアップが期待できるロシアやフランスなどに比べ、米国企業は相対的に不利益を受ける可能性が出てくる。

インド政府は国会審議の過程で、原子炉供給企業の責任を軽減する修正案を閣議了承するなど、米企業などへの配慮を示したが、結局これは野党の激しい批判で撤回に追い込まれた。
米国の駐印大使や国務次官補らが懸念を表明し、これがまた野党の反発をあおるという悪循環に陥った。

これでは海外の原子炉を使えないため、インドは2016年2月4日、原発事故の賠償に関する国際的なルールとなる「原子力損害補完的補償条約」(CSC)を批准した。
CSC加盟国は、過失の有無にかかわらず電力会社などの原子力事業者が賠償責任を負うとされる。

CSCが発効すれば「国内法は事実上骨抜きとなり、外国企業が進出しやすくなる」と指摘されている。

ただし、国民から反発を招く可能性もあり、対外条約と矛盾する国内法の改正に課題が残る。

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インドの原子力発電の現状と計画は下記の通り。

付記
Westinghouseは当初、Gujarat州での建設を計画していたが、地元の反対を受け、Andhra Pradesh州に変更した。

*1 Westinghouse

*2 Areva & 三菱重工業の原発建設計画

*3 VVER-1000 はロシア製のWater-Water Energetic Reactor
旧ソ連で開発され、旧ソ連・東欧諸国で広く発電炉として運転されている加圧水型原子炉
  Kudankulamで1基が稼動、1基が建設中で、さらにKudankulamで4基、Haripurで6基を計画している。

*4 ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor)
  設計はGE日立ニュークリア・エナジー 

2016年1月、インドのModi 首相とフランスのHollande 大統領は、年内にJaitapurでArevaのEPR 6基 建設の契約をまとめると述べた。
同月にインドの内閣は、Westinghouseとの契約を年内にまとめることを確認した。

Kovvadaに建設する原発では、GEのEconomic Simplified Boiling Water Reactor (ESBWR) を初めて採用する。

計画分で、Kalpakkam の600x2 以外は 2015年4月に政府の承認を受けている。

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回、WestinghouseのAP1000が採用され、6基が建設されることとなるが、東芝の計画では、インドで35基を建設するとなっており、道は遠い。

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