富士フィルム子会社のCellular Dynamics、米国国立眼科研究所と加齢黄斑変性の治療に関する共同研究開発契約を締結

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富士フイルムは6月23日、子会社でiPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーのCellular Dynamics International, Inc.が、米国国立眼科研究所との間で、他家 iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を用いた加齢黄斑変性の治療に関する共同研究開発契約を締結したと発表した。

Cellular Dynamics は、免疫拒絶を起こしにくいHLAタイプの他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞と、細胞の培養・冷凍保存用培地の開発・提供を行う。

  • Cellular Dynamics は、GMPに準拠して製造された、免疫拒絶を起こしにくいHLAタイプ(最大5種類)の他家 iPS細胞由来網膜色素上皮細胞と、細胞の培養・冷凍保存用培地の開発・提供を行う。
  • Cellular Dynamics は、他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を提供する。
    また、富士フイルムが開発した、生体適合性に優れさまざまな形状に加工できる細胞外マトリックス「リコンビナントペプチド(RCP)」も提供する。
  • 国立眼科研究所は、Cellular Dynamicsから提供を受けた、細胞、培地と細胞外マトリックスを用いて、移植用の組織培養を行うとともに、培養組織の冷凍保存試験と動物モデルでの有効性試験を行う。
  • Cellular Dynamics と国立眼科研究所は、細胞移植の効率向上に寄与する「RCP」を他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞とともに移植し、移植した細胞への血管新生による有効性と安全性も確認していく。

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加齢黄斑変性は、加齢に伴って、目の網膜の中心部分の黄斑部にある網膜色素上皮細胞が死亡・減少する疾患で、視力が低下し、進行すると失明に至る。患者は世界で約3千万人と推定され、完治する治療法が確立されておらずアンメットメディカルニーズが高い疾患。

日本では2014年9月、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーが世界で始めて iPS細胞から作った網膜の細胞を、加齢黄斑変性の患者に移植する臨床研究の手術を行った。
2015年10月、
手術から1年が経過したことを受け、「がんなどの異常は見られず、安全性の確認を主目的とした1例目の結果としては、良好と評価できる」と発表した。

この場合は患者本人から作成したiPS 細胞(自家iPS細胞)を使用した。ヘリオスがシートの作成を担当した。

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京都大学iPS細胞研究所、理化学研究所、大阪大学、多細胞システム形成研究センターの4機関は2016年5月30日、「滲出型加齢黄斑変性に対するiPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植に関する臨床研究」を実施することを目的とした協定を締結した。

新たな臨床研究では、自家細胞・シート移植の手法に限定することなく、他家細胞の使用や細胞懸濁液の移植についても検討することを計画している。

iPS作成には1人当たり1千万円程度がかかり、作製に半年が必要で急場の間に合わない。このため、山中教授は「iPS細胞ストック」構想を進めている。

他家iPS細胞利用のためには、拒絶反応対策が必要で、白血球の血液型といえるHLA(ヒト白血球型抗原:Human Leukocyte Antigen)の合致が求められる。

HLA型は父母ごとに何百種で、合わせて何万もあり、全てのストックは無理だが、HLAホモドナー(父母が同型)のものは、片方が合えば使用できる。民族によりHLA型の分布が異なるが、日本人の場合は、ある1名のホモドナーで全体の20%75名のホモドナーで80%をカバーできる。

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富士フィルムは2015年3月30日、株式公開買付けにより米ベンチャーCellular Dynamics International, Inc. を買収することで同社と合意した。

ウィスコンシン大学のJames Thomson 教授は、山中教授と同じ2007年11月に、人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表しているが、Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でも2013年に成立した、プラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

また同社は、California Institute for Regenerative Medicine とのiPS 疾患細胞バンクの樹立、National Eye Institute へのドライ型加齢黄斑変性症の臨床試験開始届を行うための前臨床試験用 iPS 細胞受託を進めるなど、米国でのiPS 細胞供給ビジネスを積極的に展開している。

Cellular Dynamicsは2015年2月、2人のHLA "Super-donor" からGMP基準のiPS細胞を樹立したと発表した。

京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は2015年4月8日、このCellular Dynamics と iPS細胞関連の有力特許の相互利用などを推進する考えを明らかにした。

Cellular Dynamicsは山中教授の特許の実施権をすでに得ているが、癌になりにくい安全なiPS細胞を作ったり、iPS細胞から心臓の細胞を育てたりするための特許を幅広く保有し、高品質なiPS細胞製品を世界中の研究機関に供給している。

山中教授は、それぞれの特許を相互に利用できるようにするクロスライセンス契約の締結など「これまで以上に深い協力ができると期待している」と話した。

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