Monsanto は5月24日、Bayer からの総額620億ドル(債務込み)での買収提案を拒否した。
取締役会は満場一致で、Bayer の提案は不完全で適切なものではないと看做した。
合併のメリットは認めつつ、提案額は企業価値を著しく低く評価しているとし、更に、買収資金の調達や規制上のリスク(potential financing and regulatory execution risks)などについて懸念があるとした。2016/5/23 Bayer、Monsantoに買収提案
6月11日付けのWall Street Journal によると、Bayer は新たな提案を行ったが、Monsantoはこれを拒否した。
Bayer はMonsantoに次の内容の書簡を送った。
・Monsantoが懸念する資金調達については準備が整っており、規制上の障害を乗り越えられる自信がある。
(BayerはMonsanto買収の資金を債券と株式の組み合わせにより調達する方針を表明している。)
・買収額の引き上げのため、詳細な情報へのアクセス(Due diligence)を求める。
(新しい買収額はそれをみて決めるとし、提示していない。)
これに対しMonsantoは、提案が変わっていないと考え、Bayerが買収額を引き上げるまでは詳細情報へのアクセスを拒否した。
さらに、合意の前に、規制上のリスクを含む他の諸点について明確にすることを求めた。
巨額の買収資金を巡り負債リスクを懸念する声が市場に根強いなか、Bayerが買収を実現するためには買収価格を引き上げるかどうかが焦点になっている。
付記
BayerはMonsantoに7月1日口頭で、7月9日文書で、これまでの買収価格122ドルから125ドルに引き上げると通知した。
これは、5月9日の終値に40%のプレミアムを乗せたものとなる。全株を取得すれば635億ドルとなる。
独禁当局の認可取得に自信があり、もし認可が得られない場合、15億ドルの"reverse antitrust break fee" を支払う。
付記
Monsantoは7月19日、この提案を安すぎるとして再度拒否した。交渉は続ける。
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農薬・種子業界では、Dow Chemical と DuPont が2015年12月11日に経営統合で合意した。両社の農薬・種子事業を統合するとMonsantoを上回り、業界トップに躍り出る公算となった。
統合会社の社名はDowDupont で、統合後に無税スピンオフで Agriculture、Material Science、Specialty Products の3つの会社に分離し、それぞれ上場する。
2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表
しかし、この合意の前に BASFが数週間にわたりDowに対抗してDuPont の買収を検討していることが判明した。
正式なオファーはしていないが、DuPontに打診を行っている。
DuPontは1999年に種子会社のPioneer Hi-Bredを買収した。
BASFは種子事業を持っておらず、もしDuPontを買収できれば、農業科学分野でのギャップを埋めることが出来るとともに、Monsantoに次ぐ世界第二位のメーカーとなる。
2016/3/7 BASF、DuPontの全部又は一部の買収を検討
農薬と種子合計で世界一、農薬で世界二位のSyngentaは本年2月3日、中国の化学メーカーの中国化工集団(ChemChina)による買収提案の受け入れを支持した。TOBは数週間のうちに開始され、年末に買収が完了する見込み。
2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収
DuPontはDowと合併する。もし、BayerがMonsantoを買収すれば、BASFは取り残されることとなる。
BASFの副最高経営責任者は6月8日、本社で開いたR&Dに関する会見で、BayerによるMonsanto 買収計画により、自社の事業モデルが影響を受けることはないとの立場を示した。
「市場で起こっている出来事により、われわれが窮地に追い込まれることはない」と述べた。BASFの農薬事業は収益性が高く、革新にあふれており、規模も小さくないとしている。
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