米電力大手Exelon 、採算悪化で 原発閉鎖

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米電力大手Exelon は6月2日、米中西部イリノイ州にある2つの原子力発電所を閉鎖すると発表した。廃炉の公算が強い。

原発名 場所 基数 能力 タイプ 閉鎖時期
Clinton Clinton, Ill. 1基 1,069MW BWR 2017/6/1
Quad Cities Cordova, Ill. 2基 1,871MW BWR 2018/6/1


シェール革命によるガス価格の下落(10年前に比し約1/3に低下)で電力卸売価格も大きく低下し、採算が合わなくなっていた。
同社では両原発は同社の原発のうち、最も効率がよいものだが、過去7年間で合計8億ドルの損失を計上していたとしている。
両原発で1500人を雇用しており、間接人員も含めると4200人となる。

ExelonやComEd などはイリノイ州議会に以下の点を含んだ "Next Generation Energy Plan" の法制化を求めている。

・ Zero Emission Standard の導入
  州が監査し、収入が支出をカバーできない原発に限り、補償を行う。
・Renewable Portfolio Standards の強化・拡張
・太陽光発電の推進
・電力料の50%引き下げ

州議会はこれを議論中だが、成立するかどうか見通しがつかないため、廃止を決めたとしている。
引き続き、 "Next Generation Energy Plan" の法制化に向け、運動を続ける。


Exelonは、2000年にUnicom (シカゴを基盤とする Commonwealth Edison の親会社) とフィラデルフィアに本拠を置く PECO Energy が合併し誕生した。

11箇所の原子力発電所を運営しているが、その中にはかつて大きな原子力事故を起こしたことがあるスリーマイル島原子力発電所が含まれている。

今回閉鎖する2原発以外の原発は下記の通り。

原発名 場所 基数 能力 タイプ
Braidwood Illinois 2基 2,389MW PWR (Westinghouse)
Byron Illinois 2基 2,347MW PWR (Westinghouse)
Dresden Illinois 2基 1,845MW BWR (General Electric)
LaSalle Illinois 2基 2,320MW BWR (General Electric)
Fort Calhoun #1 Nebraska 1基 484MW PWR (Combustion Engineering)
Limerick Pennsylvania 2基 2,317MW BWR (General Electric)
Oyster Creek #2 New Jersey 1基 636MW BWR (General Electric)
Peach Bottom #3 Pennsylvania 2基 2,599MW x 2 BWR (General Electric)
Three Mile Island Pennsylvania 1基 837MW PWR (Babcock and Wilcox)

#1 Fort Calhoun原発はOmaha Public Power District が所有し、Exelonが操業している。
#2
Oyster Creekは認可期限の2019年末までに停止を発表済み
#3 Peach Bottom はExelon とPublic Service and Gas of New Jerseyの共有で、Exelonが操業している。

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米国では主として採算を理由に廃炉する原発が相次いでいる。今回の2原発を含めると、合計9原発となる。

社名 原発 立地 発表 詳細
Dominion Kewaunee Wisconsin 2012/10 2012/10/26
米の発電会社、不採算を理由に原発を閉鎖
Entergy Yankee Vermont 2013/8 2013/9/2 
米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定
 
Duke Energy Crystal River Florida 2013/2
Southern California Edison San Onofre California 2013/6
Exelon Oyster Creek New Jersey 2010
Entergy James A. Fitzpatrick New York 2015/11 2016年末~2017年初めに閉鎖 採算悪化
Entergy Pilgrim Massachusetts 2015/10 2019/6/1までに閉鎖


このうち、San Onofreは
三菱重工業の蒸気発生器の欠陥を理由にするもの
  
2013/10/22 米国原発会社、三菱重工業の蒸気発生器の欠陥で仲裁申立て


2012年7月30日付の英 Financial Times は、"Nuclear 'hard to justify', says GE chief" のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。
シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったというもの。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長


新設の原発は旧基準に基づき稼動認可を得たものが1つで、新基準では3件の建設運転一括許可が出ている。

1) Watts Bar 原発2号機 (稼動認可)

米原子力規制委員会(NRC)は2015年10月22日、テネシー州のWatts Bar 原発2号機の稼働を認可したと発表した。
米Westinghouse製の加圧水型原子炉で、出力は約110万kw。1973年に建設認可を得たが、79年のスリーマイル島原発事故の影響で85年に建設を中断、2007年に建設再開に乗り出し、完成にこぎ着けた。

2015/10/31 米国、19年ぶり原発稼働認可 

2) Vogtle原発 3・4号機 (2012/2 建設運転一括許可=COL)
3) Virgil C. Summer 原発2・3号機 2012/3 建設運転一括許可=COL)

 いずれも新型加圧水型原子炉「AP1000」

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

4) South Texas 原発 3・4号機(2016/2 建設運転一括許可=COL)

東芝のSouth Texas 原発の事業開発会社Nuclear Innovation North America は2016年2月9日、NRCから、South Texas Project 3・4号機建設の建設運転一括許可(COL)の承認を受けた。ABWRとしてCOLが承認されたのは今回が初めて。


東芝は、今後 15年間で Westinghouseで 64基の原発を受注するとしており、うち米国では18基となっているが、現状では実現は非常に難しい。

今回COLを得たSouth Texas 原発 3・4号機も、当初の運営主体であったNRG Energyが離脱したため、東芝が抱え込んでおり、認可は得たものの、パートナーが見つかるまでは建設に入れない状況にある。

2016/5/16 東芝、米国大手エンジニアリング会社との原発建設に関する協力関係を解消

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